私は光の速度で花織さんの前に立ち、その運動エネルギーを利用して流れるような動作で土下座をした。


「本当に本当にすみませんでした! 私が重体だって思い込んで、花織さんを巻き込んでしまって!」


 私は深々と頭を下げた。土下座では足りないのではないか。地面に頭をめり込ませることは出来ないだろうか。


「え……あの、頭を上げてください。怒ってませんから」


 頭上から困惑に満ちた声が聞こえてくる。いやいや、それでは私の気持ちが収まらない。


「えーと、そうですね。では僕のために頭を上げてもらえますか」

「え?」


 どういう意味だ? 私がパッと顔を上げると、自分達が注目の的であると気が付いた。ひそひそくすくす声が聞こえる。


 私は音もなくスッと立ち上がった。


「ありがとうございます。灯さんは面白いですね」


 花織さんはいつも通り笑顔だ。本当に怒ってないようだ。


 それにしても私のバカバカバカ! 前はもっと慎重に行動を選んでた気がするのに、いつからこうなってしまったのか。


「あの……何かお詫びを……」

「うーん、そうですね。僕行きたい所があって、一緒にどうですか?」

「どこにでも行きます!」

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