家庭教師りな

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第1話 家庭教師りな

「待てぇー!」

昼下がりの商店街で怒りに燃えた 宮本さえ子(18)が女性家庭教師と共に弟の宮本たけし(14)を追いかけていく。


付近の通りで佐藤りな(14)は父佐藤健太郎(40)と画材店入る。


一方、とある銀行に押し入った強盗は警察に追われ、画材店へ駆け込んだ。

「きゃっー」

強盗は片手にナイフを握り、りなを人質に取った。

「こっちへ来るな! でないとこいつの命はねぇぞ!」

強盗は追ってきた警察の前でりなにナイフを突きづける。りなは大人しく強盗の言うことを聞いた。


振り返り振り返り必死で走るたけしは人混みをすり抜け画材店へ駆け込むが床の画材につまずき、空中をひとっ飛びして強盗の背中を直撃した。強盗とりなは棚にぶつかり、上にある石膏像が落ちて、強盗とりなの頭にぶつかり気絶する。たけしはりなに「おい! 大丈夫か!?」と声をかけるが、もう一つ 石膏像が棚から落ちてたけしの頭にぶつかり、気絶する。


たけしとりなは頭にギブスを巻いて病院で目覚めた。たけしを心配するさえ子。

「たけし、大丈夫?」

「いってて……あれ? 家庭教師は?」

「途中でリタイアしちゃったよ」

りなを心配する健太郎。

「りな、大丈夫かい?」

「うん、大丈夫。早く家に帰ろ」

「え? もうすぐ先生がくるのにいいのか?」

「うん、早く家で勉強しなくちゃ……」

さえ子、りなと健太郎を呼び止める。

「あの! 刑事さんから事情聴取があるって言いました」

「あ、そうなんですか? りな、もうちょっと待とうよ」

「……」

「娘さんお勉強好きなんですか?」

「はい、いつも勉強しかしてなくて娘は勉強の虫なんです。ははは」

「ちっ、勉強がなんだってんだよ」

たけしは苦々しく言った。

「お父さん。事情聴取はあの二人に任せて先に帰ろ」

りな、出口に向かい歩く。

「ちょ、りな! ちょっと待って!」

健太郎、さえ子に名刺を渡す。

「すいません、刑事さんにこれ渡してくれませんか?」

「佐藤健太郎さん? え? 画家なんですか?」

「はい、すいません。先に失礼します」

りなと健太郎は出口に向かう。


半年後の休日、絵画教室で仕事をする健太郎に手作りのお昼の弁当を持って来たりなはスマホのアルバムを見ていた。家族3人で絵画教室の看板前で家族写真、絵画生徒達の写真、さえ子が健太郎に絵を教えてもらっている写真を懐かしそうに見ていた。


その時、絵を描く健太郎の手から筆が落ち、手を震えていた。りなは心配になるが健太郎は「ちょっと疲れているだけだ」とりなを安心させ、りなの手作り弁当を美味しく食べる健太郎だった。


健太郎の絵をスマホで撮るりなはインスタにアップし、健太郎を元気づける。


ところが、建物のオーナーがやって来て「教室の家賃、今までの分と今月分を早く払ってくれ」と要求し、頭を下げてペコペコ謝る健太郎だった。りなは健太郎の絵が大好きだ。しかし画家としての健太郎の絵はなかなか売れず、絵画教室の生徒も少なく、いつも赤字らしい。母・佐藤美野里(37)は宮本のIT会社に勤めており、絵画教室の赤字分を頑張って働いており、美野里はいつも忙しく疲れた顔をしている。


そんな両親を見てきたりなは、大きくなったら自分で会社を創り、CEOになり家族を大金持ちにしてやると心に決めて「目指せ東大!」がりなの目標になった。


一方、宮本家ではたけしの母・宮本ゆり(35)がたけしのテスト答案用紙を見て深い溜息を吐く。これまで優秀な家庭教師を何人も頼んだ。だが、たけしの成績は一向に上がらない。たけしの父でIT会社を経営する宮本大輔(40)はたけしの教育は母親の役目だとゆりを責める。


今回も、特に優秀な女性家庭教師の派遣を頼んだ。ところが学校から帰ってきたたけしは、その女性家庭教師を見るなり、逃げるように自分の部屋に飛び込んだ。「たけし、開けなさい!」とドアをどんどん叩くゆりだが、たけしはドアの鍵をかけてしまい部屋に閉じこもった。頼んだ家庭教師は怒って帰ってしまった。


その翌日、学校の帰り、絵画教室の前を通ったりなは、絵画教室の看板がなくなっていることにいことに気づき急いで家に帰った。


家には険しい顔をした美野里がいた。「お父さんの絵画教室、どうしたの?!」と聞くりなに家賃を半年も滞納しており、健太郎の絵画教室は追い出されてしまったのだと言う。


「私が頑張って働いて、毎月、絵画教室の家賃も渡していたのに、お父さん、全部、競馬、競輪、競艇に使ってしまって……」


そして「お父さんがこのままじゃ、りなを大学にやることもできない……お母さん、りなのために頑張る。でも、りな、本当に大学に行きたければ今からでも貯金しておきなさい。こんな情けない親でごめんね……」と美野里の目から悔しそうに涙があふれ出た。


家族4人揃って夕食をするたけし一家。ゆりは、大輔に、家庭教師が決まらない件を相談する。大輔はたけしがいつまでも家庭教師を受け付けないなら好きなゲームを全部没収すると脅す。その勢いで大学進学のことをゆりに聞かれたさえ子は自分の部屋へ逃げていった。


