海の華
とんぼ
プロローグ 第1話 漂う
わたしは今ドコにいるんだろう。たしかな事なんて何も無い。幼い頃に見た海に咲く華の記憶だけが鮮やかに残っている。
漂う
朝起きるとこれまで見ていた夢が薄くなる。どれほど鮮明に胸を高鳴らせていた夢でも、目覚めればうっすらとしか覚えていない。
幼い頃はそれが悲しくてまた夢の世界に戻ろうと寝ていたが、今ではそんな事に気をかけられる余裕はない。
目覚めてすることはまず今は何時なのか、今日の用事と仕事の確認からだ。それを確認して朝の支度をして、普通になるための化粧をする。
そして仕事やら用事やらしていたらしていたら気づけば夜になっている。世間一般的に社会人になると1日が驚くほど早い。小学生のころは1日が永遠に終わらない感覚があった。だが今は1年があっという間に終わる。
それでも幼い頃から夢と現実の世界は曖昧だ。世界も夢も不思議な事であふれている。夢の中でも五感は感じられるし、ケガをすれば痛い。現実世界がもし長い夢でも覚めるまで分からないのだ。
幼いころのわたしにとって氏名に意味はなく、製造番号のように感じてしまう。弟の名付けるとき親が何回も頭をひねらせ、意味やら画数やら考えていたことに驚いた。
わたしを名付けるときもそうだったらしいが、本人としてはそのように思えない。頭がおかしいのか、暇なのか。
そんな風に世界のことの意味が分かるようになったのは本に出会ってからだ。それまでの呼び名でしかなかったものに意味があることに気づいた。
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