第10話

「おつかれさまです」



私はまた見上げて、夢を見つめるように明かりを溜める。



ぼさぼさになってマフラーからあちこち飛び跳ねている髪を見下ろして、へへ、と笑った彼は続いて「一緒帰ろ」と口を結んだ。




向き直るとき、とん、と肩が触れた。



どきりと慣れない心臓が弾む。



あったかい何かが、そこに拡がる。





「一月もあと一週間だなー。今日も寒い」




彼が言った。



私ははっとして、私を待っていてくれたからだと思って、していた手袋をとって「さがらさん」と思わず呼び止めた。



「ん?」



「あの、これ…使ってください」


「へ」




数秒の間があった。



すると、驚いたままの表情から笑いを堪える表情に変わる彼。



「?」



「…ぶふっ」



「?」



戸惑っていると突然「ははっ!」と笑い声を立てた相良さんは私をふわりと抱きしめた。



「わっ」



「あーーっもう」




まだ、会社からそんなに離れていないその場所。



身長に差のある彼と私。



相良さんは、“大切そう”だと感じてしまうくらいに抱きしめた。

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