銅銭
天川裕司
銅銭
タイトル:銅銭
俺はタクシー運転手。
都内を適当に流していたら、
人通りから少し外れた所に女が立って居た。
女はタクシーに乗り込み、目的地を告げる。
「はい、かしこまりました。ドア閉めますね」
それからその目的地まで走行。
都内からどんどん外れて行ってやがて郊外に出て、
もう少しでその目的地に着こうとした時。
女「その道、右へ」
と言ってきた。
光が丘と聞いていたのに、その方向とは逆。
とりあえず「かしこまりました」と言って、
女が指示する方向へ走って行く。
ひどく物静かな人だった。でも、
「…お客さん、光が丘でしたよね?」
女「………」
「さっきの道、左へ行くと近かったんですけど?」
そう聞いても何も答えなかった。
変な客だなぁと思いながらとりあえず走る。
それからまた少し走った辺りで、
女「あ、ここで」
と言ってきたので停車。でも、
「…こんな所で、良いんですか?」
見たところ、ここは公園横の道。
辺りに何もなく、民家だって1つもない。
益々もって変な客だなぁ、なんて思いつつ、
とりあえず目的地に着き金をもらえばそれで良い、
として、そこで下ろすことに。
そして少し客から目を離した瞬間だった。
チャリン…と音がして、見ると古ぼけた銅銭?
「え?」となり、後部座席を見ると誰も居なかった。
「……………」
こんな怪談、よく話には聞いてたけど、
実際出遭ってしまうと何かに見放されたような、
現実や常識からいきなり突き放されたような、
どうしようも無い感覚に陥る。
「……なんだよ今の…」
そして目の前にある茶色い丸いもの。
「…これ何だ…?」と思いながらよく見ると
やっぱりそれは銅銭で、古き日本で使われていた
1銭、2銭などの金であることがわかった。
俺は急激に怖くなったのですぐその場を走り去り、
とりあえず会社に戻った。
そしてその時ちょうど居てくれた同僚に
今起きた出来事を全部伝えると、
「なんだよそれ、怖えなあ〜〜w」
とか笑いながら言って
初めは信じてもらえなかったが、
置かれた銅銭と、女が下りたその場所を確認すると、
同僚の表情が少し変わった。
「…お前、ほんとにここで客下ろしたんだな」
「ああ、間違いない」
「ここ見ろよ」
地図を見ると、
その公園の少し向こうにお墓があった。
あまり行った事ない場所だから分からなかった。
その銅銭は6枚。
「その金だったんじゃねぇか?」
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=cmoUeuNCAcs
銅銭 天川裕司 @tenkawayuji
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