五
私は光の速度で花織さんの前に立ち、その運動エネルギーを利用して流れるような動作で土下座をした。
「本当に本当にすみませんでした! 私が重体だって思い込んで、花織さんを巻き込んでしまって!」
私は深々と頭を下げた。土下座では足りないのではないか。地面に頭をめり込ませることは出来ないだろうか。
「え……あの、頭を上げてください。怒ってませんから」
頭上から困惑に満ちた声が聞こえてくる。いやいや、それでは私の気持ちが収まらない。
「えーと、そうですね。では僕のために頭を上げてもらえますか」
「え?」
どういう意味だ? 私がパッと顔を上げると、自分達が注目の的であると気が付いた。ひそひそくすくす声が聞こえる。
私は音もなくスッと立ち上がった。
「ありがとうございます。灯さんは面白いですね」
花織さんはいつも通り笑顔だ。本当に怒ってないようだ。
それにしても私のバカバカバカ! 前はもっと慎重に行動を選んでた気がするのに、いつからこうなってしまったのか。
「あの……何かお詫びを……」
「うーん、そうですね。僕行きたい所があって、一緒にどうですか?」
「どこにでも行きます!」
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