第7話

「あのー。…あれ、やっぱり寝てるのかな」



「っは」



顔を上げると、目の前には箒を持ったまま背を屈めて顔を近付けている人の姿。


目が合って、ぱちぱちと瞬きをする。



「お、起きた。社員さん起きましたー!」



タブリエエプロンをしているために社員食堂の方だと判る男性はバックの方へ声をかけ、その後アイコンタクトをとったのか笑顔で頷いている。



周りを見渡すと、人も疎ら。



「ごっごめんなさい」


立ち上がり、お盆に手をかけようと手を伸ばした。



もう背中合わせに相良さんはいないと、分かっていても小さく震えた手。



するとお盆は、目の前でひょいと持ち上げられた。



見上げると「寝起きって手に力入らないですよね」という笑ったこえが降ってきて。




「……」




「お昼寝ですか?お仕事おつかれさまです」



「あ、いえ…ぼーっとしてしまって……。あの、おぼんありがとうございます」



頭を、下げた。



「いいえー。…………え」


「?」



「社員さん…泣…いて」



「…っえ」





ぼろり。



と。床に落ちた雫。

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