ふたつの鍵、幸せな日々、Mustard*Knit

第61話

「……んぅ…」





何となく、左手が寒いなぁと思って、もぞもぞと動いた。

けれど動けなくて、何かが引っかかっていて瞼を持ち上げる。



「おは、よ」



脳の機能が全停止する。



「…よく眠れた?」



「!?」


「!?」と、もう一度。少し掠れた、色っぽい声は「さむかった?」と続き、彼の左腕が伸びてきた。


ぎゅう、とわけも解らぬまま密着すれば、呼吸が止まりそう。


ここはどこ?


それに、相良さん、目が充血していたような……




「緩菜、誕生日おめでとう。…起きたら、……」




「えっ?」



やっとのことで一声発せられた時にはもう、入れ替わりで彼は夢の中だった。

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