迷信曰はく Aberglaube sagt
ファウストは、いない。
ドンジョバンニも、いない。
迷信それって勘違い。
だが、ここで或る革新的な迷信を一つ紹介しよう。
死者が、または臨死体験者が訪れるとされる町には大きな図書館がある。その名はバベルの図書館。エデンの園を前庭とするその図書館には過去・未来全ての本が蔵書されている。ここで、世界最後に書かれたという散文詩をご紹介しよう。
『フィニスの刻に命は還る』
〇.全能から眠る火
日に日に世界が終わりゆく夜。その様は圧巻で、夢の街で君を想うように瞬く間に世界は変わり果てる。この孤独も蒙昧も、全てはこの今際に意味を持つのだ。ふたつの因果律が交差するに合わせて、鈍る皮膚感覚も、消えゆく灯でさえ、我らの心が確かめた。思い違いのように、咲く薔薇を言うのだ。
錯綜する心根、意味はなくとも、明日の足音に現実を書き換えてしまう日も、今をかき消せ、そして始まるのだ、羽ばたくのだ。炎天下にニブルヘイムへ遊泳する乙女のように、水に流れゆくシ=死のように、ただ、生まれた意味も、私の弱さも、日々の中で薄れ淀み、そう、何度も消えては強く光った。
開く世界、解ける夢、終わりと始まり。柔いこの痛みさえ、私は抱いて眠ります。
゜〇
レーラインは永劫瑠璃色万廻音、諸行無常の古の、神門を見据えて嗚呼眠る。
眠りませ、悟りませ。
.◎゜。
Alles gut, alles ungeeignet
In der Zeit, die aus der Antike fließt
die Straße der Rosen
den Weg des Lebens gehen
(全ての優れた者、全てのそぐわなかった者でさえ、太古より流れる時の中で、薔薇の道を、人生の道を歩くのだ)
遠い記憶に寄りては、神と呼ばれる者が私達の頭上を通りかかった。私達はヴァルナに己の主な罪を尋ねた年老いた水夫のような謙遜で彼の者に尋ねた。
「私達の人生はどこに向かっているのですか?」
死だと思っていた。だが、神はこう答えた。
「人と神とは歩く道が違う。だがな――」
その答えは、生まれる時、目覚める頃にはすっかり忘れてしまった。きっと、生きていけなくなるからか。まだ知る時ではないのかもしれない。
Suchen Sie, auch wenn es keine Bedeutung gibt
Ich möchte sie für immer finden
(意味はなくとも、彼女を探す。私はずっと彼女を探していたいんだ)
『Aberglaube sagt』(迷信曰く)
Das Leben hat keinen Sinn
(人生に意味はない)
nichts, wenn man tot ist
(死んだら無に帰す)
Aber in den Tiefen des Todes leuchtet das Leben
(だが、死の底でこそ命は光り輝く)
今は光が痛くても
いつかは慣れて、愛せたら。
過去も未来も愛せたら。
全ての今を愛せたら。
きっと世界は美しい。
迷信曰く、その先に、光で満ちた園がある。
人生の先、死の向こう
僕は私は信じたい
生きる理由を信じたい
愛する気持ちを信じたい
生まれた意味を信じたい
迷信曰く、
『人の最も偉大な秘儀は信ずる力』
と遠く賢者が語ったそうな。
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