宮本のIT会社で働く美野里は自分の仕事を終えると、他の社員の仕事を引き受けもっと仕事が欲しいと部長にアピールした。一方、 母の帰りを待つりなと健太郎。りなの携帯で美野里のline既読がつかいないまま食事をする二人だった。


翌日、たけしを心配したゆりは新たに家庭教師を探し始めるが、候補者のリストにあった名前はほとんど底を突き、ため息ばかりが漏れた。


さえ子は新しいスケッチブックを買おうとゆりから小遣いをもらおうとするが、たけしの件でイライラしていたゆりは、さえ子にも美術はやめて勉強に専念しなさいと言う。母に「知り合いの中からたけしのいい家庭教師を見つけてくれたら、渡してやる」と言われたさえ子は、考え込むが古いスケッチブックを持って出て行ってしまう。


上野の森美術館でぼーっとしていたりなは偶然さえ子と再会し互い家庭の不満を漏らし合う。描きためた絵を見せたいさえ子はりなを家に連れて来る。さえ子の絵を見せてもらいその上達ぶりに驚くりなだった。さえ子は健太郎の教え方が上手かったとほめて、りなは沈黙する。


そこへたけしの部屋で「家庭教師について一生懸命勉強しないといい高校へ入れないでしょ!」と叱るゆりの声が聞こえてきた。

「そうだ、あなた弟に勉強教えてくれない?」とさえ子はりなを誘う。 

さえ子はゆりにりなを紹介すると、中学生身分のりなを見て疑い始めた。ゆりはりなに成績を聞き3位だと答え、さらに疑い佐藤家に行くことにした。「なぜ家まで行く必要がある」と聞くさえ子。「勉強ができるやつは部屋を見ればわかる」と言われ3人は佐藤家に向かう。


りなの部屋に入るゆりはりなの部屋を観察をし、奇麗に片付いた部屋を見て、りなのテスト99点と赤い本を見てゆりはりなをたけしの家庭教師として認めた。健太郎がりなの好物のあんこを持ち、手が震えながら渡した。さえ子はりなに健太郎のことを聞き、 父は手顫症だとさえ子に説明した。


りなは宮本家へ戻り早速、 授業を始めるが机に座らずにゲームをするたけし。りなはたけしに嫌味といやがらせで椅子に座らせるが、緊張感でりなと距離をおくたけしだった。勉強中にメロンが出て美味しくいただくりな。ゆりは勉強をするたけしを見てりなをほめて封筒を渡す。外で封筒の中身を見て5千円2枚が入って驚くりなの目は一瞬¥マークに変わった(ように見えた)。


初めてのバイト代だったりなは両手で大事に持ち家に戻っては机の引き出しに入れカギをかける。


たけしに勉強を教え始めるりなだったが、ちょっと油断すると勉強を放り出すたけしにりなは新たな交換条件を出す。「やりたい事をやる代わりにたけしは勉強をする」だが、たけしはりなの案を乗らない気分でりなのスリーサイズを答えることにした。扉を開けていちごを持ってくるゆり。それを美味しくいただくりなは軽く答えるりなでたけしは勉強をすることにした。数字を答えるりなを見て数学の勉強だと勘違いするゆりだった。たけしはりなと勉強をする度にたけしとりなの距離が縮んだ。


家に帰り、りなはベッドへダイブをしたけしの文句を言いながら暴れる。一般高校で受験をするりなと私立高で受験をするたけし。受験に合格をし各自高校生活を始める二人だった。


3年後、引き出しの中のお金を見て安心するりなは朝ご飯を用意する。いまだに無職でりな(18)にお小遣いを頼む健太郎(40)は競馬場中毒だった。朝食を用意し、ご飯の上にあんこを乗せて父と朝食をする。


一方、女性恐怖症が悪化し不登校のたけしを見て悩むゆりと大輔。さえ子はたけしが女性恐怖症だと疑いゆりに教えるが、信じないゆりは家庭教師を呼ぶが、勉強をせず、先生はあえなくクビになる。ゆりはたけしを怒鳴りつけ、たけしは部屋に閉じこもる。


学校で成績3位で舌打ちをするりなはスーパーでバイトをする。


過労で目の下にクマをつくっている美野里は貧血を起こし社長宮本大輔は短休を取らせて、ゆりはりなのためのケーキを買い家に帰った。


りな、スーパーから帰り美野里から電話が来て走りで家に向かいエレベーターを乗る。落ち込んで健太郎はりなとすれ違い隣のエレベーターから降りる。


家に入り美野里に「お母さん!一体どういうこと!?」と聞くりな。すると「自分の部屋へ行ってみな……」と言われ部屋に入るりなは引き出しが開いているのを見て予感をし、引き出しにあるお金を確認をする。後ろから母が現れ「あいつ……りなのお金全部……競馬で使ったよ……」と言われてりなは座り込み絶望する。


精神科に尋ねてたけしをカウンセリングをし、たけしが女性恐怖症と医者から診断される。ゆりは家庭教師探すゆりはさえ子にりなの連絡先をもらう。


落ち込んでいる美野里とりな。りなの携帯がなり、代わりに美野里が出て、りなに渡す。


家を片付ける美野里と外でゆりと電話をするりなはもう一度たけしの家庭教師を頼むが、1年以内に東京大学経済学部の学費を集めることが出来ないと思うりなはゆりの頼みを断る。

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