出張報告α
ペクチン
第1話
先日ベトナムへ出張行って来ましたので例によってご報告
本当はわざわざ行くほどの用事では無かったのですが、
ホーチミンの自社工場に今まで1回も行ってないということが上にバレて
つまらない用事で行かざるを得なくなった次第です
受け入れ側の工場もヒマじゃあないので、
勝手に来て用事済んだら勝手に帰ってね、という姿勢。
実際大した用事でも無いし、まあ仕方ないですね
とても暑かったです。
極寒の国から飛行機乗り継ぎで十数時間かかり、更に6時間の時差もあるので
ホーチミン空港に着いて外の熱気を浴びた時点でそのまま帰りたくなりました
ベトナムは初めてで、ホーチミンシティの予想を超えるカオスな世界に
先が思いやられます
交通ルールは気休め程度らしく、やはり物理法則が全てを決定するようで
道を渡るのも命がけです。
状況は世界中のスクーターの半分がここにいるんじゃないかと思うほどで、
スクーターの濁流の中で右往左往している乗用車やトラックは、
軍隊アリの圧倒的な大群の中でうごめいている毛虫やクモのような
哀れな犠牲者と言うべき存在です。
そんな道路を渡る人間なんて
まあ実際そうなんですが
ベトナム人は良くわかりません
ここは危ないから日本人は気をつけて!と何度も言ってきた工場の日本語わかる女性スタッフ、アイさんが、
帰りに流しのバイクタクシーに乗ってホテルに帰ろうとする自分に怒り、危ないし会社ルールでも禁止されてるからダメです、と言って彼女のスクーターの後席に乗せて自分を送ってくれようとするではないですか。
これはOKなの?と聞くと、とんでもない!危ないから日本人は現地スタッフのスクーターには乗っちゃいけないの、と言われた
しかも彼女の分しかヘルメットが無いので後ろに乗ってる自分のノーヘルが見つかったら警察沙汰だそうで、それが会社にバレたら私はクビよ、とも言う。
それから言う、私はこのスクーターを買った時に私のスクーターには日本人は乗せないって決めているの。
、、、何言ってるか良くわからないですが、とにかく送ってくれるようです
思った通りホテルまでの道はスリル満点。バスやトラック、スクーターの大群がひしめく大通りを右に左に走りぬけながら夜のホーチミンシティをブッ飛ばす彼女。ミラー越しの彼女の獲物を追う肉食獣の目つき。スキあらば赤信号も反対車線もブッ飛ばすぜ、ドキドキッ!
夜の粘っこい空気を切り裂きながら気持ちの良い風と解放感を感じます。
しっかりつかまっていないと落ちて死にそうなので、ぎゅっと密着している彼女の柔らかく丸みのある暖かい背中と腰の感触に、このまま死んでも天国に行けるような気がします
そして多分遠回りして有名な建造物の近くを通りつつ何か説明をしてくれているのですが騒音で何も聞こえない。その後完全な渋滞となり、やっとスピードを落として彼女が振り返って自分に聞きます
あなたは死ぬのが怖くないの?
死んでもいいです、、、む、むしろ死にたいくらいだ、となんとか答える。
すると彼女は初めてニッコリして、私のおじいちゃんもベトコンだったのよ~、とすごく満足そうだった
written by Pectin, Jan-2010
次の更新予定
出張報告α ペクチン @XIXIXIX
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。出張報告αの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
百年の孤独日記最新/藤光
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 12話
永遠と一日だけ/ただのネコ
★35 エッセイ・ノンフィクション 連載中 400話
杏のブログ/今川銀杏 旧名:杏
★9 エッセイ・ノンフィクション 連載中 11話
北米で暮らしてみた (仮題)/母猫
★56 エッセイ・ノンフィクション 連載中 184話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます