暴露配信!2
とりあえず力についての説明から始めないと話にならんな。
説明、説明ね。感覚で理解してるところあるから難しいかもしれんがやるだけやってみますか。
「まず力についてだが。これも呼び方はなんでもいいんだ。場所や所属している団体によって呼び名が全然違うからな。妖術、霊能力、超能力、魔術……好きなように呼べ。お前が力に目覚めたときに一番しっくり来たものが多分正解だ」
:んな適当な
:そんなんでええんか?
:じゃあ魔法で!
「体系的な物を学ぶならそれぞれちゃんとした名前があるんだけどな。お前らが今から力に目覚めるとしたら初代、1代目の能力者になるわけ。その力の名前なんてお前ら次第なんだよ」
体系的に近い分野はあると思うけどな。
「この力ってのは自己の世界を外界に押し広げる能力……あー、なんで言えばいいか。究極的な自己実現能力?要するに自分ルールを世界に押し付ける能力なんだわ」
:どういうこと?
:分かるようなわからんような
:自分が思ったように世界を変えられる能力ってこと!?
おっ察しがいい。流石にファンタジーに慣れ親しんでる民族なだけはある。飲み込みが早いのはいいことだ。
「大体そんな感じ。りんごが欲しいと思えばそこにりんごが出てくるし、空を飛びたいと思えば空を飛べる。それが力だ」
:なんだそれ最強じゃん
:なんでもできるやんけ!!!
:そらそんな力あれば無敵だわ
これだけ聞くとまるで願いをなんでも叶えられる万能の力に思えるが、もちろんそうじゃない。
そこまで便利な物じゃないからな。
「制限は大いにある。力が弱ければ大したことはできない。せいぜい足が少し早くなるとか1センチメートル宙に浮かぶとかそのレベルだ。何か大規模なことをやろうとすれば代償を払って出力をあげる必要があるし、他人に直接干渉するには相当に強力な出力が必要になる。力同士がぶつかり合えばより大きな方が当たり前に勝つから自分より上の力を持つ者には1人では何かしらの工夫がないと基本的に勝てない。言えばキリはないが……ま、欠点だらけだな」
:なんかしょぼくね
:よわそう
:でも天童はすげーバトルしたり霊視したりしてるじゃん
:力はレベルアップしたりしないの?
俺は特別に強いからしゃーないね。
「力に対する理解を深めたり、使い込めば力はどんどん強くなっていくぞ。だから代々祓屋をやってるようなところは力に対するノウハウがたくさんあって強いわけだ。能力の方向性は遺伝もするからな」
:じゃあ俺たち出遅れ組はカスみたいな力しか使えないじゃん
:なんか萎えるわ
:これってもしかして詐欺ですか?
:まるでサービス開始から数年経ったmmoを今更遊ぶみたいだぁ……(絶望)
そりゃそうよ。何百年何千年と力の修練を重ねている一族とか宗派に敵うわけないじゃん。
俺がいなかったらの話だけどな。
「でも俺が直接力を目覚めさせてやったら最初からそれなりに強い状態にしてやれるぞ」
:もしかして・神
:天童様〜!
:一生ついていきます
:なんかカルトみたいで怖い
お得意の手のひら返ししやがって。大体こんな怪しい提案に乗ってくるとかマジで考えなししかいないんか?
「ただし条件がある。力の悪用はするな。自分で悪いことだと自覚してる行為は当然のこと、社会的に悪いとされてることに力を使うのもダメだ。力を持たない一般人に力を振るうのは論外」
:当たり前だよなぁ?
:やだなぁそんなことしませんよ
:いいから早くくれよ
本当にわかってんのかね。どっちでもいいけど。
どうせこいつらが分かってようが分かってまいが、俺が力を目覚めさせるんだ。俺の意向に逆らうことは許さん。
「それから力を持つことによってどこかの組織に狙われる可能性もあるからな。大抵バケモンが見えるようになるからそういう危険に関わる可能性も増える。力を持つってのはいいことばかりじゃないし、リスクも大きい。まずこれを理解しろ」
:ちょっと怖くなってきた
:組織に狙われるのは怖いわ
:組織ってなんだよ
:それでも俺は力が欲しい!
:物好きもいます
:リスクあるならいらん
:平穏に生きたいんでそれはちょっと……
流石にビビってるやつの方が多いな。ここで大半がビビらない世の中、普通に怖いから良かったわ。まともな神経してる奴の方が多数派で俺は嬉しいよ。
さて。残ったまともな神経してない方な。
「これだけ聞いてもまだ力を欲しがる奴らはただの馬鹿なのか、それとも大物か」
:大物です
:魔法!魔法!魔法!
:危ない人もいます
:こいつらこわ
多少はいる方がこちらとしても助かるけどな。キャラが濃いのも……いいか、別に。じゃあ始めるとするか。
「心の底から力を望め。そして、俺の声を聞け。それだけでいい。それだけでお前の力を引き出してやる」
もっとも大切なのは望むことだ。力に羨望し、力に焦がれ、力を求めろ。渇いて渇いて仕方がないその渇望がもっとも必要だ。
世界に自分を押し付けるには、そういう強烈なエゴが必要なんだよ。
「さあ。求めているなら聞こえるはずだ。この声が。この言葉が。この祈りが。この──」
悲鳴が。聞こえるだろう?
「■■■、■■■■■■■■」
:何も聞こえんが
:めちゃくちゃ詐欺っぽくて笑う
:これがカルトですか
:この配信なんか怖いよ〜
ああ、届いている。縁の繋がりを感じるぞ。
魔法に憧れて、どうしようもないほど焦がれたお前の姿が見える。
霊と会いたくて、もう一度会いたくて止められなかったお前の姿が見える。
お前の、お前の、お前の、お前の、お前の、お前の、お前の、おまえの、おまえの、おまえの、おまえの、おまえの。
姿が見える。
見ている。俺を見ている。俺が、見ている。
「ああ──繋がった。
見ているからな?
「望んだ力の使い方は、お前自身が一番理解しているはずだ。好きに使うといい。ただ非道を働くな。俺が常に見ていると思えよ」
一人一人に語りかける。
力を得て。目が開いて。分かっただろう?
俺という存在の、出鱈目さが。
「俺から逃れられると思うなよ。善行を成しなさい」
それが俺から力を与えられたもののルールだ。別にいいことしなくてもいいけど悪いことはすんなよ。
:雰囲気こわ
:力求めなくてよかった〜
:明らかにヤバそう
「じゃあやりたいこと終わったし寝るわ。配信終了!」
:お前さぁ
:こんな短時間で終わるから収益化がね?
:アフタートークとか絶対やらなさそう
うるせぇ!終わり!
配信を閉じて寝転がる。思ったより力を求めたやつが多かったな。特に気になるのは2人……
まあいいか。寝る。次の配信についても考えねーとな。
……まったく。力なんてなくていいのに。馬鹿どもが……
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