第5話 昔話の始まり始まり

「さて、一週間ぶりかぁ〜 ちゃんと仕事して結果出していかないとな」


 一人、マーセナリーなオスッテが呟いた。 


 シャーレアンにはミコゼーの実家があって、マーセナリーなオスッテは、昔はよく、お母さんのアメリアンスさんに、ミコゼーとアリゼーとアルフィノと一緒に、色んな所に遊びに連れて行ってもらっていた。


 マーセナリーなオスッテは過去、行方不明の親を探して、ウルブスジュエルに行き着いたのだった。


 そこで傭兵仲間から、生活面での色んな面倒を見てもらったり、親代わりに接してもらったり、誕生日には沢山のプレゼントと、美味しいご馳走をしてもらったりと、親のいない悲しさを、次第に忘れて行った。


 時が経ち、中学生に入る年齢になると、フロントラインの出場資格が与えられる。勿論ウルブスジュエルで育ったマーセナリーなオスッテは、竜騎士になる為のジョブクエを行い、赤魔道士としての道を極める事となった。


 初戦を待つマーセナリーなオスッテに、屈強なオスラが声をかけて来た。

 

「スピユリ、今日は目出度い、お前の初陣だ。勝っても負けても祝ってやるから、全力でボコって来い」大袈裟にオスラは笑いながら言うと、ちよっと真面目な顔で、囁くように呟いた。


「いいか、スピユリ。勝負ってのは、下がってもいい、だが逃げるな。勝負の最中は、逃げ腰になった奴から狙われる。もし取ると決めたのなら、例えキルされても、逃げるんじゃないぞ」

 

 かなり大真面目に、オスラはスピユリの両肩を叩いて言った。


「ま、まぁな。俺だって、やる時はやるさ。俺はあんたらの、子供みたいなもんなんだろ?なら、親の顔を潰すような事はしない」


 強がりだが、まぁいいだろう。この時のスピユリは、己で己を、鼓舞した。


 とはいえ初戦で勝つなど、フロントラインは甘くない。3回まで数えていたキル数を忘れるほど、スピユリはフルボッコされた。その後に2戦行い、その日のフロントラインでの模擬戦は終わった。


 ミコゼーが行うような、芸能人を呼んで戦うエキシビションマッチなようなのは、それから数年後である。


 双蛇、黒渦、不滅に分かれ、24対24対24の、対人戦闘を行う。キルされても、リスポーン(生き返る)するので、特に怪我や後遺症や、死ぬ心配は無い。


 フロントラインの事を説明すると、ただの攻略記事になるので、この辺にしておこう。


 スピユリはそれから休みの日以外は、学校から帰ったら、木人叩き2時間と、フロントラインに3戦だけ参加した。


 何時もではないのだが、級友達がスポーツに汗を流し、図書室でのんびりと読書に集中しているのを、スピユリは、ふと羨んだ。


 たまにスピユリを馬鹿にする奴もいて、スピユリはつい、ウルブスジュエルの親代わりの皆んなの前で愚痴を漏らした。そんなスピユリの愚痴を、皆は笑いながら聞いていた。


「気にするな、ただ、ひたすら強くなれ。心も頭も体もだ」


 いちばん年長のオスッテが優しくスピユリに言った。


 それから半年が過ぎ、ミコゼーとアリゼーとアルフィノを連れたアメリアンスさんが、ウルブスジュエルに現れ、出場する為にシャキ待ちしていたスピユリに、ミコゼーが喧嘩をふっかけたのが、ミコゼーとの腐れ縁の始まりだった。


続く

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