第125話

気が付けば彼女は視界から消えていた。







途端に失敗した、と思ったボクはそのまま今の今まで彼女がいた本棚の場所まで歩みを進める。目にした位置的にここら辺だったな、と視線は下に。


僅かに、本の両サイドが緩くなっている箇所を見つけた。





その間に在った本のタイトルは、【朝目を開けたら、きっと希望がまっている】。





ハア?と、心の中で。



特に変った本ではないようだ。でも、多分コレ。



まあ問題は中に挟まれていた白い封筒だし。



そう、何気なくパラパラと本を捲って何か残っていないかと探っていた時。





「その本」




「ッ、ァ」



突然聞こえた声に思わず本ごと床に落としてしまった。




「……ハ」




恐る恐る、逸る心臓を押さえつけながら視線を声の主の方へと動かす。


バレるわけないのに今自分がしていたことが悪いことで、バレてないかとか気にして平然を装った。



それも、一瞬で忘れてしまうくらい。




湖みたいな眸と目が合って動けなくなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る