1550年 家操17歳 藁和紙 合コンパーティ
信長様に熱田と津島の関係強化ともっと金稼げと言われたが、製塩所の拡張や石鹸や油等の工場の拡張はしているしなぁと思った。
拡張し過ぎると相場が下がって既存の利権団体がうるさいのである程度は自重しなければならない。
「……まだ高いもの……紙だな」
紙の値段が高いので紙の量産をしようと決断した。
主な材料は藁、コンニャク粉、柿汁。
コンニャクは領内の大野の市にある料理屋でも出るくらい一般的(他の地域だと寺が作って売っていることが多い)で、味噌 田楽や芋煮の中に入れられてよく売られていた。
そんなコンニャクの素のコンニャク粉を和紙に塗ると気球ができるくらい丈夫かつ防水性に優れた和紙が完成する。
柿汁は防虫効果があり、紙が虫に食われる心配が減る効果がある。
ちなみにこの原料で太平洋戦争時に風船爆弾という兵器が実際に開発されていたりするが、戦国時代では藁を紙にするという発想は寺社で秘蔵されており、和紙として市場に出回っていたのは木の皮を剥いで作られた物で大量生産には不向きであった。
俺は紙師を呼び寄せて藁を使った紙作りを覚えている範囲で再現して実際に作ってみると、薄茶色の紙がちゃんと出来上がった。
やり方としては藁を細かく切ってから灰を入れて煮込んで柔らかくし、水車の力を使って更に細かく砕く。
それを水に漬けて3週間放置し、それをもう一度水車の力で細かくする。
すると繊維が取り出せる(これを藁スサという)ので紙を漉いて乾燥させ、乾燥した紙にコンニャク粉を溶かした液体を塗ってまた乾かし、更に柿汁を塗って乾かせばようやく商品として売れる藁和紙が出来上がる。
原料が藁なので木の皮と違い量を作ることが可能だし、もう一段階木の皮で作った紙に近づけたければ成長の早い竹を使うと良い。
作り方はほぼ同じで水に漬けたり煮込んだりする時間が違うが竹からも紙を作ることが可能である。
で、実際に売り出してみると安い紙ということでよく売れた。
以外にも紙座というのが熱田や津島にはなかったので既存の和紙は決算用紙に、普段使いはこの藁和紙で使うようになり、薄利多売で利益を出した。
更に白色に漂白する方法も考案されて使いやすい紙として売れ、大量生産をするために職人や弟子を多く雇用し、大釜や砕くための水車小屋の増設で生産性を上げて、利益が多く出るようにするのだった。
後々これだ尾張紙として安くて丈夫と各地で好まれる様になることまでは俺でも予想できなかったが……
秋になり収穫期。
今年は気候が安定していた為か東日本を中心に豊作で、尾張でも豊作となっていた。
豊作だと米相場が落ちる為、年貢で米を売ってもいつもよりも量を売らないと金にならないが、俺の領地では新農法のおかげと、大野村では区画整理を行い、更に収穫できるように田畑の形を整えたので収穫量が他地域から見てもバグっていた。
信長様とか尾張の関係者に新農法を教えたが、今年は全体の豊作でかき消され、確かに収穫量は増えたが、そこまでか? という評価となったが、俺の領地が凄いことになっているので農法は正しいんだろうなぁと思われた。
事実、俺の領土は2500石の広さで、全部が田畑ではなく、市場や工場、海岸地域で米が作れない場所もある中で1万石もの収穫と3200石の税が入ってきていた。
「大豊作だったが、領主様が他の作物を植えておけって言った理由がわかっただ」
「んだ。米だけ作ってたら米は食えるが安く買い叩かれるとこだっただ」
「芋も豊作だし、領主様が買い取ってくれるだ」
うちの領地では換金作物……大豆とかイ草、綿花等の作物を作っていたため豊作貧乏になることは回避することができた。
で、買い取った芋や税の米は備蓄を除いて酒作りに送られ、園城寺和尚から引き取った弟子の坊さん達が酒造を開始し、薩摩芋でも焼酎の作り方を教えると大々的に作られ始め、それを溜めておく酒樽を作る樽屋が儲かり、木材の加工工場も需要増加で儲かるという連鎖的な経済効果が多数普及し、巡り巡ってそれらを管理している俺の懐が潤った。
お陰で今年の決算では城造りの出費や様々な工房や工場の建設、誘致、家臣や兵の増加で人件費が上がり、1万貫近くの出費があったにも関わらず5000貫の黒字を記録した。
大きかったのは硝子茶器と干し椎茸の売上が好調だったことだろう。
軌道に乗ってないない紙や味噌、醤油、酒類の代わりに大量の椎茸と月産100個を安定した硝子茶器で黒字の5000貫を稼ぎ出していた。
椎茸は来年更に規模を拡張するので利益拡大が狙えるだろうし、油、石鹸、蝋燭、塩といった既存の収入源も規模拡大で大きな利益を出せていた。
肥料工場も本格稼働したので農民の出費も楽になり、その分衣類や農具、他の食材やサービス業の需要も拡大するだろう。
利益分で城の城壁をコンクリート製に交換していったり、治水工事を行うこともできるだろう。
俺の家は常備兵を採用しているので金はかかるが尾張兵とは思えないほどの練度の兵士が増えており、そういう兵が水商売に金を落とすので性産業も拡充を続け、大野の村は町へと規模が拡大し、城下町の様になっていた。
で、殆どの兵士が農民上がりや身分が低い足軽で、家から飛び出している関係上、家の繋がりを重視したお見合いとかが少なかった。
俺も妻が4人居て子供をバンバン孕ませている関係上、オナホールで自慰や娼家でハッスルだけでは満足できんだろうと大規模なお見合いをセッティングした。
参加者は足軽組頭以上の収入的に家庭を持てるだろうと思われる兵、奉行衆等の役職持ち、工場勤務で安定した収入を得れる人物等の男衆、対して女性は各地から流れてきた流民の方々、甲賀衆で安定した嫁ぎ先を探していたくノ一達、市で働く女性達や元三河武士の娘で、家が没落して途方に暮れていた者等様々。
それを合コンパーティー……婚姻祭という名前で収穫祭とは別にお祭りを開催した。
広場で立食形式にして男女が話しやすい雰囲気を作り、仲良く話していく。
女性の取り合いで暴力沙汰を起こしたら一生参加させないという約束を取り決めていたお陰で、口喧嘩はあれど、それ以上は起こらなかった。
中村から飛び出してきて奉行衆として働く皆はここで彼女をゲットしたらしく、そのまま婚姻まで行くケースが多かった。
「よくこんな事を考えつきますな」
「大黒兄さん、食材の手配ありがとう」
「いやいや、この祭りで俺もだいぶ儲けさせてもらったからな……しかし部下の妻まで世話するとかそんな上司はなかなかいないぞ」
「家の繋がりを重視する婚姻は多いが、俺の部下達は殆ど身分が低いか三河の没落組だからな。尾張の浪人とかは実績ある佐久間様や柴田様の所に流れるからなぁ」
「それは仕方がないでしょう……」
「話しは変わるけど椎茸はどう? 売れた?」
「売れる売れる。畿内に持ち込めば5倍、大陸行きだと更に倍の値段で売れるからウハウハよ。お陰で今年もだいぶ利益が出たからな。ついでに織田弾正忠家の証文も買い取って信秀様に献金をして尾張のどこでも商売をして良い権利を贈られたから大黒屋をどんどん増やしていっているところだ」
「なるほど……献金は信秀様よりも信長様の方が良いですよ。信長様の方が金についてはよくわかっていますし」
「そうか! なら信長様への献金を増やそう」
「大黒兄さんはどこまで商売の伝手がお有りで? 堺や博多にも?」
「いや、俺は伊勢までだな。そこから先には陸路で行くのが難しいし、船で行こうにも伊勢湾周辺には水軍衆が多くいるから矢銭を多く取られるからな。堺に必ず着けば良いが、水軍の癇癪で沈められたりしたらたまったものではないからな」
「できれば販路じゃなくていいので畿内の商人の伝手を増やしてはもらえませんか?」
「別に良いが? また米売りでもするのか?」
「ええ、前よりも大規模に行おうかと」
「……いいねぇ。やる時は俺も乗っからせてもらうぞ」
「ええ、大黒兄さんに手伝ってもらいますからね」
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