スーパー天使ノエルちゃんの完璧すぎるお仕事ぶりを世に知らしめるお話
めの。
第1話
1
世界を滅ぼそうとする魔王が誕生してしまい、それを倒すための勇者様を神様が異世界から召喚した。のは知っていたのですが。
「あ、ノエル。君は異世界で勇者様のフリをしておいてくれる?」
「ふぁ!?」
等価交換ということなのか。神の御使スーパー天使の私がなぜか異世界で勇者様のフリをして暮らすことになってしまったのでした。
なんでも、勇者様が魔王討伐後に勇者の世界へ戻りたくなった時のための保険だとか何とか。
「あーもー、ふざけるなです。しねです」
六畳半の間取りでひとりごちても何の変化もないです。通常、人を助けるのが天使の仕事だというのにこんな役目を与えられてしまうとは、スーパー天使は評価され過ぎて辛いものがあるです。
そんな私に与えられた仕事の一つ目は、とにかくこの部屋から出ないこと。それから。
「うわぁーうわぁ!」
時たま意味もなく吠えて威嚇すること。
そうすることで外部の敵の侵入を拒むらしいです。この平和そうな異世界で何が敵になるかは知らないのですが、声さえあげておけば襲ってこないならきっと下等生物なのでしょう。
便宜上この時は勇者様の声に変えていますが、異世界の勇者様の声をここまで明確に再現できるのもスーパー天使だからこそ成せる技なのです。今頃あちらでスライムでも狩っている勇者様にはもうちょっと讃えてもらえたいものです。
十時に吠えたので次は六時間後くらいに吠えるです。勇者様は使わないらしいアラームを使ってバレてもいけないので、ただただ覚えておくです。
きっちり覚えてしゃっきりこなせるスーパー天使の存在を神様ももう少しありがたがるべきですね。
そうして部屋にあった本を眺めて、異世界語は分からないので元に戻して、退屈なのでまた眺めてを繰り返しているうちに昼になったです。
ここでも一仕事あるのでした。床を三回強めに踏む仕事です。そうすると、しばらくして三回のノック音の後に。
「ーーーー」
異世界語が聞こえて何か置いたような音が聞こえるです。立ち去る音を確認した後で、一応勇者様の姿に変身して扉を開けます。
部屋から出てはいけないので、廊下にも触れずにお盆を取るです。一緒に置いてあるペットボトルの空なんかも合わせて取るのを忘れずに。
天使は本来人間と同じ食事など必要ありませんし、異世界の食べ物など口に入れるのも憚られるのですが、これも仕事のひとつです。
私のために摘み取られた命のためにもいただくべきですね。なんていったって私は心優しいスーパー天使ですから。あ、お肉の丸めたのがある。わーい、これ好きです!
「いただきますです」
もにゅもにゅと口を動かしながら報告書を作成します。本来夜に送るのですが、仕事が早いスーパー天使は昼から取り掛かるのです。暇ともいいます。ご飯を食べながらやる意味も特にないです。
『変化なし。お肉の丸いのが美味しかったです』
こんなもんでしょう。できるスーパー天使は仕事に時間をかけないのです。書くことがないともいいます。これに夕飯の感想を足したら今日の仕事はおしまいです。
この仕事は勇者様が魔王を倒すまで続くようですが、あとどのくらいかかるのでしょう。三日くらいかな。そのくらいだと嬉しいです。
そうして十六時に吠えて、十九時に床を鳴らして、二十二時に吠えたら報告書に夕飯の感想を一文追加して就寝です。
そんな生活は、五年続いたです。
2
「飽きたです」
本当は大分前から。正確に言うとここに来て三日くらいで飽きていたのですが、スーパー天使は仕事を放棄するなんて非常なことはできず、あちらに帰る方法もないのでのんべんだらりと暮らしてしまったです。
慣れたとも言います。
「とりあえず本でも読むです」
知らない言葉ばかりで大分苦労したですが、大分文字も読めるようになってきたです。正確に言えば雰囲気が分かるようになってきたとでもいうですか。
『●●●●●』
