鶏(けい)ちゃん、うみぁ~
木全伸治
鶏(けい)ちゃん、うみぁ~
鶏ちゃんは岐阜県が生んだ郷土料理である。
B級グルメのようにご当地名物を作ろうとして意図して試行錯誤されたもではなく、地元で自然発生的にお肉屋さんが鶏肉に味付けして売り出して人気を得て岐阜県の郷土料理になったものである。だから、絶対に守らなければならない厳格なレシピはなく、そのため袋詰めする精肉店により使う鶏肉の部位やカットの仕方が違い、若鳥の方が肉質が柔らかいので若鳥に拘ったり、味付けに使う味噌もお取り寄せしたお味噌を使ったり地元の郡上味噌で味付けしたりとそのお店ごとのこだわりで様々な味の鶏ちゃんが岐阜県内に存在します。
それぞれのお店で好きなお味噌や塩こうじを使ったり、 バジル、カレー味など、かなり千差万別です。唯一決まっていることと言えば、牛肉のように焼いてからタレをつけるのではなく、タレで味つけされた鶏肉をそのタレと絡めるようにして焼き、好みの量のキャベツなどの野菜と合わせていただくというところでしょうか。野菜もキャベツでなければいけないという決まりもありません。もやしや、玉ねぎでもいいですし、中津川の名産ちこりと一緒に食うというのもありです。野菜なしで、鶏肉だけを楽しむというのでもいいのです。そのように食べ方も自由で、土なべ風にしてもよく、トマトやチーズをトッピングしてちょいとタバスコをかけてイタリア料理風にいただくというのもありで、鶏ちゃんをパスタにからめるメニューもあり、かなり自由度が高い料理だと思います。他に、餃子や鶏ちゃんの唐揚げもありますし、まだ自分は食べたことないですけど鶏ちゃんラーメンもあります。
さて、自分、名古屋生まれの名古屋育ちで、名古屋を離れていたこともありますが、その先は東京でして、本来、岐阜の郷土料理である鶏ちゃんとは、縁もゆかりもなく、名古屋メシの方を語るのが筋かもしれません。ですが、少しでも、鶏ちゃんの知名度を上げたくて、ここに鶏ちゃんを紹介させていただきます。自分の地元の名古屋メシに愛着がないわけではありません。東京でゲームのライターとして働いていたとき、実家から『つけてみそかけてみそ』というみそ調味料を送ってもらい、住んでいたアパートの近所の安い総菜屋さんでチキンカツを買い、それに『つけてみそかけてみそ』をかけて味噌カツ風にしていただくのが好きでした。あと、名古屋で子供の頃から育った方にはわかると思うのですが、名古屋のソールフードのすがきやのラーメンも大好きです。ガキの頃財布の中身が気になり、チャーシュー増量のすがきやの肉入りラーメンにどれだけ憧れたことか。とにかく、地元名古屋メシにも愛着はありますが、個人的に少しでも鶏ちゃんのことを広めたいと思いまして、ここにご紹介させていただきました。
本来なら接点の全くない鶏ちゃんと、どうして自分が出会ったのかというと、東京でゲームライターとして働いていた際に、睡眠時間を削って頑張り過ぎたらしく、高血圧による脳卒中で倒れ、死にかけて何とか一命を取り留めたものの脳内出血による影響で左半身に軽い麻痺が残り、とても、東京で仕事を続けられる状態ではなくなり、東京のアパートを引き払い、現在、地元名古屋に戻ってきました。
東京で一旗揚げようとして、無様に失敗したというわけです。
で、左手が思うように動かせず、パソコンをブラインドタッチで使えてた状況には戻れずに、なんか人生色々と絶望し、さて右手だけでこれからどうやって行こうかと考えていたとき、ふと清流長良川沿いをゆったり走る岐阜県の長良川鉄道に興味を持ち、その長良川鉄道の鶏ちゃん合衆国の企画列車に乗せてもらう機会があり、そこで鶏ちゃんに出会い、初めていただきました。脳卒中の後遺症の左半身のリハビリ入院で、魚のホイル焼きが連続して出たりする、まずくはないけど口が飽きる病院食というものと半年ほど付き合い、なんか、これから先は、美味い物食ってから死にたいなという漠然とした願望を抱いて退院し、長良川鉄道の企画列車で鶏ちゃんに出会い、その味にほれ込みました。
その企画列車を企画した鶏ちゃん合衆国とは、鶏ちゃんの生産者や関係者の方々が集まった団体で、鶏ちゃんのレシピと同じく、特に厳格な入国審査はなく、ただ鶏ちゃんを通じて関係者が親睦を深め合う団体で、定期的に会合や企画列車のような催しを開き、そのお店ごとで異なる鶏ちゃんを持ち寄り食べ比べをしたりします。自分、その会合に名古屋から参加させていただいて、鶏ちゃんのことを色々と教えていただきました。 知れば知るほど鶏ちゃんは奥が深いです。滋賀に鶏ちゃんに似たとんちゃんというものがあり、その方々とも鶏ちゃん合衆国は交流を持ち、明宝の鶏ちゃんがB1グランプリに参加したときの苦労話など、鶏ちゃんが生まれた歴史などを聞かせていただいたこともあります。 飛騨市市長の都竹淳也氏も、この鶏ちゃん合衆国に参加されています。
鶏ちゃんは高級食材を使うような敷居の高い食べ物ではないですし、単純に焼いていただく調理の仕方とか、すごく純朴な岐阜の郷土料理だと思います。ですが、その気取らずに食える純朴さが鶏ちゃんの魅力の一つだと思います。最後に、鶏ちゃん、うみぁ~。ジュージューと焼ける鶏肉とタレの匂いがたまらん。本当に美味しいです。自分、鶏ちゃん大好きです。以上。
鶏(けい)ちゃん、うみぁ~ 木全伸治 @kimata6518
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