第3話

丁度、一年前。



朝方に大きな物音がして、起きてベランダに出てみて有り得ない状況に置かれて。混乱した私は、混乱した頭を抱えたまま、この“お隣さん”に乗り込んだ。





そうして、彼――…花吹さんと、出会った。







あの時は漠然とした動揺と、そこから出る憤りしか頭になくて、一年後、こんな気持ちでここに立っているだなんて想像も出来なかった。


花吹さんに、こんな気持ちを抱くだなんて。




不思議。



そしてまだ、実感もない。







『、はい』




「!」


感情に浸っていた身を尖らせて、私はインターホン越しに低く聞こえるその声に、甘い感情を思い出す。



ただ、声を、聞いただけなのに。




「宇乃、です」





『…宇乃さん?』

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