例えば、これはこの世界の挨拶です。人間同士が会った絵にこの言葉が添えてあることが多いので、これは挨拶と推察したわけですね。五年でここまで分かるなんてスーパー天使ならではです。
『△△△△』
なんか食べて嬉しそうに言っていることが多いので、きっとこれは美味しいときに使う言葉ですね。これはお肉、これは野菜。四角に丸に三角に好きに嫌い。
このままでは異世界語もマスターしてしまいかねないです。我が才能が恐ろしいですね。
そうこうしているうちに床を鳴らす時間が来ました。最近は立ち去るのに時間がかかるようになったみたいなので、注意してドアを開ける必要があるです。
日々の変化にこれほど気付いてしまうこの洞察力は末恐ろしいですね。
「ーーーー」
さて、異世界語が聞こえたら十分後くらいが良い塩梅です。ドアを開けると。
少し遠くにまだいたです。
ただ、こちらがドアを開けたことに気付いていないのかそのまま階段を降りていくです。
危なかったです。これが本当のヒヤリハットです。偽物のヒヤリハットを特には知らないですが。勇者様に姿を変えるのもうっかり失念していたので本当に危なかったです。
急いで閉じて無事を喜ぶ舞を踊りました。天使はこういう時に舞を踊るものです。誤魔化しではないです。あー危なかった。神様にどやされるところでした。ナイス自分です。さすがはスーパー天使です。
そうして少し気分が高揚したところでご飯を見ると、久しぶりにあのお肉の丸いのがありました。わーい、これ好きです! もっと食べたいけど最近少なくなりました。季節柄でしょうか。
そうだ。
現地人とのコミュニケーションは原則禁止されていますが、これくらいなら問題ないはずです。紙です。ペンです。書くです。えっと、本を見ながら。
『→△△△△』
もちろん文字はそこのへんにあった勇者様のを真似たです。お肉の丸いのが乗っていたあたりに置いておけばバカでも気付くはずです。名案です。
そうして、下げた食器にそのメモをつけて置いた翌日から、お肉の丸いのの頻度が上がったので満足でした。ただ、面倒なことにあちらからもメモが付けられるようになったです。
『●△●△●△?』
調べるのに時間がかかったですが、ようやく最初の紙の言葉が分かってきたです。無視していると思われるのも癪だったので良かったです。スーパー天使は義理堅くもあるのですから。
『げんきですか?』
というような意味の言葉だったようです。勇者が元気かは知らないですが私は元気です。こういう時はどう答えるべきでしょうか。スーパー天使は悩む姿も素敵ですが、長く悩むのは苦手です。
『○』
意思表示としてはこれで十分でしょう。調べて書く手間もなくて楽ちんです。勇者はこちらへの連絡によると冒険中で死んではいなさそうなので広い意味では元気でしょう。多分。
そうして、たまにある質問に○とか×とかで返してはいたですが、別になんということはない質問ばかりだったので困ることはありませんでした。さすがはスーパー天使といったところです。
時折、窓の外を見れば普通に人間は外に出ています。どこかに行って帰ってきた様子だったり、友達と遊んでいたり、低級魔族のような生物に紐をつけて散歩したりしているです。あいつ顔可愛くないのに可愛がられてるです。不思議です。
ふと。
もしかして、人間のあるべき姿はあちらの方ではないのかな。なんて、思ってしまうです。
成長に応じて、変わって、変わっていくあの姿の方が正しくて。私達の世界に来ている勇者は、人間らしくない人間だったのではないですか。
勇者の書いた文字はそこのへんにある文字ほど綺麗ではなくて、汚くて、雑で。あまり読んだことはなかったですが、異世界語をマスターしたスーパー天使である今の私なら解析が可能なはずです。
書き殴って記されたそれは。
憎悪、雑言、罵倒、諦観、悲壮、嘆き、悔恨。
本の中で、きっと良くない言葉と思われるものばかりが並んでいて。
一体、この平和な世界が。下等生物達が勇者に何をしたというですか?
