第59話
「……。あべ、鎖。繋がれてるから行けねぇよ?」
「……?ンアッ」
おまえも忘れてたんかい。
そう、鎖。この長さあれば別にトイレも行けないってわけじゃねぇけど、と考えた結果身体を起こしてソファに座り直し、軽く両腕を差し出した。
すると、見たこともないようなしわくちゃな顔をしたおじさん。「抱えてくから、来て。」と付け足すと、一瞬の間の後になって「ヒャー」と感情が返ってきた。
ヒャーって何だ。
「あべ、早く」
「いやいや!むりでしょ~~」
ハー?
ずっと抱っこされてたくせに。
「早くしろ」
「いやいやいや…何でしたらおじさんが抱っこしていきますよ」
ハー!?
よっこらしょういち、と正座から立ち上がり、痺れたのかちょっとふらふらしつつ俺に立つよう促してきた。
「……俺とどのくらい体格差あるか知ってる?」
「3センチくらいかな」
とりあえず、小さな手の平が腕を誘うから立ち上がる。
「いくぞ?…んっ、しょ」
…ポスッ。
おじさん、正面から俺の腰に腕を回し、静止。
抱きついてきただけになっている。
「……」
「……」
あーー。泣くな泣くな!
「む…。筋肉を、落としてはくれないか。そうしたら、おまえも軽々、持ち上げられる予定なのだが……?」
と。とても可愛い、明らかに不満そうな不貞腐れた顔がどうしたって上目遣いで見上げてきた。
「……なっ、…」
がまんならない俺はそのままおじさんを軽く持ち上げ、おじさんの足裏を自分の足の甲に置いた。
「!?」「!?」と驚いてびくびくしているおじさんは放って一歩一歩トイレへ向かう。らちが明かない。
そうしておじさんをトイレの外へ配置し絶対そこから動くなと言付け。
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