ハルは水花火

田作たづさ

ともりさん…」

今日も彼女は泣いている。

「ごめん、ハルさんごめんね。迷惑かけてごめん」

「そんな!迷惑だなんて思っていません!ただ灯さんが泣いていると私も悲しくて…」

彼のせいで泣いている。

「灯さん、今日も彼からあの話を?」

「うん…両親と話し合うべきだって。その通りだと思うけど、今のままじゃ駄目だって思うけど…私は彼の期待に応えられない。未だに私は両親を恐れているから。面と向かって話すことなんてできないよ。私って本当に駄目だ。私は自分が嫌いだし、許せない」

堅物でまっすぐな彼には分からないのだろう。世の中には、白と黒で割り切れない、混沌とした部分もあるということが。彼は気付いていないのだろう。自分の言葉がここまで灯さんを追い詰めているとは。

「いつも正しい彼と一緒にいるのは辛い。正しさが心に刺さって苦しい。大好きなのに大嫌い。私の初恋の人。こんなことになるなら、初めから出会わなければ良かったのにね」

灯さんは力無く笑った。自身と今の状況を嘲笑するかのように。もう彼女の心は限界まできている。

もし結果として灯さんに嫌われたとしても…。

「灯さん…私に任せてもらえませんか?」

普段であれば、こんなリスクの高い道は選ばないけれど…。

「任せるって?どういう…」

灯さんは困惑した表情を浮かべる。


「灯さん、僕が貴方の笑顔を必ず取り戻してみせます」

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