彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました

湯島二雨

第1章…家

俺は何もかもすべてを失いました

 俺には長く付き合っている彼女がいた。

高校生の頃に出会って、それから7年、ずっと付き合っていた。


俺は安村やすむら涼馬りょうま。彼女は高井たかい雲母きらら


同じ部活になって、趣味が合って、意気投合して、すごく親近感が湧いて、運命のようなものを感じて、そこから一気に仲良くなり、交際を始めるのに時間はかからなかった。


彼女を心から愛していた。俺は彼女と結婚して一生幸せに暮らせると思っていた。



「ねぇ、好きよ。涼馬」


「俺も好きだ、雲母」



「愛してるわ、涼馬」


「俺も愛してる、雲母」


愛の言葉をストレートでぶつけてくれるところがたまらなく好きだった。俺も必ず全力の愛で応えた。



「ねぇ涼馬、似合ってるかしら?」


「ああ、すごく似合ってる」


いつも服装を気にしてるところも好きだった。



「涼馬はやっぱり胸が大きい方が好き?」


「は? なんでそんなことを聞く?」


「だって、あたし胸小さいから……」


「大きさなんて関係ない。俺はキミの胸が好きだ」


胸が小さいのを気にしてるところもたまらなく可愛くて好きだった。

セックスの時、雲母の小ぶりな胸をたくさん愛した。雲母のコンプレックスを消すために精一杯愛し続けた。



「涼馬、あたしだけを見てほしい……」


「もちろんだ。俺には雲母しか見えていない」


嫉妬深いところも好きだった。雲母を不安にさせないために何度もしつこいくらい愛の言葉をぶつけ続けた。



彼女の何もかもが好きだった。

彼女と一緒に過ごす時間が、たまらなく幸せだった。ケンカなんて一度もしなかったし、する気にもならなかった。俺たちすごく相性が良くて、ずっとうまくやっていけると思っていた。


俺の人生には常に雲母がそばにいてくれるって、これからずっと支え合って生きていくって、信じていたのに。




「あたしと別れてほしいの」



「―――は……!?!?!?」



雲母の誕生日が目前に控えていて、高いプレゼントも用意していて、雲母の喜ぶ顔が楽しみだなぁ、と思っていた矢先、雲母の口から告げられた突然の別れ。

俺はその瞬間、背筋が凍りついて割れるような絶望を覚えた。



「……い、今なんて……!?」


「何度も言わせないで。あたしと別れて」


残念ながら俺の聞き間違いということはなかった。



「な……なんで……?」


「好きな人ができたの」


「そっ……そんな、急に……」



7年も付き合ってきた。7年間ずっと、ほんのついさっきまで、雲母は俺とのお付き合いに不満を持つような素振りは一切見せなかった。雲母に愛想を尽かされるようなことをした覚えは一切ない。

なのに、なんで……?



「……雲母は……俺のことが好きなんじゃなかったのかよ……!?」


心は激情に任せて怒り狂っているはずなのに、消え入るような情けない声しか出すことができなかった。


「あんたのことは間違いなく好きわ。でももっと好きな人ができた、それだけ」


「ふざけんな……そんなの納得できるか……」


激昂した気持ちとは裏腹に、声がどんどん小さくなっていく。さらに情けないことに涙目になっていた。雲母はそんな俺を見て嘲笑うような声を出した。



「あんたはすごく優しかったし、あたしの望みをなんでも叶えてくれた。感謝はしてるわ。

でもあんた優しいだけでなんかつまんないのよねぇ。聞き分けが良すぎて彼氏っていうよりペットって感じでさ、ハッキリ言って飽きたのよ」


「ま……待ってくれ雲母! どうか考え直してくれ!

俺……雲母じゃなきゃダメなんだ! 直してほしいところがあったら絶対に直すから! だから……別れるなんて言わないでくれっ……!」


俺は雲母に懇願する。あまりにも必死すぎて過呼吸になってくる。



バチンッ!!!!!!