分からないまま、分からないけれど。
『○○○』
何にもならない、励ましの言葉を書き足しておいたです。
3
季節は巡り、幾度目かの春がやってきて。
『勇者が無事に魔王を討ち果たしました』
たった一文で、私の仕事は終わりを迎えたのでした。
この部屋から一歩も出ないまま。窓の外には、少し前に野球道具片手に自転車を漕いでいた子が、大きくなって子供とキャッチボールをしている姿があるというのに、この部屋だけは私が来た時から変わらないまま。
初めてきた時から、十五年が過ぎていたです。
天使の寿命からすれば大したことはない時間でしたが、人間からすればそこそこに変化のある時間を勇者はこの世界で過ごさないまま。
『勇者もこちらの世界に残ることを希望しているので任務完了です。事後処理は別に行いますので帰還してください。お疲れ様でした』
仕事が完了ということは部屋から出ても良いということです。勇者は、この生活を放棄したわけですから。扉を開けて、階段を降りて、最初の部屋を開けると。
「ああ、ノエル。お疲れ様。ちょうど良かったわ」
久しぶりに会った先輩天使が、先程息を引き取ったばかりの下等生物を片付けているところでした。
「元々いなくなっても後腐れない人間を選んだって神様に聞いていたけれど、ちょうど家族も死んだところで良かったわ。心臓かしら。病死みたいだし、後は勇者様のこちらの世界の死体を偽装すれば完了ね。放置しても半年くらいすればさすがに見つけられるでしょう」
あの日、階段をよぼよぼと降りていった下等生物が死んでいるです。ソファに座って休憩しようとしたところで事切れたのか、台所は晩御飯の用意でまだ散らかっていました。
「ああ、そっちはまだ手をつけていなくて……」
先輩天使の言葉は、なんだか上手く耳に入ってこないです。ちゃんと喋ってくれないと。喋ってくれないから。見つけてしまったです。
「お肉の、丸いの…………」
自分の分は、下等生物のものより二回りほど大きく作ってあったのに、気付いてしまったのでした。
きっと、この家族は、一般的な人間の家族の在り方としては間違っていたと思うです。
息子が十五年も部屋から出てこないのに、毎日吠えて料理の催促だけして排泄すらトイレでしない生活をしているのに、母親なのに久しぶりに言葉をかける時もげんきですか、なんて他人行儀で。
いくら私がスーパー天使といえど、息子が十五年成り代わっていることに気付きもしないで、言われるがままに料理を作るだけでドアも開けない。
だけど。
『げんきですか?』
『いつでも話してください』
『心配しています』
『明日は冷えるみたいです』
『食べたいものはありますか?』
『公園の桜が綺麗です』
『虫が出たりしませんか』
『栗ご飯にしてみました』
『体調は大丈夫ですか』
『今夜は熱帯夜みたいです』
『困ったことはいつでも言ってください』
春にはまずい草のようなものが出てきて、夏には野菜ばかりのカレーが出てきて、秋にはきのこやら木の実を混ぜたご飯が出てきて、冬は鍋がやたらと多くなって。
小鉢のすっぱい野菜は毎回違う具材で作ってあって、お肉の丸いのもタレがちょこちょこ違う時があってたまにこれは違うでしょうと思うのもあって。
○をつけただけで書かれた文字は嬉しそうに踊って、×をつけた日は経口補水液のような謎の飲み物が追加されて心配そうな消え入りそうな文字になって。
それはそれで、家族をちゃんとしていたではないですか? 歪だけれど、普通からすれば間違っているのかもしれないけれど。
きっと、何もないわけじゃなかった。
「ノエルー? おーい」
「勇者、様は」
「んー?」
「勇者様は、こっちに戻ってこないこと……なんて言っていたですか?」
先輩天使は、少し考え込む仕草をして。少し悲しそうに笑った。
「未練は、ないってさ」
この下等生物に、未練はない。って。そういうことですか。
でも、私は知っているです。
スーパー天使の私は、あの部屋で過ごした私だから知っているです。
最近の勇者様の写真はなかったのに、小さい時の勇者様は、両親に囲まれて笑っていたです。特に母親の方が好きなようで甘えて抱きついて甘えて。その上。
