最強【元勇者】が反転アンチになりました。〜裏切られて死んだ勇者様は腐りきった世界を消し飛ばすことにします!

ななつき

序章 勇者が反転アンチになるまで

第0話 勇者は処刑されました

 剣と魔法の世界であるリンドルムでは魔族と人間の戦争が続いていた。


 だがある日魔族に魔王と呼ばれる強大な力を持つ存在が現れてしまう。


 人々はあっという間に窮地に立たされた。

 最早滅亡は時間の問題とすら思われていた最中──


 一人の人間が異世界より召喚されたのだ。


 男の名は《如月きさらぎ かえで》。

 黒髪の青年だった。


 彼は勇者として聖剣を手渡され、その力を存分に奮ったとされる。


 そして彼は《賢者》《大魔法使い》《武闘家》《聖女》と共に旅をしながら世界に巣食う魔族や魔物を次々と仕留めて封印して行ったのである。


 そして勇者は3年後、ついに魔王を倒す事に成功したのだ。


 これで世界は救われる。

 そう思った途端、王にとって勇者は邪魔者になった。


 なので王は帰ってきた勇者を捕まえ、監禁し、そしてあらぬ罪を着せて処刑することにしたのだ。


 ◇◇◇


「なぜ、なぜ俺が殺されなきゃ行けないっ!!応えろ!!?」


 祭壇の上に縛り上げられた勇者だった男は、目を血走らせて必死に叫んでいる。

 その様子を民が何百何千何万という目で見ていた。

 それを見た王は呆れたように口を開くと。


「貴様がわが姫、王女、そしてエルフ族の女王を誑かしたことは誰もが知る事だ。 貴様、よもや知らぬとは言わせぬぞ? わが愛する娘に泣きながら勇者に襲われた聞かされた時の我の心境を!!」


「は、はぁ?! 何の話だ!……第一俺は王女も王妃も、姫も誰一人として喋って……」


「この後に及んでまだ認めぬか! だがまぁいい。 貴様はさらに許されざる蛮行をいくつもしていたのだからな! 」


「蛮行……?俺はただ王様の命令に従って魔族を倒し……」


「貴様、勇者でありながら魔族を助けたな。 それだけでは無い、勇者として倒すべき敵を倒さずに封印という形にしたな? 貴様は我々を脅す気だったのだろう? "俺の言うことを聞かなければ魔族の封印を解く"とでものたまって、我々を脅すつもりだったのだろう!?」


「誤解だっ! アレは殺す必要が無かったから封印って形にしただけで……しかも向こう1000年は封印が解けないようにしてるから大丈夫だって!」


「貴様は勇者としての役割を全うしなかっただけに飽き足らず、王族の地位を脅かした。 そして魔族を倒せる強大な力を民達にも向けたな?」


「?!民になんて誓って──」


 王はにやりと笑う。


「出てきて良いぞ、娘達」


 王の言葉に、見守る民達の何人かが処刑祭壇の前に上がる。


「お前ら……は……」


「はい、私達は勇者様に無理やり迫られ、そして……う、うぅ……貞操を勇者様は……」


 がそう言った。


「私もです。 剣を向けられて、"俺の言葉に従わないとどうなるかわかっているな?"と脅され、夫の前で無理やり……」


 、そう言う。


「俺は有り金も家財道具も全て壊された! 妻が昔くれた大切な家財道具を……このクソ野郎に!!」


 がそう言って拳を握った。


「はぁっ!?……な、なぁ嘘だろ? 俺はお前らを助けたじゃねえ……か……あの時の言葉は嘘だったってのかよ!?」


「勇者よ。 貴様は守るべきはずの民達にすら剣を向け、欲望の限りを尽くしたと。 それは最早許されざる蛮行に他ならぬ。 では民達よ、この男をどうするべきだと思うか────叫びたまえ!!」


 それはもう、分かりきったことであった。


 民たちは歪んだ笑みを浮かべて、次々とこう叫んだ。


「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」


 やがて王が手を挙げ、その声が静まったあと。


「うむ、では勇者カエデ……元勇者よ。 貴様に処刑を行う。 だが我は寛大な男である。 何か一つ望みを叶えてやろう」


「なんと!王様、あなたというお方は素晴らしい!蛮行を成した愚者にも望み叶えさせるとは!さすがは偉大なる王!」


 隣にいた騎士がそう言って褒め称える。


「…………魔族の、」


「ほう、魔族の?」


「……魔族の里に手を出さないことを約束してくれ……。そして俺の亡骸はそこに埋めてくれ」


「ふん、二つも望みを言うとは。 まぁ良い、我は寛大な男、叶えてやろう。 では死ぬがよい」


 そうして勇者だった男は救ったはずの民と仲間に裏切られ、死んだ。



 その亡骸は望み通り、魔族の里に適当に葬られたという。



 ◇◇◇◇◇



 ────30年後のある日。








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


この小説は毎日は更新されません。

多分2日に1回とかかな?


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