「―――っ……!!」



雲母に平手打ちされた。

鋭い熱が頬に走る。痛い。物理的な痛みより精神的な痛みが俺の心をナイフで抉った。



「ダッサ、マジでみっともない。あんた余裕なさすぎて全然男らしくない。なんか重くてめんどくさい。そういうところマジで無理。別れるっつってんだからおとなしく受け入れなさいよ」



自分でも余裕なさすぎ必死すぎで男らしくないのはわかっている。だがここまで取り乱すくらい、それだけ雲母のことが好きだったんだ。

雲母を愛した7年間、決して軽いものではない。雲母が好きになった男がどんな男かは知らないが、愛の強さ絆の深さでは絶対に負けない自信があるのに。

なのになんで別れるなんて言うんだ。なんで別れなきゃいけないんだ。



「ま、そういうわけだから。あんたの顔は二度と見たくないわ。

さようなら」


「ま、待ってくれ……!!」



夜、繁華街。

7年間付き合ってきた彼女は、俺の前から去っていった。



雲母を不安にさせたくなくて愛の言葉を数えきれないほどたくさん言ってきた。

だがそれが、彼女にとっては必死すぎて頼りない、男らしくないという印象を植えつけてしまったようだ。ちゃんと相手に言葉を伝えるのは大事なことだが、俺は言葉に頼りすぎた。


とっくの昔に彼女の愛が冷えていたことに、俺は気づかなかった。燃え上がっていたのは俺だけだった。


俺は泣いた。周りに人がたくさんいて、バカにするような目で見られても慟哭した。




―――




 「キミ、もう来なくていいから」


「えっ……それってどういう……」


「クビ」


「っ……!?」



雲母にフラれてからまだ1週間も経ってない。まだ失恋の傷が癒えてない。

俺は会社の上司にクビにされた。


一生懸命仕事を頑張っていたが、単純に実力が足りなくて解雇された。実は有能だったが隠していた、なんてことはなく普通に俺は無能だった。後輩の方がよっぽど優秀で俺は会社でもいらない子となった。

雲母にフラれたことと比べればまだ納得できるが、あまりにもタイミング最悪すぎる。なんで失恋直後なんだ。



さらにさらにまだ終わらない。収入が突然絶たれて家賃が払えなくなって住んでいたアパートも追い出された。

彼女にフラれ、仕事もクビにされ、家も失った。1ヶ月にも満たない期間でこれだけの不幸がバーゲンセールされた。


真面目に首吊りも考えたレベルの大惨事。首を吊る勇気もなくて生きてはいるが、俺はただ生きているだけの肉塊と化した。



 平日の午後。すべてを失った俺は公園のベンチで途方に暮れていた。

俺……どうすればいい……? なんで……? なんでこうなった……?


もう不幸すぎて笑うしかない。なんだこれ。俺なんか悪いことしたっけ? なんだこの仕打ち。


『重くてめんどくさい』


雲母に言われた言葉。この言葉が一番効いた。

俺……重いのかな……雲母がたくさん好きって言ってくれたから、必ず返すように心掛けただけなんだけど……好きとか愛してるとか言いすぎて雲母は重荷に感じてしまったのか? 愛の気持ちを言いすぎて逆に薄っぺらく感じられてしまったのだろうか。


どうすればよかったんだ? どうすればこうならずに済んだ? 必死に考えようとしても苦しくて、もうわけがわからねぇよ。

ちょっとでも気を抜いたら涙が溢れてくるくらい辛い。誰か俺を殺してくれ。




「こんにちは、お兄さん」



「…………」


「……あのー、聞いてます? こんにちは」


「……え、俺?」


「はい、あなたです」



俯いていた俺の近くに、すごく可愛い声が聞こえた。

まあ、平日の公園で1人でうずくまっている俺に話しかけてくるわけねぇよな……と思っていたら俺に話しかけていたようでかなり驚いた。


俺は顔を上げて、可愛い声の人を見る。



「―――っ……!?」



か……可愛い……メチャクチャ可愛い。

見たことない制服を着た、ありえないくらい可愛い女の子がそこにいた。


制服着てるってことは、女子高生……だよな?


ゆるふわなロングヘアーの金髪。少し緩やかな風が吹いて、美しく長い髪がふわりと揺れて、髪を耳にかける仕草がとても妖艶で、映画のワンシーンのように俺を釘付けにした。


そして、胸がでかい。 主張が激しくて男なら誰もが意識してしまうほどの豊満な胸。今にもボタンが弾けて飛びそうな……はちきれそうなボリューム感。


不幸を嘆いていた俺の、辛いことすべてを一時的に忘れさせるほどの破壊力。

俺はただ、目の前の美少女に見惚れることしかできなかった。




―――――――――



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