小さい頃の写真のところは、何度も見返したように擦り切れて、指で撫でた跡と、涙が落ちた跡があったのを、私は知っているです。
何があったのかは知らないです。だけど、あの何もない退屈な部屋で、吠えて床を鳴らして本を読むくらいしかできないあの部屋で、何度もしていたその行為を思い出したとしても、本当に未練はなかったと言えるですか
「ゲートは開いてるですか?」
「ええ。鍵渡しておくわね。これで久しぶりに里帰りーーノエル?」
索敵魔法を最大限の出力で。反応の大きさからここだ。見つけた! すぐに転移魔法に移行して。
「ちょっ!? ノエル、ノエル!?」
「あとは、任せたですっ!」
通常、天使の仕事は人を救うこと。ならば。
「うわっ!? え、なんだ?」
転移してあたりを見渡す。ああ、驚いて少し間抜けな顔をしているこの人が勇者様ですね。アルバムの面影があるその人を思い切り指差して宣言する。
「私はっ、神の御使です! 貴方を救いにきたですっ!」
そうして、異空間に勇者様を連れ込んだ。
「君、誰? ここは……」
一度異世界転移をしたのに察しの悪い勇者様です。そろそろ慣れろです。
「あっちの世界に未練はないとか言っている嘘吐き勇者様を罰しにきたです」
「は? ま、待ってよ。俺、もうあっちの世界になんて何も」
この期に及んで訳の分からない顔をする奴です。勇者様だけどちょっとむかつくです。
「あの下等……勇者様の、母親が死んだです」
その言葉に、勇者様も体をびくりと震わせた。
「今なら反魂魔法を使って一度だけ話ができるようにしてやるです。話すです」
「ま……だから、待ってよ」
勇者様はまだぐちぐちぶつぶつと言い訳をして、
「別に……話すことなんか」
心にもないことを言ったです。本当にそう思うなら言いながら目を背けるなです。だんだん腹が立ってきました。私だって怒る時は怒るです。
「だったらなんで! 生まれてきてごめんなさいなんて書いたですかっ!」
勇者様の殴り書き。死ね、死ね死ね死ね死ね消えたい消えたい消えたい死にたい死にたい死にたい殺して殺して殺してどこかへ行きたいごめんなさいごめんなさいごめんなさい生まれてきてごめんなさいこんな子供でごめんなさい。
憎悪や呪詛の言葉だけが並んであればその言い分も分かる。だけど。
「あれは、あの母親相手に謝っていたではないのですか……?
小さい頃の、公園に連れて行ってもらって嬉しそうな写真も好物を食べさせてもらって笑顔になっていた写真も、転んで泣いているところを慰めてもらっている写真も。すべて大切な思い出だからこそなぞって、その頃には戻れないからこそ涙をこぼしていたのではないですかっ!」
あの部屋にいて、あの部屋で暮らした私だからこそ知っている。どうしようもない閉塞感とどうにもならない無力感と取り返しのつかない絶望感を。私は知っている。
「お肉の丸いの、勇者様も大好きだったんでしょう……?」
私の好物を前に、勇者様がなんの不安もないような、バカみたいに安心しきった笑顔を見せていたことを、私は知っている。
「ああ…………アレ」
勇者様は私の説明で思い当たったのか、とても、とても大切なものをなぞるように視線を動かして、懐かしむような表情をして。
「しばらく、食べてないなぁ…………」
悲しげに笑った。もう食べられない好物を思って。
「魂が浄化しきっていない今しかこの魔法は使えないです。今だけです。今しか会えないです。だから」
「…………うん」
目を閉じて、開けた時にはやっと勇者様らしい表情を見せてくれた。
「お願いします」
その言葉に、魔法を展開していく。反魂魔法は本来禁じられている魔法です。余程の事情がない限り、故人の魂を個人的な感傷で呼び戻すことはよくないとされているからです。
だけど、スーパー天使である私は使い時を間違えないのです。
呼び戻された魂は光となって、生前の形に戻っていくです。まだよぼよぼしていない頃の、私があちらへ行った頃よりもさらに若いくらいの母親の姿を形取って。
「母、さん…………」
それからは離れた場所にいたので詳しい話は知らないのです。二人の間に何があったのか、何があってあんなふうになってしまったのか。気にならないとは言わないのですが、スーパー天使は野暮なことは言わないのです。
