2人のベンチ

こうの なぎさ

出会い


俺の両親は小5のときに離婚した。

母親に引き取られた俺は

父親がいない寂しさを

母親に見られたくなく

毎日川沿いのベンチに座っていた。

考え事をしたいときはいつも

そこにいた。


あるひとりを除いては。


泣きそうになっていた俺のうしろから

その声は届いた。


「くーろーいーわー!」


なんでここが?!と思いながら

うしろを振り返る。


そこには同じクラスの

上野 凛太郎(うえの りんたろう)がいた。


「わーすーれーもーのー!」


と、バカでかい声で叫んでる。


それが恥ずかしくて

慌てて凛太郎のところへ

走った。


「お前、ほんとやめろ!恥ずかしい!」


「お前だってその足の速さやめろよな!」


追いかけてくるのが大変だったとか

プリントを届けにうしろから

名前を呼んでいたこととか色々

言われた。


「…ごめん」


「黒岩、なんか泣いてた?」


こいつのかんの鋭さは

昔からよかった。


「泣いてねえよ、お前バカか」


「バカっていうほうがバカなんですぅー!」


この頃はあんな気持ちになるなんて

思ってもいなかった。


この瞬間から、始まっていたんだ。


「黒岩!悠介(ゆうすけ)って呼んでいい?」


こいつだけは特別だったんだ。


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