第34話 狩りとティウンティウン

 日も替わって日曜日になってしまっていたこともあり、アミーこともう 惟秀これひでとしても、これ以上は村に滞在しているわけにもいかなくなった。


 そのため、この村の狩猟しゅりょうチームに山道さんどうまで送ってもらうことになった。


「なるほど、ここの村の人たちは狩りをしてるのか! それでリノリノがブーメランを持ってるんだ。危険生物が相手ってケガとか大丈夫なのかい?」


 ここにきて、アミーはようやくこの村の活動について知ることができたのである。彼らがやっていたのは、呑舞山どんまいさんの危険生物の駆除くじょ活動というヤツだったのだ。


「アミー。ここはな、他県たけんの環境保護団体に内緒ないしょで生物の間引まびきをやっておるのだ。私が全部をやっても良いのだが、ジビエブームに乗って、ちょっとした商売になりそうなのでな。ヒロシに手をしておるのはこういうワケがあるのだ」


 イクちゃんこと万魔まんま佞狗でいくからは、これまたややこしいこの村の背景はいけいが語られた。


「イクちゃん、それは分かったけど、ここには呑舞どんまいワニもいるだろ? それに呑舞どんまい大サソリだっているし。下手すると死人が出るんじゃないかな」


 先日に、アミーの車を穴だらけにした呑舞どんまい大サソリは、尻尾しっぽのぞく大きさが3メートルにもなる。


 呑舞どんまいワニにいたっては、全長が7メートルをえる上に、横断歩道おうだんほどうの白線の間から飛び出して人をおそうという、妖怪ようかいと呼んでもいいような怪物かいぶつだった。

 なお、環境保護団体はこの事実を認めず、呑舞どんまいワニは保護対象ほごたいしょうであるといまだに主張しゅちょうしていた。


「アミー、そこについては全員が生肉なまにく携帯けいたいしているのだ。それに医療要員いりょうよういんがついていくことが多い。万が一の場合については、私か沱稔だみのるさん(;TДT)がどうにかするのだ」


 イクちゃんはそう言うのだが、アミーとしては弓矢ゆみややブーメランで、あの生き物たちがどうにかなるとも思えないのだ。


「大丈夫よ、アミーさん。アレは呪術が元になってる生き物だから、こっちも呪術を使ってんの。これも普通の道具と違うのよ」


 聞けば16歳であるというリノリノは、アミーにそう言ってブーメランをかかげてみせてくれた。何かの文字がビッシリと書いてあるようだ。


 アミーは、そんな会話をしながら山越やまごえの準備を進めた。

 黒い烏帽子えぼしに白い狩衣かりぎぬを着て、下は細く白いはかま登山靴とざんぐつなのは今までと同じだ。今回は「ダンボールですよね、コレ」というプロテクターを上からつける羽目はめになった。


「イクちゃん、コレはどういうアレなんだろう? 見るからにあまった何かで作るコスプレって感じなんだけど……」


 アミーとしては、これを着たまま街の近くまで行くことに抵抗ていこうがあった。さもありなんというところである。


「アミー、細かいことで文句もんくを言うな。それとも何かのドリンクで行くか? ドリンクはもうイヤだというから、こちらは次善じぜんさくというヤツなのだ」


 イクちゃんが言うには、この砂色すないろのダンボールふうプロテクターは、ほとんどの攻撃に対して命を助けてくれる物ではあるらしい。


 アミーはもうちょっと抗議こうぎを続けようかと思ったのだが、それどころでは無い事がまたもや向こうからやって来た。


「イクちゃん、アレ、人じゃないよね。何かこう……デスパ○ットとリリ○ットをしたようなのが歩いてくるんだけど……」


 アミーとしては、たとえギリギリでもそういうしか無かった。これが商業作品でもなく人気も無いことを、今だけは感謝するべきかもしれない。


 こちらに歩いてくるソレは、身長120センチぐらいの人型だったが、頭巾ずきんをかぶった頭は、ペンギンとフクロウをしたような顔を持っていた。

 丸っこい体型たいけいをして、腕には羽毛うもうが生え、短い足も鳥のようになっている。

 さらに彼らのさえずりの様な声は、むねげた四角い箱から日本語に翻訳ほんやくされているように聞こえた。


「アミー、アレはな呈云ティウン呈云ティウンという種族の者なのだ。おぬしのご先祖の所為せいで、ああなってしまった者たちでもある。それから日本人であれば、せめて天狗てんぐとか表現するべきではないのか?」


 イクちゃんの指摘に対して、アミーとしてはそれもそうだなとは思った。

 彼らは飛ぶための翼も無いようだが、器用な手を持ち、カラスよりは頭の方も良さそうに見えた。





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