第17話  魔法使いへの拷問(NTR)

 金切り声のような甲高い耳鳴りの末に、シズクは目を覚ました。


「……こ、ここは? っ!? まだ薬が残って……」


 意識ははっきりとしているものの、いまだに熱を帯びた体は動きが鈍い。

 シズクがいたのは、煉瓦の壁に囲まれた牢屋の中、薄汚れたベッドの上だった。


 いつものローブは剥奪され、その白い肌を覆うものは、最後の防壁である上下の下着だけだった。


「こんなところ、魔法ですぐにでも……なっ!」


 手首には枷。しかし、シズクが驚いていたのは、その首に巻かれた細い鎖のチョーカー。


「──魔封じのチョーカー。装着した者の魔力の流れを著しく阻害する。いやぁ、良かった。お前ほどの奴にも効果があって」


 声が聞こえたのは、鉄格子の向こう側。

 向かいの壁にもたれかかったスーツの男、ジンパチだった。


「なんのつもりっ! あたしにこんなことして、勇者が黙ってるわけ……」


「ほーん。じゃ、あいつ……勇者は何をしてくれるんだ? お前のことを道具だとしか思っていない、奴に」


「あんたに、あいつの何がわかるってのっ!?」


「さあ、知るかよ。でも、今のあいつは、帝都で一番高いレストランで、美女二人とランデブーの真っ最中だ」


「っ……そんなわけが……」


「じゃあ、なぜ奴はお前を助けにこない? あいつがその気になれば、俺を倒すことも、この街をしらみ潰しに探し回ることも容易いだろ」


「っ!」


 確かに。シズクは心の何処かでそう思ってしまった。


「さて、俺たちも始めようか。色々と聞きたいことがあるからな」


 鉄格子が開き、ジンパチは牢へと入って来た。その手には、怪しげな色の液体が入った小瓶が数種類握られている。


「くっ、こんなのっ、おかしい……」


 ジンパチとの距離が近づくにつれて、シズクの体内を駆け回る快感は大きく膨らんでいく。


 その下半身は、否応もなく濡れそぼり始め、心臓の鼓動が跳ねるたび、痛いほどに疼きを繰り返す。


「ちか、寄らないで……んぅっ!」


 シズクは体を捩り、必死に快感に抗う。しかし。


「我慢は毒だぜ?」


 その指が、柔らかくシズクの頬を撫でた途端。


「っ!?」


 蓄積された快感は、あまりにも容易くシズクを果たさせた。


 足の筋肉からは一切の力が抜け去り、その口から溢れでた噛み殺された喘ぎと、艶かしい吐息のみが牢の壁を叩く。


「ありゃ、その反応。処女じゃないな?」


「っ!? ……だ、だったら、なに、よ」


 シズクは赤面のまま、奥歯を噛み締め、ジンパチを睨んだ。


「いいや、結構。なら話が早い。こっちもこっちで、手加減する手間が省ける。どうせ相手は、勇者のやつだろ?」


「……ふんっ。どうせあんたなんて、あいつの足元にも及ばないわっ!」


 そうだ。彼に勝てるはずがない。自分が彼以外で……。シズクは辛うじて、正気を取り戻す。


「あっそ。なら、耐えてくれよ?」


「え? ……んっっ!!!???」


 ジンパチがしたのは、その指先でシズクの太もも、その内側を軽く撫でただけ。


「もう、2回目か。口だけだな」


「まだ……私は……」


 言葉で否定しようとするものの、シズクの上がってしまった呼吸ではままならない。


「別に、責めてるわけじゃない。だってよ? 考えてもみろ? 体には媚薬が回って、前には男がいる」


「そんな、の」


「──仕方ないんだよ、これは。誰もお前を責められない。悪いのは全部、助けに来なかったあいつとそう仕向けた俺だ」


 ああ、これはダメだ。その言葉が鼓膜を打つなり、シズクは恐怖した。

 何せ、その言葉はあまりにも優しげで、慈愛に満ちていて……。


「仕方……ない?」


 快楽による微睡んだ意識の中では


「俺は、お前を虐めたいんじゃない。可愛いお前のもっと可愛い姿をこの目で見たいだけなんだ」


「……可愛い? あたし、が?」


「そうだ。今のお前は、誰よりも可愛い。な? だから、もっとお前を見せてくれ」


 シズクの心に大きな変化が訪れる。

 先程まで、憎しみと嫌悪以外の感情を持ち得なかったジンパチに、今では胸がときめいていた。


「俺は、正直に言ったぜ? お前が可愛いって。だから、お前も正直に言ってくれ」


 そうして、次は下腹部へと触れてくるその指先。


「……はあ、はあ。き、きもち……」


「聞こえないぞ?」


 その指の愛撫がぴたりと止まる。


「っ!? ──気持ちいいのっ!」


 そう言葉にした瞬間。


「──ああ、そんなんだろうな」


「っ!!!」


 シズクの中で何かが崩れるような感覚がした。




 

 

 

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