少し離れたところから、祈りながらそっと見守ります。
4
そうして、二人の長い長い最後の話が終わった頃を見計らって声をかけます。驚いたことに母親は私に深々とお辞儀したです。なかなか礼儀の分かっている下等生物ではないですか。
「あの……あの」
こちらもサービスしておいてやるです。
「お肉の、丸いのおいし……かったです」
異世界語はマスターしたはずです。この下等生物にも、きっと伝わるはずです。思ったより辿々しくなってしまったのは、きっと思わぬ礼を尽くされて動揺したからです。
母親はその言葉を受けてふんわりとした笑顔を見せた後、勇者様と二人で何やら話します。目の前で分からない言葉で話されると不安になるからやめてほしいです。傷付くです。
「もういいですか?」
「うん……ありがとう。最期に話せて、本当に良かった」
天使の一番の報酬はその笑顔です。つまらない退屈な仕事でしたが、やはりスーパー天使にはどんな仕事でも実りある仕事になってしまいますね。自分の実力が怖いです。
「ノエルの名において魂を導くです。この生が貴女にとっても誇れる道となることを祈って、天でこれまでの旅路の疲れが癒えますよう」
魂が登っていきます。もう二度と還ることはない一直線で一方通行の旅路です。
これまでの旅路の思いを振り返りながら疲れを癒して、また人は別の旅に出るです。なんでそんなに旅好きかは知りませんが、人とはそういうものなんでしょう。物好きです。
「ありがとう」
涙の跡が残る勇者様の顔は、晴れやかなものへと変わっていたです。
「スーパー天使なら当然のことをしたまでです」
胸を張って、魔法を使う。元の場所へ戻れば、勇者様の仲間達が勇者様をもみくちゃにしているです。一人放置されると少し寂しいですが、まあそれはそれです。
この世界で新しい家族を手に入れたのですね、勇者様。
そうしてできるスーパー天使はそっと黙って去るです。格好良いのです。
5
「あ、ノエルだー。怒られた?」
不躾に頭を撫でてくる先輩天使は相変わらず失礼です。
「またボーナス飛んだんだって? ひもじい生活が続くねぇ」
「……私はスーパー天使として当然のことをしたまでです」
「はいはい、力はあっても違反が多くちゃ昇進できないよー」
世界的価値のある人物の誘拐及び使用禁止魔法の使用に十五年も耐えた仕事の最終報告書の上げ忘れと諸々あって二年分のボーナスが消し飛んだです。
ついでにここ三ヶ月は減給もされるです。違反はしているとはいえ神様達は粋ってものが分かっていないです。バカばっかりです。
「スーパー天使は心まで貧しくあってはいけないのです」
「はいはい、今度奢ってあげるからどこか遊びに行こうねー」
散々人の頭を好き勝手したあと、先輩天使は行ってしまったです。やれやれ。人気者も辛いです。これからだって用事があるのです。引っ張りだこというやつです。
「こんにちは。あがってあがって」
元引きこもりとは思えないくらい自然に話している勇者様は、家主らしくきちんと案内してくれるです。なかなか悪くないです。魔王討伐後隠居してまた陰キャになっていないか心配でしたが大丈夫そうですね。
「上手に作れたかは分からないけど……」
台所から運んできてくれたのは、あの日食べ損ねたあの料理です。
「まあ寛大なスーパー天使は文句はつけないです」
「そうだと助かるなぁ」
いただきますです、ときちんと挨拶をして頬張る。お肉の丸いの、私はこれ好きです。うん。
「やっぱり味が落ちるです。もっと勉強するです」
「え、文句は言わないって」
「事実だから仕方ないです。文句言うなです」
「めちゃくちゃだ……」
しばらくして、勇者様は穏やかな顔で言いました。
「ありがとう」
改めて言われると優しいスーパー天使といえど少しだけ照れますが、お肉の丸いのを食べて誤魔化すことにするです。
天使の仕事は人を助けること。
今回も、無事に任務完了っです!
スーパー天使ノエルちゃんの完璧すぎるお仕事ぶりを世に知らしめるお話 めの。 @menoshimane
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます