第6話 おかえり

父・天草智(46)は、会社で大阪への転勤を命じられる。それは、智にとって大きな出世のチャンスだった。喜んでまさみちに話すが、まさみちは東京を離れる気持ちはなかった。智はまさみちと一緒に大阪で暮らすことにした。

 

さえ子の部屋でさえ子の絵を見つめているたけし。りなはたけしを呼ぶがたけしは絵で夢中だった。りなはさえ子の部屋に入り

「たけし、勉強の時間ですよ……」りなはたけしの耳のとでささやいた。たけしは鳥肌が立ち、驚いて振り向いた。

「うわゎゎ……!? なんだ、りなか……」

「さえ子さんの絵を見てたの?」

「うん、なんが見惚れちゃって……」

「そう? 勉強しに部屋へ行くわよ」

「……」

「…はぁ、おい、そこのこわっぱ勉強するぞ」

「こ、こわっぱって……! 誰がだ!」

たけしはりなの命令に逆らえなくなっていた。たけしは自分の部屋へ戻り、りなと勉強をした。夏休みが入り勉強の日々のりなとたけしだった。

 

夏休みの中。智とまさみちは学校で転入手続きをした。車で帰る二人。智は気分がよくこれから新しい生活を期待をしていたが、まさみちは複雑な気持ちだった。そこへなおこから電話が来るが、智の前ではなおこの電話に出るのはできなかった。

 

デートを期待してまさみちに電話をしたなおこだったが、電話に出ないまさみちになおこは「今度どこかに遊びに行かない?」とラインを送った。

 

図書館の帰りにりなはコンビニでバーカーのフードを被ったるみを見かける。雑誌を読んでいたるみはりなを呼び止めた。

 

りなとるみはファミレスに入ったが黙ったままだった。

「あの、何か私にご用でも……?」

「……」

りなは鞄から教科書を出し勉強を始める。

「ちょっと! 無視しないでよ!」

無視されていると感じたるみはりなの教科書を奪う。

「無視したのはそっちでしょ?」

「……! ……私、ぼっちなの私と遊んで……」

「なんで私が? ぼっちが嫌ならカラオケでも行けば?」

「一人でカラオケはもう飽きた」

「だったら勉強でもしたら?」

「ふん! 成績トップのこの私が勉強など!」

「そう、だったら一人でどうにか遊んでください。私の邪魔をしないで……」

りなはるみから教科書を取り返し勉強を続けた。それから数分後、るみはドリンクを多く飲みるみのテーブルの前にはコップが多くあった。るみはちらっとりなのノートを見て間違いを指摘する。

「そこ、間違ってるわよ」

イラっときたりなは「そんなに勉強に口出ししたいのなら自分も勉強をしたら?」

「帰る!」

早橋で出口に向かうるみは二人連れのチンピラとぶつかる。

「いったた…ちょっと! 気をつけてよね!」

「あん? そっちが気ぃつけろや……あ! ねぇ、君、もしかしてモデルのるみちゃん?」

りなはるみの手を握り、ファミレスから逃げ出す。

「なんで……なんで助けたの?」

「なぜって……なんでだろう?」

「理由が無いのに私を助けたの? 変なやつ」

「帰ろ」

「え?」

「今日も家に帰らないつもりでしょ?」

りなはるみを家に連れて行ったが、その途中、リヤカーを引っ張っている健太郎を見つける。

 

りなはるみと健太郎を連れ帰り家に入れた。

「……元気そうで何よりだ……」

「うん……お父さんも……」

空気も読まずに二人の会話に入るるみ。

「ねぇ、二人は何でそんなに静かなの?」

「お父さん。私の貯金を盗んだの」

「え!? 本当に?」

健太郎、財布から2万円を渡し、りなに謝る。

「あの時はごめん‥‥‥りながどれだけ時間をかけてお金を貯めたのか‥‥‥知らなかった‥‥‥」

「……」

「ほら! お父さんも謝っているし機嫌直して」

「空気読んでよ!」

「はぁ? 空気を読めてないのはどっち? お父さんは謝ってるというのに!」

「……そうだね。空気を読むなんてくだらないことね‥‥‥」

りなはまじまじと健太郎の顔を見た。

「お父さん。帰って来て」

「いいのか? こんなだめな父親でも?」

「お金ならまた貯めればいいよ、もう二度とやらないで」

「あぁ‥‥‥ありがとう…‥‥」

「るみ、ありがとう。おかげで父と仲直りできた」

りなと健太郎は仲直りをした。

 

夕方、智とまさみちは家で引越しの準備をして、箱だらけの部屋で横になった。携帯から着信が来て、まさみちはなおこのラインを読んでそのまま携帯を閉じた。なおこが送ったメッセージに “既読”マークがつくとなおこはまさみちに電話をした。

「……もしもし」

「どうした? ラインに連絡入れたけど全然返信もこないし」

「あ、あのさ……実は……なんでもない……ごめん返信できなくて……」

「いや、私こそごめんね、なんか忙しくて返信できなくなったんだよね……?」

「……なおこ‥‥‥俺たち別れよう……」

 

夜、帰宅した大輔にゆりはたけしの成績が上がったことを自慢げに話した。話を聞いて大輔は困惑した。

「どうしてそんな……」

その頃、たけしはさえ子の部屋で絵を見つめていた。

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