第11話 白い塔を目指して(真琴とメトセラ)

 真琴は樹の王メトセラと並んで歩いていた。

 先には響介と絢音が歩いている。


 真琴は響介と絢音を見つめていた。

 こうしてみると、二人はデートしているように見えるし、仲のいい兄妹のようにも見える。

 お似合いのカップルだ。

 そう、お似合い。


 僕らは、小学校まで一緒だった。

 僕らは、気があっていた。

 いつも一緒。


 だけど、僕は響介と絢音の間には入れない。


 幼稚園の時の告白で、選ばれたのは響介。

 僕は、響介の次に好きだって言われた。

 残念だったけど、大好きな二人が笑顔なら、それでいいと思っていた。


「私は、邪魔かな?」

 メトセラが、真琴の顔を覗き込んでいる。

 そんなことは無いと、真琴は首を振った。


「爺さんから頼まれたし、私も気になっていたから、

 あの白い塔に向かうなら、ついて行かない訳がない。

 白い塔の横に銀色の塔が見えただろう。

 建設中だが、凄い速さで伸びている。

 白い塔を追い越すかもしれない。

 それを造っているのは、君たちの次の世代の生き物かもしれない」


「僕たちの?」

 真琴は、メトセラを見た。

 メトセラは、銀色の塔を見つめ話を続けた。

「あの銀の塔は、新しいモノが造っているらしい」

「新しいモノ?」

「まだ、わかっていない……だから、確かめたいのだ。

 生物なのか、無生物なのかもわかっていない。

 あの塔は、何の塔なのか?

 我々の対して危険なモノなら、対策を打たなければならない」

 と、メトセラは顎を軽く上げて目を細めてその塔を見た。


「君たちの塔も最初はそうだった。

 私たちには何が出来るか分からなかったんだ。

 いつの間にか、二足歩行し言葉や道具を使うモノが現れた。

 樹の王として焦ったね、なんとかせねばと……

 このままでは、我々が無くなってしまうと思ったから」


「何か手を打ったんですか?」

 メトセラを横目で、真琴を見降ろしながら言った。

 メトセラは、しゃべろうか躊躇していたが、内緒だという様に声をひそめた。


「食べ物を与えた。

 穀物だ。

 あっという間に、君たちは僕らのプレゼントに受け取った。

 プレゼントの反応は、凄かった。

 君たちは、面白いよ。

 ただ、食べるものを提供しただけなのに、

 それを持ち者持たない者を作り上げ、

 それを取り合い、戦争まで起こした。

 価値を作り上げ、取り合った。

 全く驚いたね。

 与えなければ良かったとも思った。

 狩猟時代の方が、得られた物を平等に分けて暮らしていたのに。

 食としては、貧しいが今より遥かに平等だったのに」

 真琴も人類の歴史を学んでいたので、大体のことは理解できた。

 そのような人間が存在し、利益をむさぼっていたことを。


「それが作戦?」

 と、真琴は、言いながら気づいてしまった。

 樹の王が考えたことを。


 穀物に依存させると言うのが、狙いだ。

 邪魔になったら、それを取り上げればいい。

 簡単だ。

 真琴は、怖い話だと感じ、ゆっくりろメトセラを見上げた。


「そうだ、今、君が考えていることに間違いない。

 仕方ないだろう、私は樹の王なのだから」

 メトセラは、遠くを見ながら話した。


「でも、僕たちのプレゼントはうまくいくこともあるんだ。

 例えば、ミツバチ。

 お互いを必要とする関係。

 ミツバチは花から蜜を貰い、花はミツバチに受粉を助けて貰う。

 最高だろ」メトセラは、嬉しそうに笑った。


「白い塔は、君たち人間の塔さ。

 君たちが塔を作り上げる。

 君たちは過去に数多くの失敗もしている。

 傍に散らばっている壊れている塔は、失敗した塔の残骸だ。

 良い塔を作ってくれ……もちろん、私たち植物にやさしい世界をな」

 メトセラが、微笑んで真琴の顔を見た。


 前を向くと、響介が絢音を抱いているように見えた。

「何してんだぁ!」

 真琴は、思わず二人に声をかけ、手を振った。

「何でもなーい」

 直ぐに絢音が答えるそして、こちらに走ってきた。

 響介も少し遅れてかけてきていた。

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