1548年 家操15歳 焼き物 果樹園 自由市場
「こういう物を作ってみたいのだが」
「うーむ、なるほど……やったことはないですが……これができれば焼き物を量産できますね」
俺は村の焼き物職人を集めて登り窯を提案してみた。
まだこの時代焼き物職人の質が低く、唐物と呼ばれる大陸由来の焼き物が高値で取引されていたが、今焼きと呼ばれる和物は価値が低く、安く買い叩かれていた。
せっかく常滑の地域では良質な粘土があるので、質を高めれば良い売り物になると思うのだが……。
焼き物職人達も自分の作品が買い叩かれる現状を嘆いており、より良い焼き物を作るための工夫をしていた。
登り窯は焼き物の量産の面でも良いし、今の釜よりも熱効率も良い。
「燃料は気にするな。俺が引っ張ってくるから、新しい釜を作り、君達は自分の作品の量と質を上げていってくれ」
俺は焼き物職人達を保護し、パトロンとなってどんどん作品を作らせた。
燃料となる松の木の植林も海岸沿いで行い、防波林として活用しながら燃料としても使えるようにと大量に植えるのだった。
大きくなるまで15年もかかるので早く植えておいて損はないだろう。
夏場の少し農作業が落ち着いてきた時にも金をばらまいて、人夫を雇い、果樹園の建設を行った。
桃、栗、柿、蜜柑、レモン、梨、オリーブを植林し、特にオリーブの木を大量に植えた。
果樹ではないが椿も大量に植えて将来の油を作る材料の確保に余念は無い。
椿もオリーブも実をつけるまで3年、安定するまで5年かかるので早く植える必要があったのでホームセンターに保管されていた苗木をガンガン植えていった。
村人からは果樹園という概念が無いためか奇妙な目で見られたが、果樹園が稼働すれば養蜂もできるようになるため早期に動くのだった。
「どうだ領地の経営は?」
「いやはや、なかなか難しいものですな」
信長様が俺の領地に視察に来て、屋敷に泊まっていた。
村の案内をし、製塩所を見て一緒に来た愚連隊の面々と一緒に興奮していたり、果樹園予定地や稼働したばかりの牧場を見学していったりと楽しそうである。
「こっちはこっちで親父殿から政務を押し付けられて大変だ。まぁ三河統治の方が大変らしいから文句は言えんがな」
三河では没落した旧松平家の家臣達が三河の一向宗に合流して不穏な空気が漂っているらしい。
そんな罰ゲームの様な領地経営をさせられている信行様には多少同情するが、こいつ信長様を裏切るんだよなぁと思うと同情も軽減してしまう。
「牛乳はないのか……」
「まだ子牛を仕込んだばっかりなので無理です。代わりに今回植えた果実の飲み物を用意しました」
ホームセンターに何故かあったオレンジジュースを信長様に出す。
すると信長様はこれもこれで美味いなとおっしゃってくれた。
その後は俺が作った五右衛門風呂を堪能する。
「おお、なかなか良いな」
熱すぎない様に調整しているが、信長様は風呂を気に入ったらしい。
ちなみに俺もこの風呂には水の用意が大変で2日に1回しか入れないのだが……。
体の垢をタオルで擦って落とし、石鹸で泡立てて綺麗にしていく。
「ほほ! 気持ち良いな! 那古野にもこれが欲しいな」
「大きな釜の底に木の板で足場を作れば良いだけなので職人に頼めば作れると思いますよ」
「そうかそうか!」
ちなみに俺の五右衛門風呂はホームセンターの道具を使ってそれっぽく作っているが……。
風呂を堪能した後、屋敷で俺としっぽりしてから今後の織田家の動きをピロトークがてら聞く。
「三河が織田家に取られたことで今川の遠江の支配に混乱が生じ、大規模な一揆が起こったらしい。今川は当面攻撃してこれないのでその間に親父殿は三河の支配を盤石にしたいと考えているらしい。今は力を失って大人しいが、三河衆の力が回復すれば必ず一揆を起こしてくるから、それを鎮圧できるかどうかで支配の有無が変わってくるだろう。俺的には三河などという面倒くさい土地は竹千代に丸投げして今川への壁にしてしまった方が良いと思うが……三河を取ってしまった以上、土地を放棄すれば家臣達が黙ってないからな」
「難しいですな」
