第40話 シュウ VS アオ

 遅めの昼食を挟んで子供の部の決勝戦が行われた。

 優勝はカナ。

 火を操れる上に歳も15で最年長なので妥当な結果だろう。

 ちなみにツチネは3位入賞で大健闘だった。


 30分の休憩を挟み、大人の部が開始となる。

 ここからは2組同時に別リングで進められる。

 俺が注目する初戦は、シュウ対アオ。


 アオは22歳だが、20代と思えぬハイテンションな

 という呼び方がまだまだ似合わない、お転婆娘である。


 サルのような身軽さであちこち飛び回り、高い塔の見張り台から、里に異常がないか見守る仕事をしている。

 それなりに格闘を嗜んでおり、そこそこ強いのだが元々その格闘を教えたのが俺とシュウ。

 すばしっこさを活かして、どこまで強くなったか見ものだ。


 開始の合図と共にアオが高く飛んだ。靴にバネがついており、まるで重力を無視したかのように天高く舞う。

 「おぉーーーー」と会場がどよめく。目立つのが大好きなアオのことだ。遠くて顔が見えないが、今頃ニマニマしているに違いない。


 だが、ここからどうする気だ?空中だと逆に逃げ場がないぞ。


 シュウは、下で待ち構えている。案の定アオが降りてきたところを狙って、回し蹴りをした。しかし、アオも読んでいたのか、蹴ってきた足を掴み、そのまま遠心力を利用して横に飛び、シュウと間合いを取った。


 そこからは、アオが攻めて攻めて攻めまくる。

 シュウは防戦一方に見えるが、受け流しているだけだろう。


 このままだと、アオの方が先に体力削られそうだ。

 そう思って見ていると、息が荒くなってきていたアオが、一旦離れた。


「お、態勢を整えるか?」


 猪突猛進タイプで、このまま攻め続けるかと思ったが、まだ引く理性は残っていたらしい。

 お互いに見合って、じわじわと横に歩く。

 どちらが先に動くか、みんなヒリヒリとしながら見ている。


 その時、隣の会場で「わぁーー!!」という歓声が上がった。

 決着がついたのかもしれない。


 その瞬間、シュウが動いた。


 ズババババ


 前蹴り、後ろ蹴り、回し蹴り。

 シュウの得意とする、蹴りの連続技だ。


 アオは両腕でなんとか防いでいるが、押されていることは明らかだ。

 ついに、強烈な一撃により、飛ばされてしまった。

 もう終わりか?


 だが、倒れていたアオは、シュウがかかと落としをする瞬間、ぐっと、力を入れてしゃがんだ。そして、そのままお腹めがけて頭突きをした。


「ぐっ!」


 シュウもまさか、頭突きしてくるとは思わなかったのだろう。

 寸ででみぞおちに当たるのは回避したようだが、結構なダメージだったらしい。


「やるなぁ、アオ」


 先生として鼻が高いぞ。

 そう感心したのも束の間。

 今の一撃で本気になったシュウがドロップキックで、アオをKOしたのだった。


 残念、そう簡単に下剋上とはいかないようだ。

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