1549年 家操16歳 ガラス茶器 魚肥 市場
1549年 家操16歳
フランシスコ・ザビエル日本上陸(キリスト教伝来)
細川晴元が三好長慶の反乱で失脚
正月が明け、新年の挨拶を信長様や信秀様に挨拶を行ったが、信秀様の顔色があまりよろしくないように思えた。
没年から逆算して体調がそろそろ悪化しているのだろう。
一応新年の挨拶の時に五位様のところから俺の領土に移したハーブ類で胃の調子を整えるお茶の葉を送るくらいしか立場上できることは少なかった。
そのまま重臣の方々への挨拶で正月の三が日を終え、ようやくゆっくりできると屋敷に戻った。
屋敷では畳の方が居心地が良いからと多くの部屋を金のかかる畳に張り替え、そこの上で布団を敷いて妻達と大運動会を開催したり、お正月ということでお雑煮を家臣達と食べたりした。
「しっかし屋敷の床を殆どの部屋を畳にするとは金持ちですな……帳簿は見てませんがまだまだ資産がお有りで?」
「なんだ正信気になるのか?」
「そりゃまぁ……」
「確かに俺も気になる」
「龍次郎もか……そうだな……今だとだいぶ使ったから1万3000貫は備蓄しているな」
「「は?」」
「いやいや、何をしたらそんなに金を持っているんですか」
「ちょっと先物取引に手を出してな……まぁそのうち本当の取引を見せてやるから待ってろ」
「はぁ……」
「その有り余る金で次は何をするのですか?」
「油工場や石鹸工場、塩を作ったから味噌といい加減醤油工場を作りたいな」
「醤油と言うと家操が料理に使っている液体のあれか?」
「それそれ、あと龍次郎、人前では一応主だから様か殿をつけてくれよ」
「わかった家操殿」
「……言われるとこそばゆいな……あとはそうだな……三河には木綿が少しあると聞いたから木綿を大々的に生産して領民にも温かい衣類が普及するようにするか」
「温かい衣類が安く手に入るのは良いですなぁ」
「暖かければ冬の炭を減らすこともできますからな。炭代も馬鹿になりませんし」
「炭はそこそこ値段がするし、大量に作ろうとすると直ぐにハゲ山になるからな。まぁ熱田や津島の商人と交渉して大量に安く仕入れて皆の家に安く回せるようにしようか」
「それだとありがたいですな」
ホームセンターのある空間は夏場は涼しく、冬は暖かいので時たまに逃げ込んでいたが、ふと昔纏めた将来に役立ちそうな物を確認しているとガラスの作り方が書いてあるのを思い出した。
「ソーダ灰は石鹸を作る時に使っているし、砂浜の砂浜には珪砂が含まれているからあとは石灰石は漆喰の原料として取引されているし……作ってみっか」
俺はまずホームセンターにある道具を使い、窯を作ってみて、取り寄せた材料でホームセンターの駐車場の窯で実験をしてみた。
「色は汚いが確かにガラスの塊ができた……これは売れるな」
俺は早速窯の設計を開始し、水車を使った鞴で温度を上げて、そこで先ほどの素材を混ぜてガラスを作る。
ホームセンターから戻ると大工に頼んで窯を幾つか作り、職人になりたいと熱田や津島に来た若者を大黒兄さん経由で呼び込んで、ガラス職人を育てることにした。
窯の試運転で素材が結合してガラスの塊になるのを確認し、それを職人達の前で実演する。
鉄砲の時に作られた金属筒をガラスの製作に使う筒に改造して、職人達の前で息を吹き込むとガラスが膨らむのを見せた。
「で、こいつは急激に冷やしたり衝撃で簡単に割れてしまうのは陶磁器と同じ、温度の低い窯で火を徐々に弱めて温度を下げて取り出す必要がある」
色々知っていることを若い職人達に説明すると、職人達は材料がある限り実験を開始した。
最初は失敗することも多かったが、コツを掴むと湯呑み型のガラス食器が完成。
それを熱田や津島の商人達に見せる。
流石に大黒屋は食品が中心なので茶器とかはそれ専門の商人達の方が目利きができるだろうということだ。
「ほう、こんな綺麗な茶器が和物で作れるとは……」
砂に色々な物を混ぜて色を付けているため同じ色や大きさの茶器は無く、形も様々で、中には角張っている物もあった。
