第18話 副業は宮司《ぐうじ》
「まだ分からん。だがアミーも、あの
マンマーTVの社長室で、ソファーにふんぞり返ったまま、イクちゃんこと
「
今でこそ、ここの社長である
「お主の家の土地だったであろうが。あんな場所に地雷を埋めるぐらいには、戦時中の日本陸軍はまともではなかった。うちの神社にまで、陸上標的用の六号爆弾を食らわせに来よったのだ」
イクちゃんはイクちゃんで、より昔にはどうやら大変であったらしい。やれやれという雰囲気が全身から出ていた。
「俺さ、マニアの友達が居るんだよ。そいつの話だと、行方不明事件になってるそうじゃないか。乗組員は全員が帰って来て、爆撃機と戦車の方は戻って来なかったって」
彼の認識では、この
「昔からああいう物を集めるのが趣味でな。ローマ時代の歩兵装備と攻城兵器も持っているのだ。だが、頼まれても戦争には介入出来んと断った。
かつてのイクちゃんは、当時の軍部と折り合いが悪かったようだ。
「そういうこと言うなよ。皆んなして、アレは間違ったことなんだって思ってんだ。
それよりさ、アミーの引っ越しの件は分かったから。俺からも、管理会社に連絡しておくよ。そうなるとアミーの奴は
だが自分の会社の社員が、割と大変そうな副業を始めることには興味が湧いたらしい。その点だけは、目の前に居る歴史的物品泥棒に聞いてみようとなったようだ。
「そこなのだがな、
イクちゃんは割と投げ槍に返した。彼が何も知らないということは、つまりはそういうことであろう、というのがイクちゃんの認識だったのだ。間違いでもないだろう。
「そこについては俺も知らんよ。そっちについてはイクちゃんからアミーに聞いてくれ。マンマーTVの仕事の方は、俺が調整でも何でもやるから」
ここの社長である
こうして本人不在のままに、アミーこと
「スコーンか……他にも作ってくれないかなぁ……俺に……」
昼休みのこと、マンマーTVの社屋内休憩室において、アミーは珍しく時間通りに昼食を取ることが出来ていた。
今日の献立もミートボール入りのスコーンで、デザートはチョコクリーム入りのスコーンである。
どちらも
自分は、美人の女子大生から相手にしてもらえる様な男ではない、とアミー自身がよく分かっていた。
だがアミーは、最近の自分を取り巻く不思議な出来事に、何か運命的な変化を引き起こす力があっても良いのでは、とも考えていたのである。
そして、今日の昼食のスコーンは中の具が右に寄っていた。
「これは良いことの予感がする。新しい冒険とかだといいな」
スコーンを食べきったアミーは、野菜ジュースとノンシュガーのミルクコーヒーを飲み干して、そう独り言を
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