猫が西むきゃ犬が噛む

オッサン

第1話 モカの旅立ち

2024年5月。

我が家の愛犬、モカが天国に旅立ち、三年が経った。

私は彼女を本当に我が娘同様に感じていた。犬だけど。

しかし残念なことに五年前、胃の下部から小腸にかけてのガンが見つかり腸を60cm切除した。

犬猫病院のドクターには、ガンが転移していることは否定できず、再発の可能性はあると言われていた。

その後の二年間、彼女は実に良い家族であり、みんなを和ませた愛犬でもあった。

だがやはり、悲しいことに期待も虚しくガンは再発し、彼女はだんだんとやつれ、病院でももう苦しめないほうが良いだろうと言われた。

彼女は居間のこたつ布団の上で眠っている間に息を引き取った。


私達は、もうつらい思いはしたくないと思ったのだが、モカとの思い出が心をよぎるたびに、あの楽しかった日々は消え去ることはないと思い直した。

そして、新しい家族を迎え入れることは罪ではないと、思えるようになった。


おとなしくて優しいがいたずら好きだったモカさん。

ビニールテープで眉毛を貼ろうが、手ぬぐいでマチ子巻きをしようが、橋の上でおしりを押しても怒らなかったモカさん。

茶色の柴犬の雑種で、頭の良い可愛らしかったモカさん。

一緒に公園のベンチに座って景色を眺めていたモカさん。


私は彼女を育てた経験を活かし、ふたたび彼女の弟妹になる子らを育てようと思ったのだった。


モカ、君を忘れないためにも。


そして、我が家にやってきたのはなぜか猫だった。


なんで?

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