第8話

「ねぇ、双華ちゃんは好きな人いないの?」

仕事が終わりタイムカードを切ろうとした時

突然聞かれた。


『いないです。

今この歳で彼氏いないって厳しいですよね...

わたしの将来どうなってるのかな。

いい人と出会ってれば嬉しいな。』


" わたしより歳上で独身の先生を

 目の前にやってしまった "


と後悔した。


「大丈夫‼︎双華ちゃんのことを想ってくれる

 相手は必ず現れるから。

 感情を抑えて仕事に望むことは

 悪いことではない、むしろ素晴らしい。


 だけど..仕事以外もそうする必要ない。


 双華ちゃんが大切に想う人

 大切に想ってくれる人の前では

 本当の自分でいてほしい。」


神永先生はとても自信に満ちた声で

わたしに伝えてくれた。


『はい...わかりました。』


「ちょっと演劇じみてたかな?

 とにかく、双華ちゃんの未来は明るい。

 安心して。」


そこまで保証されるとコワイ気もしたけど

悪い気はしなかった。


『あの、単刀直入ですけど

いま行きたいところどこかあります?』


「行きたいところかぁ..。

横浜が実家で、近くに海があってさ。

悩み事だったり気持ちが落ち着かない時は

海の澄んだあおさやその広さを見てると

心が浄化されて、なんか落ち着くんだ。


だから海が見たい!かな。」



『なんかわかる気がします。それ...」


先生のPHSが鳴り会話が途切れた。


「ごめん、緊急オペになったんだ。

気をつけて帰ってね。また明日。」


とても先生は急いでいた。

緊急オペは一刻を争うから余計だろ。


『ありがとうございます、また明日。

オペいってらっしゃい。』


そう笑顔で見送った。

そのオペ患が無事でありますように

と願いを込めて。

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