天童、襲来
短めです
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「はぁ〜……」
【コラボの件について話し合いましょう】
【いや勝手に決めたのは申し訳ないけど大丈夫だって!盛り上がるって絶対!】
【トラウマの方も治せるからやろうよ〜〜〜コラボやろうよ〜〜〜〜〜】
「なんでこんなことに……」
とんでもない後輩から連投で届くDMに辟易する。
いや勝手にめちゃくちゃなコラボ決めるなよ……そして事務所も許可するんじゃねぇよ……
リビングのソファーの上で寝転ぶ。あーもうやだやだ。オカルトには関わりたくないんだって。
【いや復帰はしたいけどトラウマが邪魔してるだけでしょうに】
「当たり前に会話してくるんじゃねー!」
怖いわ!感度どうなってんだよ!どこまで見えるんだこいつ!?
【その気になれば星の裏側の砂粒の気持ちまでバッチリ見えまっせ】
砂粒の気持ちってなんだよ……あまりにも化け物すぎる……本当かどうかはしらないが、少なくともかなり離れた範囲からの千里眼や読心くらいは当たり前にこなすあたり並の術者じゃない。
こりゃ天童院のトップって話もあながち嘘じゃないかもな……あー怖い怖い。絶対返信もコラボもやらねぇ。
【返信してくれないのが悲しいので今家の前まで来てます】
「……はっ?」
えっ嘘でしょ?怖い怖い怖いまじで?
と思った瞬間にインターホンが鳴り響く。
「DM無視しないでくれよォ蘇我山せんぱ〜い」
「ひっ(脈拍停止)」
気を失いそうになるが、グッと我慢する。こいつ好き勝手してんじゃねぇぞ!
「インターホン鳴らしたんならわざわざ神通力で耳元に声飛ばしてくるんじゃねぇよ!!!」
「いやどうせ出てくれないでしょ?だからこうやってお話しするしかなくてぇ……」
「わかった!!!わかったよああもう!!!そこらへんのファミレス行くぞ!!!」
「やった〜うれし〜」
こいつどこまでもめちゃくちゃやりやがって……!一回先輩として説教してやらぁ!
気合いと怒りと反転したストレスによって一気に着替えを済ませ玄関の前まで行く。あんまり調子乗ってるんじゃねぇ!
むしゃくしゃする気持ちをそのまま乗せてドアを開くと。
「やっほー蘇我山先輩。すまんねこんな強引なやり方しちゃって。でもこうでもしないと先輩このコラボ受けてくれなくてさぁ」
力そのものが、顕現していた。
溢れんばかりの霊力。恐ろしいほどの速さで体内を循環するオドの流れ。いっそ笑えるほど蓄えられたチャクラの渦。
古今東西ありとあらゆる力が、エネルギーが、廻っている何かがそこにいた。
「おっと。そこまで見えるのか、すごい目だ。申し訳ない、隠すわ」
ふっ、と。その気配の全てが消える。
今、自分が尻餅をついていることに気がついた。汗がどっと吹き出す。
なんだ、これは?
「これでも人間のつもりだよ。あんま怖がらないでくれ」
はっとする。意識がはっきりしてくると、申し訳なさそうに眉を顰めて控えめに笑う男が目の前にいた。
その容姿は──容姿は……
「お前Vの立ち絵そのままじゃねぇか!リスクヘッジどうなってんだ!!!」
「おっいいツッコミ。いやこれしか思い浮かばなかったんだわ!」
一転してケラケラ笑う優男の姿に毒気を抜かれる。
はぁ〜。とんでもないことになっちまった気がする。
「もういいや……。ファミレス行こうぜ。先輩として奢ってやるよ」
「マジで!ありがたすぎる……!崇め奉っていい?」
「やめんかい」
「それで。コラボ配信についてだが」
「はぁ〜ハンバーグうめぇな……マジですごいよなこの食い物……作ったやつは俺と同じくらい天才だ……」
「話聞かんかいコラ」
目の前でもりもりハンバーグを食う馬鹿を見つめる。
やっぱどこからどう見ても立ち絵そのまんまだよな……無駄にイケメンなのもムカつくし。なんなんだこいつは。
「聞いてる聞いてる。コラボの内容に関してでしょ?内容は考えてるからこれを詰めていこうぜ」
「いやまず受けるかどうかについてだな……」
「先輩は受けるよ」
ハンバーグを食う手を止めて、じっと見つめてくる。
真剣な表情で、当たり前を語るように。
「本当はトラウマを克服したいって心の底から願ってるから。その可能性が少しでもあるなら先輩は断らないし断れねぇだろ」
「……そこまで分かってるなら、こんなめちゃくちゃな方法でアポ取ってくるんじゃないよ」
「これが一番早いし一番良い方法だったんだよ。許してくれ」
軽い言葉とは裏腹に、割と本当に申し訳なさそうな顔をしている。……よくわかんないな、こいつ。
「まずトラウマについて確認させて欲しい。一応知ってはいるが、先輩の口から聞いておきたい」
「勝手にホイホイ他人の過去を見るな。……はぁ」
しょうがない、か。解決する可能性が少しでもあるというなら、頼るしかない。
Vtuberは楽しいが……霊能者としての仕事も、続けたいから。
「あれは5年前のことだ」
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