観覧車

大垣

観覧車

心の中にまで沈み込むように、雲は低く、厚く、垂れ込んでいた。

その中を黒いカラスが飛んでいる。

埠頭に停まったタンカー船は、死んだように動かない。

風はなく、波はない。

町の人々は言葉を慎み、少女さえ黙り込んでいる。


観覧車がある。

ハンバーガーショップの頭の上を、

水色の大きな、観覧車が回っている。

とてもゆっくりで、まるで遠い宇宙に流れる時間のように遅い。

なんの喜びも、なんの淋しさもなく。

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観覧車 大垣 @ogaki999

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