第8話 軍師ララフェル
スピユリが相棒のチョコボに乗って周囲を見渡すと、頭にマーカーを付けたララフェルの姿があった。
「あいつが今日の軍師か… 暗黒騎士か?ま、なんでもいいが…」
スピユリは怪訝そうな表情を止め、マップの調整を始めた。
「今回ばかりは勝ちたいよな… 俺の事を応援してくれるのなんて、親父達ぐらいなんだから…」
スピユリはそう言うと、赤魔道士にジョブチェンジした。侍に経験値が欲しかったので、侍で入場した後に、フロントラインでのメインジョブの赤魔道士にチェンジしたのである。
開始の合図が鳴り響き、チャット欄には、敵の氷への進撃の指示が出ていた。
「は?またか。この調子だと、敵陣の中まで入り込んでキルされて、リスポーン(自陣のスタート場所で生き返る)する仲間の大名行列を見る羽目になるな…」
軍師からバースト(敵にマーカーを付け、近くの味方の範囲攻撃を集中させる事)の指示が出た後、中止!撤退!!の指示が続けざまに出た。
「またこれか… 何度俺は、この光景を見なければならないんだ」
マップに表示される味方のマークと、氷が壊せるようになる前の合図がされた。
氷が青く輝き、スピユリはターゲットすると、何時もの木人を叩き始めるように、レゾリューションを撃ち始めた。
スピユリが何度かのスキル回しの後、氷の上に◎のマーカーが付いた。隣には軍師のマーカーを付けたララフェルが、氷叩きを始める。
チャット欄には、大氷を攻撃の指示が出ていた。
まぁ、一人で壊すよりかは早いよなと思い、スキル回しを続けると、軍師は攻撃を中止させ、スピユリと最初に氷叩きをしていた者を残して、敵へと進撃して行った。
「敵の家の氷は、美味そうに見えるのかな?」
スピユリは毎回、このセリフを言ってる自分が、とても嫌だった。
軍師達一向は、敵から袋叩きに合い、一目散で逃げ帰って来た。
「またか… 行かないわけにはいかないよな」
何時もなら放ったらかしにしてるが、アリゼー達が応援してくれてるのを思い出すと、逃げ帰って来る仲間の間に滑り込むように入り、バマジク(味方に防御バフ)をかけた。
タイミング良く中央の氷が攻撃出来る状態になり、スピユリはすかさず氷にターゲットして、レゾリューションからコル・ア・コルで飛ぶ。近接攻撃からデプラスマンで戻って来て、ヴァルフレアを撃ち込んだ瞬間、双蛇の一軍が畳み込んでくるようにフルボッコして来た。
「まぁ、こうなるよな… 軍師は、この氷を取ってくれるのかな?」
スピユリがリスポーンした後スコアを見ると、双蛇の点数が上がっていた。
「ま、分かっていたが、やはり無駄死にか…」
それから先は散々であったが、何度か中央の氷を破壊する事でスコアを稼ぎ、なんとかギリギリで勝利した。
スピユリは少し息を切らせながら、タバコに火を点けた。いつもの如く、深く煙を吸いこむ。
「いや〜皆んな、良くやってくれた!皆んなのおかげで勝てたよ。特に赤魔道士くん、君には悪い事をしたね。父に計らって、給料を増額させてあげよう」
暗黒騎士のララフェルが、得意満面にそう言うと、お付きの者に手配させたようだった。
スピユリはゆっくりと近づくと、ララフェルの首根っこを掴んで、ぐいっと自分の目元まで持ち上げ、右拳を左頬に向けて殴りつけた。
と見えたが、瞬間いちばん年長のオスッテが、スピユリの右拳をとめていた。
スピユリはララフェルを掴んでいた左手を離すと、バツの悪そうな表情をした。
「言ったはずだぞ!頭も体も心も強くなれと。こんな事程度で、我を忘れて怒りを止められないでどうする!」
年長のオスッテは、スピユリの頭を小突いた後、ララフェルを睨み付けた。
「お、俺は暗黒騎士だぞ!!フロントラインでは、一番強い存在何だぞ!!それに俺は、ウルダハの高官の息子何だぞ!!」
最後のは何だかなぁ〜と思うが、いい年した男が、親出してくるかおい?と、スピユリは思った。
「本物の暗黒騎士は、自分を暗黒騎士だと、誇ったりはしない。何故暗黒の力を得たかは知らんが、一人で立ち向かうだけの気迫さえ無いのなら、今直ぐに立ち去れ!」
今迄でかい面を続けていたララフェルの表情が、凍りついた。
「な、何だお前は!?ば、化け物!!」
心底怯えながら、ララフェルは床を這いずり回りながら逃げて行った。
「史上最悪な暗黒騎士の親父に、暗黒を語るとか、無知はそれだけで罪になるな」
スピユリは笑い声を抑えながら、ララフェルの後を目で追った。
続く
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