どうせならそのまま生きちまえよ

雛形 絢尊

 













絶望だ。私は今人生の中の最下層にいる。






何もかもが棘のようで嫌になる。





そんなまま私は頭を掻きむしり、

ベッドからゆっくり立ち上がった。





どれだけ唱えても、

呪文のように頭を駆け回るのはもう何もない、

何をしようにもないという事だけ。

 




足の踏み場のないこの部屋のように私の心にはいろんなものが散乱していた。





失ったものは失ったままだ。







尻尾がちぎれた蜥蜴のように

それはまた生えたりしない。

また私は暗がりの部屋を進む。









ようやく外に出れたとして、私は何がしたい?

何者でもないなら何がしたい?











このままいっそなんて思ってしまった。







ここでレールを外すよりか、

ここで物語を止めたほうがましだ

なんて思ってしまった。







私は夜道を歩く、歩く。







自動販売機の明かりが眩しくて歩く、歩く。






信号すらもない街で

沈黙だけが私を知るように。










こうしてまた闊歩する。

ひとりぼっちの部屋を出ても

ひとりぼっちのままだ。












何も持たずに家を出た。

何も持たずというのは

何も持っていくものがないからだ。









そうしてまた歩く、歩く。

 







私はお気に入りの場所に向かう。

ここで、という場所だ。

そうして茂みのような場所も、

急な斜面も歩く、歩く。










また一つ石を蹴飛ばす。歩く、歩く。











何も残すことはない。ただただ足を進める。










どうか、元気で、

なんて思ってしまうと未練が残る。










ただただ、道を進む。








暗がりの道を進む。











言い残したことはない、

ただこの街を見下ろすような場所まで

歩く、歩く。











こうしてたどり着いた場所、

きっと明日もこの場所から

見える景色は変わらない。














数ある街あかりも変わらずに光っていて、

どこかの家から湯気が立つだろう。












何も食べていなかった。


 














何も食べようとしなかったからだ。











未練といえばそれだけ。ただそれだけ。


















お腹すいたな。













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どうせならそのまま生きちまえよ 雛形 絢尊 @kensonhina

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