グリムリーパー

ユウ

グリムリーパーⅠ

始まりの章

†プロローグ†



 母の葬儀の日はとても“その日”に相応ふさわしい天候だった。



 雷が遠くに聞こえる土砂降りの雨。



 雷はまるで神の怒りからの叱咤のように。



 そして激しい雨はまるで罪を洗い流すかのように。



 朝からずっと降り続けていた。



 そんな天候も手伝って、生前から余り人と交流のなかった母の葬儀は、弔問ちょうもん客の少ない寂しいものだった。



 その数少ない弔問客の中に彼はいた。



 葬儀会場の隅にひっそりとたたずむ彼は、焼香もせずずっとそこに立っていた。



 人の目を惹くには充分な容姿をしているのに、彼は余り目立たない。



 その場に溶け込み、人に紛れるのが上手いのは、天性のもの――なのだと思う。




 黒いスーツを身に纏う“Grim Reaper死神”は、あたしを見据えて甘くささやく。



「時が――きた」

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