1章 16話『マルチ商法』

タクミとラズールは、目の前に広がる光り輝く宝を見つめ、興奮と緊張が入り混じった感情を抱いていた。大広間の壁には、古代の文字が彫り込まれており、何かの試練を示唆しているようだった。タクミはそれを読むために、近づいていった。


「この文字、何て書いてあるんだろう?」

タクミが思わず呟くと、ラズールが彼の肩越しに覗き込んだ。壁に刻まれた文字は古代語で、読み解くのは容易ではなかった。しかし、タクミの心の中で何かが動き出し、その文字の意味を感じ取ろうとしていた。


「ボクに任せて、何か分かるかもしれない」

ラズールが自信満々に言った。その言葉を聞いたタクミは、彼の能力を信じ、少し期待を寄せた。


ラズールはじっくりと壁を見つめ、指で文字をなぞり始めた。「これは……『勇気ある者、試練に立ち向かえ』って意味かもしれない。試練を乗り越えた者だけが、宝を手に入れられるってことだ!」


タクミは心臓が高鳴るのを感じた。「じゃあ、まずは試練に挑む必要があるんだね。どんな試練が待ち受けているんだろう?」


その瞬間、部屋の中央にあった宝が突然光を放ち、周囲の空気が変わった。タクミとラズールは驚きのあまり目を見開いた。すると、光が収束して一つの影が現れた。影は徐々に人の形を取り、やがて一人の武士の姿が浮かび上がった。


「お前たちが、試練に挑む者か。」

武士は低い声で言った。その声は重厚で、タクミの心を震わせた。


「私の名はセリュス。お前たちには三つの試練を与えよう。それを乗り越えた者にのみ、宝を授けよう。」

セリュスの言葉に、タクミは身を引き締めた。


「三つの試練……どんな試練なんですか?」

タクミが尋ねると、セリュスは無表情で続けた。「一つ目は、勇気の試練。目の前の暗闇の中で、自らの恐れに立ち向かわねばならない。」


ラズールは目を輝かせて言った。「それなら、ボクたちならできる!恐れなんてない!」


「いいや、恐れは誰にでもある。大事なのは、その恐れにどう立ち向かうかだ。」

セリュスの声は冷静だった。彼の言葉には重みがあり、タクミは彼の言葉を心に刻んだ。


「試練はすぐに始まる。準備はいいか?」

セリュスが問いかけると、タクミとラズールは頷いた。


「はい、準備できてます!」

二人の声が響くと、セリュスは目を閉じ、何かを唱え始めた。すると、部屋の空間が歪み、闇が広がっていく。


「今からお前たちは、暗闇の中で自らの恐れと向き合わなければならない。準備を整えよ。」

セリュスの声が聞こえる中、タクミとラズールは深呼吸をした。


闇の中に入ると、タクミは冷たい汗が背中を流れるのを感じた。周囲は真っ暗で、何も見えない。自分の足元すら確認できない感覚が、不安を呼び起こす。心の奥底で、未知の恐怖が渦巻いていた。


「タクミ、大丈夫だよ!」

ラズールの声が聞こえてきた。それを聞いたタクミは少し安心した。


「ありがとう、ラズール。でも、ボクは……」

恐れを抱えていた自分を隠しながら、タクミは言葉を続けた。「ボクは、暗闇に怯えちゃいけないんだ!」


その瞬間、タクミの心の中に浮かんだ恐怖のイメージが具体化した。彼の頭の中に、過去の失敗や不安が次々と浮かんできた。小さい頃の自分、仲間を守れなかった瞬間、孤独感……それらが彼を縛り付けるように感じた。


