【クラッジ童話】プリンセス・クリスティーナと勇気のペンダント

坂道光

森の散歩

むかしむかし、クラッジという名前の美しい王国がありました。

その王国に、クリスティーナという9歳の女の子が住んでいました。

クリスティーナは王様の娘で、プリンセスだったのです。


王宮の人々は皆、この明るく優しいプリンセスのことが大好きで、親しみを込めて「ティナ」と呼んでいました。


ティナは、王都の外れにある「アレックス・コテージ」というお家に住んでいました。

このコテージは、ティナのおじいさんである元王様のアレクサンドルが住んでいる場所でした。


ティナの毎日は、とっても忙しいものでした。

朝早くから夜遅くまで、たくさんの先生たちが来ては、いろんなことを教えてくれます。

お姫様としてのマナーや歴史、そして王国のことについて、たくさん勉強しなければなりませんでした。

でも、先生たちもティナのことが大好きで、優しく丁寧に教えてくれるのでした。


そんな忙しい日々の中で、ティナには大好きな時間がありました。

それは、勉強の合間にできる森の散歩です。

コテージの周りには大きな森が広がっていて、ティナはその中を歩くのが大好きでした。


ある日、おじいちゃんのアレクサンドルが、ティナに素敵なプレゼントをくれました。

それは、きらきら輝く星の形をしたペンダントでした。


「ティナ、このペンダントは特別なんだよ」


とおじいちゃんは言いました。


「特別?」


ティナは目を大きく開いて聞きました。


おじいちゃんは優しく微笑んで続けました。


「そうだよ。このペンダントは、君の中にある勇気を思い出させてくれるんだ。困ったときや怖いときに、このペンダントを握りしめてごらん。きっと君の勇気が湧いてくるはずだよ」


ティナは不思議そうな顔をしましたが、大切そうにペンダントを首にかけました。

それは暖かくて、少し重みがありました。






それから数日後、ティナはいつものように森の中を散歩していました。

青々とした木々の間を歩きながら、小鳥のさえずりを聞いたり、やわらかな土の感触を楽しんだりしていました。


突然、小さな鳴き声が聞こえてきました。


「ニャー、ニャー」


という弱々しい声です。


ティナは立ち止まり、耳を澄ませました。また鳴き声が聞こえます。

どうやら近くの茂みの中から聞こえてくるようでした。


「誰かいるの?」


ティナは優しく呼びかけました。


返事はありませんでしたが、また小さな「ニャー」という声が聞こえました。


ティナは茂みの方に近づいていきました。

そっと葉っぱをかき分けると、そこには小さな子猫が見えました。しかし、子猫は単に茂みの中にいるだけではありませんでした。

茂みは予想以上に密集しており、枝や葉が複雑に絡み合っています。子猫は、その絡まった枝の間に挟まっているようでした。


「あら、かわいそう」


ティナは思わず声に出しました。


「大丈夫よ、助けてあげるからね」


ティナは子猫を助けたいと思いました。でも、すぐに困ったことに気づきました。

枝を慎重にかき分けて、怪我をした子猫を安全に取り出すには、時間がかかりそうです。

自分の手も枝や葉っぱに行く手をさえぎられ、うまくいきません。

しかも、いつもなら、この時間にはコテージに戻らなければいけないのです。


「どうしよう...」


ティナは悩みました。


子猫を助けたい気持ちと、時間を守らなければいけないという気持ちの間で揺れていました。お城の人たちを困らせてしまいます。


そのとき、胸元で暖かさを感じました。ペンダントです。ティナは、おじいちゃんの言葉を思い出しました。「このペンダントは、君の中にある勇気を思い出させてくれるんだ」


ティナは深呼吸をして、決心しました。「よし、おじいちゃんに相談してみよう。一人じゃ難しいかもしれないけど、おじいちゃんなら助けてくれるはず」



ティナは、コテージへ走って帰るのでした。


(つづく)

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