「奥三河を接したことで武田とも隣接したのが恐ろしい。武田は強いと評判だからな」
「鉄砲の部隊を拡張できれば良いのですが……」
「俺の愚連隊員からも鉄砲隊の育成は進んでいるのだがな……まだまだ形になるには時間がかかる。鉄砲の生産工房の拡張は決まったが、人を増やしても直ぐには増えないらしいからな」
「ええ、時間がかかるでしょう」
どうやら信長様も鉄砲工場に投資を行ったらしい。
幸之助が喜んでいるのが想像できるが、あいつも大変だろうな。
「こちらでも火薬の生産場を整備し、作れるように動き始めます」
「うむ、頼りにしているぞ」
「は!」
それと信長様から領地経営未経験だから大変だろうと防衛戦以外の戦には当面は参加しなくても大丈夫と言われた。
まぁ織田家としてはこれ以上の拡張が三河を取ったことでキャパオーバーになったのだろう。
というか織田家って守護の家臣の家臣の立場だし……それが2カ国も持っていたらそりゃキャパオーバーも起こすわ
信長様も人材発掘と育成に注力すると方針を固めているらしい。
その後俺は信長様と2回戦を行うのだった。
「弥三郎どうだ?」
「どうだもなにも武芸よりも算術ばっかりじゃねぇか! 体を動かしたいぜ」
「はは、弥三郎。領地経営に必要なのば武力ではなく知力の方だからな。弥三郎もそのうち俺が偉くなったら領地を経営することになるんだから覚えておいて損は無いぞ」
「むむ!」
約束通り加藤さんの息子の加藤弥三郎を家臣にし、他には俺の権限で上げられる足軽組頭に前田利虎と林龍次郎、鹿之助こと中村鹿之助に引き上げた。
他にも村から付き従ってくれた連中を組頭に引き上げ最下級の武士とし、土地は限りがあるからと銭で給料を支払っていた。
「すまんな土地じゃなくて……その分給料には色を付けるから」
「しゃあねえよ家操は土地よりも金の方が持ってるしな」
「まぁもっと偉くなったら土地くれよ」
「ああ、それは約束する」
と周りも納得して銭払いをしていた。
足軽達も銭払いなので村でも銭が使える場所が欲しいということになり、大黒兄さんに頼んで大黒屋の支店を置いてもらったり、村の女衆を誘って食堂を作ったりした。
村の衆も金稼ぎができるし、困ったら大黒屋に行けばある程度の物は売っている状態にし、大黒屋が地域のスーパーの様な立場に落ち着いた。
大野村だけ俺という大資本のお零れで貨幣経済が浸透し始めた。
「豊作だぁぁ!!」
「「「ヤッホーい!」」」
半信半疑だった村人達も与えられた種籾により豊作だとわかれば大喜び。
しかも収穫して脱穀に千歯扱きや精米に水車を用いた精米機を通せばあっという間にに大量の稲穂が米へと変わるので手間が大幅に減少した。
それらを用意してくれた領主の俺はたちまち村民からの信頼を勝ち取り、来年からは今年配った種籾を全面的に使うと意気込んでいた。
で、俺は現代種の秋まきの小麦の種籾を渡して小麦栽培を推奨。
しかも小麦も相応の値段で買い取ると言われたら喜んで栽培を開始する。
「納税も滞り無く済みましたね」
「ああ、この収穫した藁は牛や馬の餌の餌に回して、余れば草履にすれば良いからな。よし、米の脱穀作業が楽になって時間的余裕が生まれたろう。次は桑の木を植えるぞ」
養蚕の準備も始め、養鶏場も建築する。
牛や鶏、人糞による肥料作りも開始しする。
そして収穫し精米した時に出た米ぬかを各地から集めて米油製造も開始し、徐々に熱田の米油工場や石鹸工場を広い大野村の工場に移転していくのであった。
で、米油工場や石鹸工場で働いていた人達は継続して雇い、大野村に移住してもらった。
そうなると人口が、多くなり、村民が中心とした市場ができ始める。
俺はその市場にて楽市令を出し、場所代を支払えば自由に市場で売買しても良いということになった。
場所代が俺にとっての税であり、座ができる前に大野村では自由市場を形成するのであった。
そうなると港もあるので商人達も集まり始め、市場を中心とした町ができ始めるのだった。
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