「ダメだ、これに負けちゃいけない!」

タクミは自分に言い聞かせ、心を奮い立たせた。ラズールの声が、彼の背中を押してくれる。彼はゆっくりと深呼吸をし、暗闇の中で進み始めた。


「何があっても、前に進む!」

そう思った瞬間、彼の視界が少し明るくなった。目の前には、青白い光が見えてきた。タクミはその光に向かって歩き出した。


「ラズール、行こう!」

タクミは大声で呼びかけ、ラズールを引き寄せた。彼はラズールの存在を感じながら、一歩ずつ進んでいく。


「うん、ボクも行く!」

ラズールが後に続く。その瞬間、暗闇が少しずつ薄れていくのを感じた。


しかし、突然、目の前に黒い影が現れた。それは巨大な影で、タクミの足元をすくおうと迫ってきた。タクミは驚き、後ずさりした。


「タクミ、気をつけて!」

ラズールの叫びが耳に響く。タクミは必死に足を動かし、逃げようとしたが、影はますます迫ってきた。


「ボクは、恐れに屈しない!」

タクミは心の中で叫び、影に立ち向かう決意を固めた。「何があっても、進むんだ!」


影が近づくにつれ、タクミの心の中に湧き上がる恐怖を感じる。しかし、その恐怖を乗り越えようとする意志が強くなり、タクミは影に向かって進んでいった。


「タクミ、危ない!」

ラズールの声が聞こえた。タクミは影に向かって進むうちに、自分の恐れが力に変わっていくのを感じた。


「お前は、俺には勝てない!」

タクミは叫び、影に向かって手を伸ばした。その瞬間、影は一瞬止まり、タクミの前で揺れた。


「勇気を持て!お前の心の強さが、影を消し去る!」

タクミは自分自身に言い聞かせ、全力で影を突き抜けた。


その瞬間、黒い影は音を立てて崩れ去り、タクミの周りには明るい光が戻ってきた。暗闇が消え、タクミは再び光の中に立っていた。


「やった……!」

タクミは歓喜の声を上げた。ラズールも笑顔を見せ、彼の喜びを共感しているようだった。


「すごい、タクミ!恐れを乗り越えたね!」

ラズールが声をかけ、二人は再会を喜び合った。


その瞬間、光の中に再びセリュスが現れた。彼はタクミの姿を見て、頷いた。「お前は勇気の試練を乗り越えた。次は知恵の試練だ。」


タクミとラズールは、その言葉に期待を寄せた。


「知恵の試練……どんな試練が待っているんだろう?」

タクミは不安と期待の入り混じった感情を抱えていた。


「それは、選択の試練だ。与えられた情報をもとに、正しい選択をしなければならない。」

セリュスは説明を続けた。「ここから先に進むには、お前たちの知恵が試される。」


タクミは目を輝かせて言った。「知恵の試練、楽しみだな!」


「本当に?ボクはちょっと心配だよ……」

ラズールは少し不安そうに言った。


「大丈夫、二人で協力しよう!」

タクミはラズールの手を取り、共に進む決意を固めた。


セリュスは手を挙げ、周囲の景色が変わるとともに、目の前に一枚の巨大なスクリーンが現れた。スクリーンには、様々な選択肢が示されていた。


「ここで、お前たちは正しい選択をする必要がある。それを誤れば、宝は手に入らない。」

セリュスが告げると、スクリーンの中で一つの質問が浮かび上がった。


「真実を知るには、どの道を選ぶべきか?」

いくつかの選択肢が表示された。


左の道:直感を信じる。

中央の道:他者の意見を聞く。

右の道:過去の経験を元に判断する。

タクミはしばらく考え込み、選択肢をじっくりと眺めた。直感や他者の意見、そして過去の経験、どれも重要だと思った。しかし、どの選択肢が正しいのか、答えが見つからない。


「どう思う、ラズール?」

タクミはラズールに尋ねた。


「うーん……ボクは過去の経験を元に判断するのがいいと思う。前に同じような状況で、経験が役立ったことがあったから。」

ラズールの言葉に、タクミは頷いた。


「それなら、右の道を選ぼうか。」

タクミは自信を持って言った。


二人は右の道を選び、スクリーンにその選択を告げると、セリュスが頷いた。「選択は正しかった。次の試練へ進むがよい。」


再び、光に包まれた二人は、次の試練に向かう準備を整えた。


「最後の試練は、心の試練だ。お前たちの絆が試される。」

セリュスの言葉が響き、周囲の風景が変わった。


その瞬間、タクミとラズールは目の前に、巨大な岩山が現れた。岩山は険しく、登ることが困難そうだった。


「この山を登らなければならないのか……」

タクミが呟くと、ラズールは前を見つめて言った。「でも、一人では無理だよ。協力しよう!」


タクミはその言葉に力をもらい、二人で手を取り合いながら岩山を登り始めた。しかし、すぐに難所が現れた。岩が滑りやすく、足を踏み外しそうになる。


「気をつけて、タクミ!」

ラズールが叫ぶと、タクミは何とか持ちこたえた。彼はラズールの手を強く握り、二人は互いに支え合って進んでいく。


「絶対に登るぞ!一緒に!」

タクミは心を込めて言い、ラズールも頷いた。


しかし、困難な場所が続き、タクミは疲れが募ってきた。心の中で弱気な思いが浮かんだ。


「もう無理かもしれない……」

タクミは心の中でつぶやいた。その瞬間、ラズールが力強く言った。「タクミ、絶対に諦めないで!君が頑張ってるから、ボクも頑張るよ!」


その言葉を聞いて、タクミは再び心を奮い立たせた。彼はラズールの存在を感じ、二人の絆を信じて進んでいく。


「ありがとう、ラズール!一緒にいれば、どんな試練でも乗り越えられる!」

タクミは叫び、二人は力を合わせて山を登り続けた。


やがて、頂上が近づくにつれて、二人は少しずつ希望を見出していった。ついに、岩山の頂上に到達した瞬間、周囲が明るく輝き、まるで新たな世界に立ったような感覚に包まれた。


「やった……やったね、タクミ!」

ラズールの笑顔が輝いている。


「これが心の試練だったんだね。絆を信じて、共に乗り越えられた!」

タクミも笑顔を見せ、二人は喜び合った。


その時、再びセリュスが現れた。「お前たちは心の試練を乗り越えた。これで三つの試練を無事にクリアしたことになる。」


タクミとラズールはお互いを見つめ合い、喜びを分かち合った。これまでの道のりが、二人を強く結びつけていることを実感した。


「さあ、宝を手に入れよ。」

セリュスの声が響き、目の前には宝箱が現れた。


タクミは少し緊張しながら、宝箱に近づいて手を伸ばした。開くと、眩い光が溢れ出てきた。中には美しい宝石が散りばめられ、まるで宇宙の星々が詰まっているようだった。


「すごい……!」

タクミは声を上げ、ラズールも目を輝かせた。


「この宝は、お前たちが試練を通じて得たものだ。真の宝は、絆と勇気、知恵にある。」

セリュスが言うと、タクミとラズールは互いに見つめ合い、頷いた。


「これが私たちの力なんだね。」

タクミが微笑むと、ラズールも笑顔を返した。


「これからも、共に冒険を続けよう!」

タクミの言葉に、ラズールは力強く頷いた。


二人は宝を持ち帰り、新たな冒険へと踏み出す決意を固めた。その背中には、これまでの試練を乗り越えた自信と絆が輝いていた。


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