あたしの想い、神様の都合
「えー……なんか……思いっきり私情を挟んでますけど……そもそも神様が、一個人に対してそんなに忖度して大丈夫なんですか……?」
まあ、もう一度人生を送れるなら、あたしにとっては悪い話じゃないけど……。
「え? いかんのか?」
わ、悪びれていない、だと!?
「だ、だって、神様ってすんごい偉くて誰に対しても平等で……聖人君主なんでしょう?」
「いや、神に対して聖人君主はちと違うと思うが……」
まあよいか。と言って、神様は続けた。
「お主は大きな勘違いをしておる」
「……?」
「神ってヤツはな、決して平等ではない」
「えっ!?」
ご本人様から、あたしの固定概念へダイレクトアタック!?
「わしらは人間以上に人間臭くてなあ……わがままで嫉妬深くて自己中で……そして何より、えこひいきが大好きなんじゃよ」
「……は、ははははは」
衝撃過ぎて笑うしかなかった。あたしの描いていた神様像が、木っ端みじんだよ……。
「じゃから、まうっこのわしからしたら、お主は特例組なんじゃなあ。で、どうする? 転生するかね?」
「え、えと……」
正直、あたしは生に対して未練たらたらだった。VTuberとして、まだまだやりたいことがあったし、実際これからだと思っていたのだ。登録者数が50万人をこえれば、念願だった3Dモデルも実装されて、今まで出来なかった表現だって実現できたはず……でも。
「あ、あの……転生じゃなくて、澤野京子として生き返ることは……できないんでしょうか?」
それは、あたしが生きていた現代の日本でやりたい事なんだ。先輩たちや同期のみんな、それに、まうっこのみんなと色んな思い出を作っていきたいんだよ。
「……」
神様が気の毒そうにこっちを見ていた。
「言いにくい事なんじゃが……」
本当にすまなそうな瞳だった。
「お主の身体はな……とっくに火葬済みで、もうこの世界にはないんじゃよ」
「は、はいぃぃ? 今って、あ、あたしが死んで昨日今日じゃなくて……もうお葬式まで終わっちゃってるくらい時間が経ってるの?」
「そうじゃよ。ていうか、もっと経ってるんじゃが……恐らく、魂が相当疲弊しておったんじゃろうな。それで覚醒までに時間がかかったんじゃろう……まあ、生前あれだけ毎日長時間配信をしていれば、押して知るべし、なんじゃがな」
そ、そんな……で、でも、本物の神様でまうっこだっていうなら、あたしを生き返らせてくれたって……。
「ああ、あの、特例ついでに神様の力でなんとか復活──」
「すまんが……お主の四十九日もとうに過ぎてしまっていてな……何とかしてやりたいのも山々なんじゃが……わしらのルール上、無理なんじゃ」
がー!? あたしの魂ちゃんってば、そんなに寝てたの!? それに……。
「神様も……全知全能じゃ……ないんですね……」
あたしは愕然として膝を落とした。
「全知全能、か……確かにやろうと思えばできなくはない」
「そ、それなら──」
「じゃが、お主の元の身体を復活させ、そして生き返らせることで、どれだけの人間の記憶を改ざんしなければならないのか……わかるかのう?」
「……」
「あまりにも大きな改変は、様々なひずみを生んでしまう可能性がある。最悪、地球という星が消滅するかもしれん」
何も言えなかった。あたしのわがままでそんなことになったら、それこそ死んでも死にきれないよ。
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