第24話 実力テスト その4(木刀キャラは憧れである)

「どんなに凄い魔法があっても最終的に使い手によって勝敗は決する」


 道着姿のカレン姉がそう言ってタオルで汗を拭う。

 もう日課に近い鍛錬。いつものように姉にボコボコのボコにされて転がされている同じく道着のオレがいた。


 疲れ切っているから声も出ません。


「お前には戦いの基礎も経験も圧倒的に不足しているからな。あの痛い格好のスペックとミヤちゃんのサポートで不意をつけているが、慣れてくればお前の攻撃は簡単に破られるだろうな」


 痛い格好の部分にはオレも正直同意したいが、残念なことにそれを自分で強制的に着ているのでヘタな反論は自分にダメージが来るから辛い。


「中等部の子供なら騙せれるが、高等部の連中だとそうもいかない。全員とは言わないが、今のままじゃアタシのように勝てない相手が増えるのは間違いないな」


 結局凄い魔法があってもオレが戦いの素人である限り、格下に勝っても格上に勝つのは難しいと言う話だ。


 しかし、異常な才能でもない限り飛躍的な成長はありえないと言われている。地道な努力しかないが、姉さんたちや幼馴染たちと違って、ずっと魔法から縁遠かったオレが卒業までにSランクに届くレベルに達せれるか?


 やはり無理ゲーにしか思えなかった。センスがあるとも言えないし。

 だからオレはミヤに相談した。今ある手札でどうにかして格上に勝てないか?と。


『根性?』


 カレン姉みたいな事を言い出した。

 和馬ならそうだなって力強く頷くけど……他には?


『呪いに頼れば?』


 致命的にキャラ崩壊しそうだな。他には?


『ポイントを使う』


 目的から遠ざかるなー。

 勝てる可能性あるかもしれないが、代償が大き過ぎない?


『負けてもいい勝負なら捨ててもいいけど、勝ちたい時は出し惜しみする方がバカ』


 意外と辛辣、心に来るなぁー。

 ん、でも悪くない考え方だと思った。ならせめてどうしても勝ちたい時に代償とする優先順位を決めることにしよう。





「ガハッ!?」


 大空の一撃でオレは容赦なく地面に叩きつけられた!

 衝撃で唇を切ったし肺の空気が一気に吐き出されて苦しい!


『はやく動く!』


 焦ったミヤの声。こいつがこういう声を出す時は!


「っ!」


 確認もしない。咄嗟に体を横に転がして逃げる。

 するとオレがさっきまで寝転んだ場所に木刀が叩きつけられた。バキッと頑丈な筈の床にヒビが入った。


「タフだし良い反応だ。声に助けられたか」


 なんでもない風にオレを眺めている大空遼牙は振り下ろした木刀を肩に乗せた。うわー、カッコいいなー(軽く現実逃避)。


「あんまり弱いものイジメは好きじゃないんだ。降参するなら早いうちにしてくれよ?」

「はっ! 勝負は……まだまだここからだ!」


 そう簡単に降参なんてできるか! 再びダガーを構えて大空に向かって横薙ぎでダガーを振るうが。


「不用意にナイフを振るのは自殺行為だぜ?」

「ガウッ!? こ、この!」


 大空の木刀が待っていたように軽い突きでオレの腕を止めれて、腕を叩かれてダガーを落とされた。

 すぐさま銃の『鴉魔』を抜いて撃とう構えようとする前に、また木刀の突き攻撃で銃も落とされてしまう。


「この距離なら簡単には使わせねぇよ? 言っておくと俺は攻めも守りでも剣技の射程範囲は結構広いんだぜ?」

『トウヤ距離を取って! この男の言っていることは嘘じゃない!』

「っ」


 ミヤにも言われて慌てて後ろに逃れるが。


「言ったはずだ。俺の射程は広いと」


 男はフワっと前に飛ぶとそのまま突きの構えを取って―――


「『紫電蓮撃・三連』」


 木刀の剣先が三つに見えた。

 と思った次の瞬間、両肩と額に衝撃と痛みが走った!


「うっ!?」

『トウヤ!』

「『五連』」


 さらに突きの数が増える!?

 ガードなんてとても間に合わない!


「かはっ!?」

「『七連』」


 増える! まだ増える!

