第10話

「はぁ……」



深澤さんはようやく止まるとベッドに乗り、壁にもたれ掛かり座った。



そしてヌイグルミを抱き上げ、自分の目の前に。



わっわっ。


近いっ、近いっ。


私はドキドキするも、深澤さんの表情は切なく今にも泣きそうで……。



ああ、どうして私はヌイグルミの中になんて入っているんだろう。


ココに居るよ、と伝えたいのに。


私は貴方が好き、と伝えたいのに。



「お前は美希ちゃんに似てたから、クレーンゲームで必死に取ったけど……」



えっ!?


私に似てる!?


このコ、私に似てるの!?


私に似てるからこのコを……?



わーっっ。



そういえば、ヌイグルミ愛好家なんて思っていたけど、ヌイグルミはこのコしかない。



「本物に敵うわけないんだよな。話さない、笑わない……」



あのっ。


深澤さんの本音が駄々漏れでっ。


ちょっと私の方が恥ずかしっ。



「美希ちゃんの笑顔に一目惚れだったんだ」



……嘘。



「いつ行っても、どんな人にも笑顔で心のこもった「ありがとう」の言える子」



……っ。



「試合に負けた時、減量でもう挫けてしまいそうになった時、あの笑顔にどれだけ救われたか」



フニャリと力の抜けた微笑みを浮かべる深澤さん。



「美希ちゃんのあの笑顔を見れなくなるなら……」



ドタッ!!



!!??



深澤さん!?



突然、深澤さんが倒れた。

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