第14話 白い塔それは人間の塔

 真琴たちは、馬車の窓から周りを伺う。

 誰が先に行くか牽制しながら、窓から顔を出し、キョロキョロと外を眺める。

 何をやってるんだとメトセラが、真琴たちを馬車から追い出した。


 真琴たちは、目の前の白い壁を眺め、視線を上に伸ばす。

 白い壁は、白い塔そのものだった。

 つまり、真琴たちは白い塔の根本に居ることになる。


 白い塔は、天高くそびえ立っていた。

 スマホで写真を撮ろうと地面に這いつくばっても画面には、収まらない大きさだった。

 真琴たちは、あんぐりと口を開け、遥か上空の塔の先を探す。


 塔の先端を探すのを諦め、塔の入口を探した。

 メトセラが、「そこだ」と指差している。


 そこには、黒い重厚な扉が置かれていた。

 その重厚な扉には、様々な裸の人間が浮彫で飾られていた。


「凱旋門……」響介が呟く。

 勝利の記念である凱旋門の様にただそこにどっしりと鎮座していた。

「すげぇー」

 真琴は、門に近づいて行き、浮彫を眺め、顔をくっつけ見入っていた。

「音が聞こえるようだ」響介も浮彫を人差し指で軽くなぞり、呟く。

 絢音も声を発することを忘れて見入っている。


 真琴たちは、扉の後ろに回ろうとしたが、見えない壁に遮られ、扉の後ろには行けなかった。


 ギギギギッ。


 低いうなり声をあげながら重厚な扉が開いた。

 扉を開けたのは、二メートルを超える身長の筋骨隆々な門番だった。

 彫の深い筋肉が美しい。

 そして、その門番の奥には、コロニクスが立っていた。


「ようこそ、白い塔へ」

 コロニクスが、真琴たちに向かって令をする。

 令から直ったコロニクスは、真琴たちを見つめた。

 そして、こう言った。


「この塔は、”人間の塔”と言われている」

「人間の……」

 真琴、響介、絢音は、顔を見合わせ、メトセラの顔を見た。

 メトセラは、そうだと頷いた。


「こちらへ」とコロニクスがくるっと回れ右をし、塔の中へと進んで行く。

「ほら」と言う様に、メトセラは顎を上げ、ついて行けと真琴たちの背を押した。


 白い塔の中央には、直径二十メートルくらいの池があった。


 目を凝らすと何か居るようだ。

 泳いでいる?

 魚だろうか?


 池は、透明度の高い水で満たされていたが、底が見えなかった。

 何やら無数に動いているモノが見える。

 何かと目を凝らす。

「何か居るわね」絢音が池を覗き込む。

「ダメだ!近づかない様に」

 コロニクスが、絢音の肩に手をかけ引き戻した。


 驚いた絢音が、コロニクスの顔を見つめる。

 コロニクスは、絢音から目をはずし、真琴と響介の顔を見た。


「ちょっと、いいかな……

 決して、この池に面白半分に近づいてはならない。

 この池の中は、非常に広い。

 この奥は……そうだな、海だ。

 海になっている。

 この世と同じくらいの大きさがある。

 そして、数えきれないほどの生き物が生息している。

 そうだな……化石、化石を知っているか?」


「知ってる」と真琴たちが頷く。


「その化石になった動物は、まだここで生きているんだ。

 危ないと言ったのは、大型の生物も居るということ。

 だから、覗き込んだ途端に襲われ、引きずり込まれたら、助けようがない」


 理解した真琴たちは、一斉にこの池から離れた。


 この海で生まれたモノが共存してしているらしい。


 ”リアル・ジュラシック・パーク”だ。 


 そう、そうだ。

 学校で、そう習った。

 絵本や図鑑や再現された映像を飽きるほど見せられたのを思い出す。


「君たちも、ここから生まれたんだ。

 今もこの海から生命の元が、この塔の上へと昇って行き、生まれる」


 真琴たちは、巨大な煙突の様な塔の内側の上を見つめる。


 その塔の上から何か降りてくるのが見えた。

 それは、鈍い光を放っている透明な球体で中に人が乗っているようだ。

 その球体は、池の上でゆっくりと静止しすると一部が開き、そこから通路が伸びてきた。


「君たちに会わせたい人が居る。さぁ、これに乗って」

 コロニクスは、真琴たちに手招きをして球体の中へと誘う。


 球体の中に入ると、入口が閉じられ球体は上昇していく。

 徐々に加速していく。

 上昇する重力は全く感じられない。


 煙突のような壁には、所々に穴が開いていて、何かが動きまわっているのがわかる。

「人だ」真琴が呟く。絵を描く真琴だけがわかる。


 やがて、球体は速度を緩め、静止し出口が開かれた。


 コロニクスが、真琴たちを先導し、黒い大理石が引き詰められた部屋に到達した。

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