「和物でも光る茶器は唐物にも無い。光の角度によっては入れた茶の色合いもよくできる。飾っていても不快感がないのも大きい」
「大きな茶器が作れないから壺みたいなのは無理だが、それでもこないな綺麗な茶器なら売れる」
そこに俺としては継続して茶器を買ってくれる商人を募集した。
ガラス茶器も1器作るのに結構な材料の値段と労力がいるので安くはできない。(材料費で1器作るのに500文くらいする)
「せやなぁ……1器1貫でどうや」
「いや、うちなら3貫出す」
「毎月どれくらい作れるんだ?」
「そうですねぇ、上手く作れても100器はいきません悪ければ50を下回るでしょう」
「ふむ……では1器3貫で熱田と津島半々の数を買い、それをそれぞれの場所で競売にかけるというのはどうでしょう」
俺が仕込んだサクラの商人が言うと、周りも納得してくれた。
商人達は高く転売できればそれでよく、恐らく売値は5貫とかになっているだろうし、遠くになれば10貫くらいに跳ね上がっている可能性もある。
「決まりですな」
というわけで1器3貫で売られることになった。職人達の取り分が売値の1.5貫、材料費500文、俺には窯の使用料と税ということで1貫入ってくることになる。
それが毎月50器売れれば50貫、年だと600貫にもなる。うはうはだ。
しかもこれは贈り物としても優れるので良いのができれば上級武士の方々や織田家一門の方、豪商との交渉の材料としても使える。
「ウヒョヒョヒョ!」
笑いが止まらない。
油や石鹸、蝋燭、塩、ガラスの食器、領の税収を合わせると年間で3000貫近く稼ぎが出ている。
鉄砲、火薬の調達、材料費、人件費を除いても工場の規模が拡大したおかげで黒字になり年500貫くらいの利益が出るようになった。
戦があれば火薬使用料等が上がるので戦時には一時的に赤字になるが、将来的には火薬も自家生産できるようにして出費を圧縮したいものである。
そして各地と交易している熱田商人と交渉して木綿の種が購入できたので田植えが終わったあたりで種まきをしようと決めるのだった。
現代種の作物を育てるとなると肥料が必須となる。
水田の米はある程度大丈夫であるが、小麦や来年から育てる芋類や野菜、大豆等の豆などはガンガン土地の栄養を吸いまくってしまう。
植え合わせである程度は何とかなるが肥料を撒かないことにはどんどん土地が痩せてしまうので様々な糞尿を使い肥料を作っているが、せっかく海が近いので魚肥を使おうと決めた。
そうなると今の漁獲量では足りないので漁で使う網と漁法の改良を行った。
この頃の地引き網には中袋がなかったので魚が逃げないように中袋を取り付け、網の目を少し粗めにし、稚魚を捕らないようにして継続的に漁ができるようにした。
地引き網漁には人が多く必要になるので、漁の日には兵達や漁師が全員集まって、総出で網を引いていった。
幸いというか網が引っかかるような岩場も海底に無いため、上手く網を引くことができ、1回で大量の魚を捕ることができた。
大きい魚は干物にしたりそのまま魚料理で食し、小さい魚は乾燥させてから製粉機で粉にして魚肥として使用した。
これ以上の漁獲量上昇は人口を増やすしかない。
まぁ流民が楽市を行っている大野村の市場近くにガンガン三河から流れてくるのでそうい人を工場や漁師として働かせた。
で、働く場所が限られる女性達を中心に娼家が出来始めたので、これは管理しなければいけないと娼家を許可制にして従業員の数を月に1度報告することや、従業員の数で人頭税を取る代わりに産まれた子供は内葉関係者が経営する孤児院で養育するシステムを作ったりした。
おかげで1000石しか領地が無いのに活用できる場所がほぼパンパンになっていくのであり、他地域に比べると明らかに発展している地域が出現するのであった。
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