第9話
ちょっと待って……
え?
今、とても聞き慣れた名前が聞こえたのだけど?
聞き慣れたというか……私の?
私の名前じゃなかったーー!?
ほー!?
や、待て待て同じ名前の人とか……
漢字が違うとか……
でも一週間って。
その期間は私も深澤さんに会っていない。
大学のテストがあってバイトを休んでいて、テストが終わったと思ったら風邪をひいてしまってこれまたバイトを休んでしまったから。
……私?
……私なの?
パニックになる私。
でもそれ以上に
「毎日通う俺のことが嫌になったとか!?」
抱きしめられてるから視界が真っ暗で見えないのだけど、深澤さんは部屋をグルグル回っているようで。
彼の方がパニックしているみたい。
毎日通うってやっぱり……
「それともどこか体の調子が悪いとか!?で、部屋で倒れてるとか!?」
私のことであるなら倒れてはいない。
ベッドでちゃんと横になってる。
もう死んじゃったみたいだけど……。
「確か一人暮らしって言ってたよな!?家……はわかんねぇし!!」
バイトの帰り道、何度か送ってもらったことがある。
でも家の前まで送ってもらったことはない。
一応、女の一人暮らしだから警戒して。
「なぁーんで連絡先交換しとかなかったんだよ、俺は!!」
深澤さんも……
私と同じ気持ちだった……?
私達……
「急に連絡先聞かれても嫌だろうなとか……気持ち悪いって思われたらとか考えるとどうしても聞けなかった!!」
!!
そう……なんだ。
私に興味がなかったわけではなかったんだ。
どうしよう……嬉しい。
嬉しくて泣いてしまいそうだ。
ヌイグルミだから泣けないけど。
「あああっ。どうしたら良いんだ!?本当に倒れてないよな!?大丈夫だよな!?」
……。
せっかく両想いだとわかったのに。
ごめんなさい、深澤さん。
私、死んじゃったみたい。
今度は悲しい涙が零れそうだった。
ヌイグルミだから泣けないんだけどっ。
「美希ちゃんに会いたいっ」
苦しげな声で言われた言葉に。
私も、私の姿で深澤さんに会いたい!!
……会いたいよ!!
私はヌイグルミの中で叫んだ。
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