七
祖母のお見舞いへ行って……花織さんとお付き合いを始めて約1週間が過ぎた。
現在私は彼と食事へ来ている。
「おばあちゃん、体調はいかがですか?」
「結構良いみたいです。でもまだ色々とドクターストップが多いみたいで、暇だと言っていました」
「元気そうでなによりです」
暇だ暇だって子どもの様に不貞腐れてたけどね。病気前より元気なのはなんでかなぁ。
「そ……それでですね。落ち着いたら花織さんを家に連れておいでって言われて。おばあちゃんの家は、私にとっての実家みたいなものなんですが……」
「そうなんですね。是非行きたいです」
花織さんに私の両親のこと、話した方が良いのかな。でもあの人みたいに「両親と話し合うべきだ」って言われたらどうしよう。
あの人って誰だっけ……?
「灯さん」
「え? あ! なんですか!」
せっかく花織さんと食事へ来ているのに、考え事なんてもったいない! 今は花織さんとの話に集中しなきゃ!
「そういえばスマホには慣れました? 分からないことありませんか?」
「え? スマホですか? ……まだ慣れませんが、分からないことはハルさんが教えてくれるので大丈夫です! あ、でもたまにハルさんが反応しないんですよね」
私はAIアプリを開いた。ハルさんは目を瞑っており、話しかけても反応はない。まるで寝ているかのように。
「今もですか? それは多分サーバーメンテナンス中なんだと思います」
「ほえー、なんか難しいですね」
サバ? 鯖? 電子機器についてはちんぷんかんぷんだ。まあいっか。不得意なことは得意な人に聞けば良い! それが私の持論だ。
「また何かあれば聞いてくださいね」
私は1年ほど前までガラパゴス携帯(通称ガラケー)を使っていたが、花織さんに勧められてスマートフォンに機種変更した。花織さんは設定も全部やってくれたし、ハルさんのアプリも入れてくれた。本当に優しい人だ。
「それと、全てを僕に話さなくても大丈夫です。人それぞれ、事情はあると思いますから」
私は目を見開いた。彼は私の言い回しや表情から、色々察してくれたのだ。こんなに他者を思いやれる優しい人が、他にいるだろうか?
花織さん花織さん花織さん……
「好きです!」
「え?」
やばい……声に出てた。
「あ、ありがとうございますって意味です。いや好きなのも本当ですが……」
今私の目はめちゃくちゃ泳いでいるのだろう。動揺する私を見て、花織さんは優しく微笑んだ。
「灯さんって本当に面白いですね。そんなところもあなたの良い所です。あ、そうだ。今度の日曜日、どこかへ出かけません? 行きたい場所ありませんか?」
付き合ってから食事には何度か行ったが、ちゃんとしたデートはこれが初めてだ。折角ならデートっぽい場所へ行ってみたい。
「私、今まで一度も水族館へ行ったことがなくて。行ってみたいです!」
「良いですね。では当日お迎えに行きます」
「はい! 楽しみです」
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