 止まらない! 止められない!!


「終いだ。『十連』」

「がああああああっ!?」

『トウヤァァァァ!?』


 圧倒的なまでの力差を見せつけられた。





「あーあ、せっかく忠告したのに」

「勝負にもなってませんが、まさかアレほどとは」

「事前の情報以上だね。流石はゲーマー」

「ゲーマー?」

「こっちの話」


 観戦席で眺めるいつもの教員二人が周りに聞こえないように呟く。


「流石にやり過ぎでは? アレでは他の生徒どころか殆どの教員の方達でも……」

「無理だろうね。それこそ私や君でも苦戦は避けられない。何せ彼は―――」


 メガネをくいと動かして笑みを浮かべて口にする。


「対魔法使いの魔法使い。我々とは相性最悪の天敵さ」


 そして、その真価はまだ見せていない。

 言わなくても聞いている女性教員は理解した。





 仰向けで倒れているから視界は天井を向いてる。

 位置的に大空の姿は見えてない。一応様子見と最低限の情けとしてか攻めて来ないようだが、どうしたらいいか。


 結界のおかげで酷い怪我は無いが、見事に滅多打ちにされたよ。


「うっ……むちゃくちゃだ!」

『ギリギリ強化で助かったけど、手加減されたのが大きな理由だね』

「反則過ぎるだろう!」


 速過ぎて全然対応出来なかったが、強化してなんとか保ったつもりでいた。

 まぁアレだけ強いなら加減していても不思議じゃないが、だったらどうする? 攻撃が当たらない以前の問題じゃないか。

 何もさせてくれないぞ? マジでどうする?


『【ダークナイト】の反応速度じゃ無理。なら……【トライデント】を使うしかない』

「っ……仕方ないな!」


 痛いのを堪えてなんとか起き上がる。

 少し離れたところで大空が木刀を肩に乗せて待っててくれた。


「相談は終わったか? で、次はどうする? また突っ込んで来るか?」

「どうせ返り討ちに合うだけだろう? だったら!」


 懐から取り出した『隼の青いキーホルダー』を握り締める。


「【トライデントシリーズ】装備コール!」


 青い輝きが全身を覆わせながら追加詠唱を唱えた。


「【ファルコン・アーマー】読み込みロード!!」

『【ファルコン・アーマー】装備!!』


 青の魔力によって装備が切り替わる。

 全身に青い鎧と水色と青色の翼を装備する。

 初の登場の際は黒歴史なミスをしてしまった装備であるが、今は!


「装備が変わった?」

「ただ変わっただけじゃない!」

『いっけぇぇぇえええトウヤァアアアアアア!!』


 駆けるために地面を踏み締めた瞬間。

 装備に付与されている『加速』が全身を青いラインとなって駆け巡ると。


「この速度なら、どうだぁあああああああ!!」

「―――っ!?」


 一気に距離を詰めたオレは握り締めた拳で、驚いた顔で棒立ちだった大空を打ち抜く。


「―――ッッ!」


 咄嗟に大空は木刀を盾にするが、こっちの勢いを止め切れず後ろへ吹き飛ばされた。



おまけ キャストトーク

冬夜「【ファルコン・アーマー】超練習しました!」


ミヤ「再登場おめでとうー」


冬夜「最初の頃は全然操作が上手く出来なくて何度も壁とか地面に激突して……」


ミヤ「時々付き合ってくれたキキョウとカレンのおっぱいにダイブしたりー」


冬夜「飛ぶ練習していたらすっごい酔って立てなくなって……」


ミヤ「キキョウやななみんに膝枕されたり、アイカに介抱されたりー」


冬夜・ミヤ「「本当に大変でしたー」」


 以上、しょうもないコントでした。


◯作者コメント

 フォローに応援、評価ありがとうございます!

 相変わらずグダグダなストーリーになってしまっていますが、こんなに作品に応援してもらって本当にありがとうございます!


 気付いているかわかりませんが、思わぬ形で魔法少女に出る短編キャラの登場です。次作の連載予定ですが、こっちはほぼ最強キャラに育っています。こっちの主人公と同じで彼女募集中ですが、こっちと同じで空回りしている感じです(笑)。

 どのタイミングで出せれるか分かりませんが、その時はフォロー、応援の方をよろしくお願いします。

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