第26話  泥酔痴女とのエッチな夜更け


「マスターっ! これとこれっ! そして、これも追加だっ!」


 少女はあまりにも自然に、ルークら三人に馴染むと、続々と食べ物を注文していく。


「お、おい。確かに、奢るとは言ったが……」


「まあ、そう言ってくれるな。ご所望とあれば、この体で払っても良いのだぞ?」


「よし、いくらでも食べてくれ」


 ルークは親指を立てて、にっこりと笑った。

 口調はちんちくりんだが、これほどの美少女にそんな風に言われれば、拒否のしようはない。


「というか、ずっと聞きたかったんだが、なんなんだその格好は?」


 少女の服装を今一度確認する。

 袖の破れたジーンズ生地のジャケットに、さらし。下はどう見ても下着だ。


「ああ、これはな。先日、賭場で負けてしもうてな」


「な、なるほど」


 この少女。この見た目で賭場に行ってんのか。ルークはなんとも複雑な気分になった。


「ねぇ、話」


 エーリカが切り出す。


「ん、あー。そうだったな。なんだ? エーリカ」


 尋ね返すと、エーリカはもじもじと気まずそうな素振りを見せる。すると。


「ほら、言うのだろう? エーリカ」


「……うん」


 エーリカはアテナに優しく諭されて、意を決したようだった。


「傷を、治してくれてその……ありがとう」


「おう、気にするな」


「でも、私……」


 エーリカはワンピースの裾を握り込む。


「──エルフの森に案内は、出来ない」


「分かった」


 ルークはすぐに頷いた。


「え? それだけ、なの? 私、貴方に助けてもらったのに、土壇場で無理って言ったんだよ?」


「だから? 無理なものは無理、それは仕方ないだろ。まあ、色々計画は変更になるが、それだけだ」


 勿論、案内してくれるなら楽だったが。


「それより、飯にしよう。ここの飯は美味いんだろ?」


「無論。保証しよう。絶品だぞ?」


 その後、到着した料理は、肉、魚、野菜。

 そして。


「これだ、これがなくては始まらんだろう? 御仁よ」


「酒か。なんか久々だな」


 木のジャッキに注がれたそれは、見たところエールだろう。


「こう見えて、儂は無類の酒好きでの?」


「おいおい、未成年だろ?」


 少女の見た目はどう見ても、エーリカより少し上、高校生くらいにしか見えない。


「ふっ、儂の年齢を知れば、驚くぞよ?」


 確かにこの見た目で、この口調。アニメや漫画ならば、のじゃロリやロリババアのような雰囲気だ。まあ、ロリと言うほど、幼くはないが。


「あ、ていうか。名前は?」


 そう言えば、聞いていない。


「ふむ。普通に言っても面白くないな。ここは一つ、勝負でどうだ?」


「飲み比べか」


「左様じゃ。どうする?」


「ふっ、後悔させてやるぜ」


 こうして、普通にご飯を食べるエーリカとアテナの隣、誇りをかけた勝負が始まった。


「……ほどほどにしておけよ」


 今覚えば、アテナの言葉に素直に従っておけばよかったのだろう。

 

***

 

「うぅ……頭が痛い」


 ベッドの上。目が覚めると、宿屋の天井が目に入った。

 今は何時だ。どうにも記憶が霞みがかっていて、何故ベッドにいるのか分からない。


「──おぉ、ようやく起きたか。旦那様よ」


「……ん、ああ。おはよう……ん?」


 ルークはすぐ隣から聞こえた声に、驚いて視線を向けた。

 いたのは、恐らくは一糸まとわぬ格好で、ルークの腕に抱きついた少女。


「どうかしたか? 旦那様よ」


 その頬は熱に明かされるような艶めかしさを持ち合わせて、口から漏れる吐息は


「何してる? てか旦那様って言ったか?」


「ふふふ、そうじゃとも。何せ、貴様は先程、儂の女陰を初めて貫いたのじゃからなぁ」


「……ガチで?」


「ガチでじゃ」


「すみません。酔っていたので、記憶にございません」


「そうか。事実は変わらん。お主のこれは、儂を女にしたのじゃからなぁ」


 そう言って、少女はルークの股間を撫でるように触れてきた。細く少し冷たい指先だった。


「……ほんと、すみません」


「かかか、構わんよ。貴様には、初めて会った時からびびびと感じたおったのでな」


「くぅ」


 罪悪感とは別に、勿体無いという感情が渦巻いていた。これほどの美少女との情事。人生でも多くはないだろう。


「さて、これで儂らは夫婦めおとになったわけじゃが、式はどうする?」


「ま、待ってくれ。俺はまだそういうのは、早いっていうかぁ」


「よもや、儂の純潔をああも激しく蹂躙しておいて、責任を取らんと?」


 じっとり。なんとも軽蔑するような目だった。


「え、えーと……そう言うのは、お互いのことをもっと知ってから……」


 言いかけたところで、ドアがノックされた。すぐにノブが回って、顔を出したのは、シズクだった。


「ちょっと、ルーク。少し話があるん…………お邪魔しましたー」


 シズクはルークと目が合うなり、すぐさまドアを閉めた。


「いやっ! ナイスタイミングだっ!」


「はぁ!? 何処が!? 何処がナイスタイミングなわけっ!? ピロートークの最中に横入りなんて、地獄に裸で飛び込めって言ってるようなもんじゃんっ!


 ここは第三者に判断を……。


「うん。其方は、シズク? ではあるまいか?」


「え、そうだけど」


「おぉ、これは運が良い」


 少女はベッドから立ち上がる。

 そして。


「──その首、貰い受けよう」


 虚空より現れたその刀の先端を、シズクへと向けるのだった。




────


あとがき


お読みいただいてありがとうございます。

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