2章 9話『おしまい…??』

タクミは、無限のループに陥った。洞窟の薄暗い空間の中で、何度も同じ光景が繰り返される。彼は仲間たちの声を聞き、彼らの姿を追い求めるが、決して辿り着くことはできなかった。意識が混濁し、時間の感覚も失われていた。


ある日、タクミは自分がまたこの洞窟にいることに気付いた。足元には落ちた石や土が散らばり、息苦しい静寂が支配している。彼は何度目かの思考を繰り返しながら立ち上がり、心の中で叫んだ。「何度も同じことを繰り返している!こんなのはもういやだ!」


その瞬間、耳元で仲間の声が囁く。「タクミ、助けて…」それはエリカの声だった。タクミは激しく振り向き、そこにエリカの姿を見つけようとしたが、目の前には何もなかった。


「俺はお前を助けに行く!」タクミは再び叫び、足元を進み続けた。道はいつも同じだ。いつの間にか戻ってきたと思える場所。しかし、彼の心の中では、仲間を救うための決意が揺らがなかった。


進むにつれて、タクミは次第に意識を失いそうになった。仲間の声がこだまし、混乱が彼を襲う。視界がぼやけていく中で、再び仲間の姿が浮かび上がった。「タクミ、助けて…」今度はラズールの声だった。


彼は目の前に現れた影を追いかけて走り出す。だが、またもやその姿は消えてしまった。何度も何度も走り続けるうちに、タクミは疲れ果てて膝をついた。「どうして、どうしてこんなことになるんだ!」


無限に続くその声が、彼の心の中で強く響き渡る。タクミは目を閉じ、彼らの記憶を辿りながら、必死に思い出そうとした。彼が仲間たちと過ごした日々、笑い合った瞬間、励まし合った言葉。すべてが彼の心に刻まれていた。


だが、その思い出はすぐに暗闇に飲み込まれてしまう。彼は再び目を開け、洞窟の壁に向かって叫んだ。「お前たちはどこにいるんだ!助けてくれ、お願いだ!」


その叫びは洞窟の中で反響し、彼の声が消えた後もなお、虚しさだけが残った。タクミは何度も同じ場所を巡り、疲労困憊になりながら、心の中で仲間たちを思い続けた。


そして、再び仲間たちの声が聞こえてきた。今度はケンの声だ。「タクミ、ここだ!私たちはまだここにいるよ!」その声は希望のように聞こえ、タクミはもう一度立ち上がった。


「どこにいる!どこだ、みんな!」彼は声を張り上げて叫び、目の前に現れる影を必死で追いかけた。だが、どれだけ追いかけても影は消え去り、彼だけが孤独に残されていた。


何度目の無限ループなのか、もはや数えることもできない。ただ、タクミは仲間たちを探し続ける。その姿が、彼にとって唯一の救いのように思えた。


その時、ふと彼の目の前に現れたのは、赤い光を帯びた影だった。それは彼が何度も呼びかけていたエリカだった。「タクミ、こちらだよ!早く来て!」


タクミはその声に反応し、必死で駆け出した。エリカの元へたどり着くために、彼は全力を尽くして走り続ける。しかし、エリカの姿は遠く、次第にその光も薄れていく。


「待って!待ってくれ!」タクミは手を伸ばしたが、彼女は次第に小さくなり、消えてしまった。心の中で強い喪失感が広がり、彼は崩れ落ちた。「また…また一人になってしまった…」


その瞬間、タクミは絶望に満ちた声をあげた。彼の心はもはや耐えきれないほどの痛みに満ちていた。彼は仲間たちを失った自分自身を許せず、彼らが呼びかけている声をただ無視し続けた。


洞窟の中で、彼は再び孤独に包まれた。無限のループに囚われたまま、タクミは失った仲間たちのことを思い出し、彼らとの時間を心に刻み込むことだけが彼の救いだった。


しかし、彼は絶望を抱く。そこに現れたのは、死んだはずのろずーるだった。

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