第23話 実力テスト その3(現れた強敵は……え誰?)

 それは午後の授業が終わった頃であった。


「さてと、行こうか」

「地獄ですかね」

「あはははは、面白いことを言うね!」


 そう、オレだけの追加テスト(これはもはや追試では?)が始まろうとしていた。


「地獄に失礼だよ」

「アンタはオレをどこに連れてくつもりだ!」

『わおー、敬語やめた』


 実技でも使用されていた会場に学園長から呼び出されると、そのまま中まで案内される。

 すると周りの一階や二階の観戦席に沢山の生徒が集まっていた。


「……多くない?」

「それだけ君が注目されている証拠だよ。よく見てみると大学部の学生もいる。君の怖い方のお姉さんに負けた人たちさ。手でも振ってみるかい?」

「アンタは人をおちょくらないと死んじゃう病気なんですか?」


 なるほど、だから忌々しそうな目付き顔付きの先輩みたいな人が混じっているのね。

 あと学園長、怖い人って花蓮姉を指したつもりだけど桔梗姉さんも十分怖いよ?


「ここでバトルをするのか……」

「試合形式は通常のマジックバトルと同じ。ちょっと味気ないけどバトルフィールドも特殊なタイプではなく通常フィールドの予定だからそこは警戒しなくていいよ」


 あんまし紹介が少ないから軽く説明するが、いつもバトルの際に展開されるフィールドの中には地形や建造物がなる以外に特殊な効果が付与されることがある。


 特殊フィールド。まんまであるが、このフィールドの場合、格下が格上に勝てる可能性が高くなることがある。

 ランクが低いヤツなら寧ろ逆に全力で利用するところであるが。


「楽になった分オレがフィールドを利用して勝つ方法も消えたってことだよなぁ。だとしたら結構損かも」

「理解してくれているようで良かった。通常フィールドにしたのは君が偶然で勝利してしまう可能性を減らすため」


 オレの考えにあっさり肯定する。

 もしかしてって思った程度だが、マジなのか?


「偶然の結果では周りも納得しないだろうからね。確実なものにするにも君自身の手でちゃんと勝利を掴み取ってくれ」


 とにかくやるしかないというわけだな。


「ああ、一つ助言として言うけど、出し惜しみせず全力でやりなさい。君の手札をと彼とは勝負すらならないからね」

「彼?」


 案内した学園長も観戦席に戻る。しばらくするとオレが出た扉とは反対側の扉から誰かが入って来……。


「はぁ……どうして俺が……美少女の相手でもないのに」

「……」


 現れたのは露骨に肩を落としてトボトボ歩く男子学生。微妙に長い黒髪で目元が見えないけど落ち込んでるのは分かる。

 うちの学園とは違う見覚えのない赤い制服で腰には木刀が一振りが差してあった。

 

「別の世界を観光出来るからこのバイトはオススメですよ!?って言うあのバカ女神の言葉を信じた俺がバカだった!!」

「なんかブチギレてる!? なんで!?」


 髪掻きむしって地団駄をしてる。……頑丈な試験場の地面なのにヒビが入ってるんですけど。


『みゃ!? この男! ミヤに近い匂いがする!!』

「お前はお前で何言って「同志の声がしたぞ!? そこにいるのか!?」いる?」


 ミヤの発言に呆れて返そうとしたところで男が突然オレの方を―――というかオレの中のミヤを見ている?

 なんかチラと見えた黒い瞳も黄金の瞳に変わっているんだが……。


『っ……あれはまさか【シェラザード・アイ】!? でも解析の術式が違う。派生系の解析魔眼?』


 ミヤもミヤで驚いた声を出して口調も真剣なものに変わっている。それだけヤバいってこと?


「何か……いる。いや、憑かれてるのか? 悪意みたいなのは感じないが、悪霊系とも違う。どちらかというとあの駄女神に近い―――」

「あ、貴方は?」


 い、居心地が悪い。オレを見ながらなんかブツブツ言ってる。

 そのせいで周りが騒ついているとフォローのつもりか学園長の声が掛かった。


「紹介しよう。彼も別の魔法学園出身の高等部一年所属、大空遼牙おおぞらりょうが君だ。向こうの学園長の話では実力はSランクに匹敵するそうだから大空君、今日はよろしくねー?」

「……いや、考えてもしょうがない。俺はバイトとしてお前の相手をすればいいんだったな」


 笑顔な学園長の発言に嫌そうな顔をするも木刀を引き抜いて、オレと向き合う大空遼牙と名乗る男子生徒。


『気を付けてトウヤ。この人、間違いなく強い! 最初から全力で挑まないとマズいよ!』

「ま、バイト代分は働くさ。の言う通り手加減は不要だ。最初から本気で来な」

「わ、分かった!」


 この人、普通にミヤの声も聞こえてる。学園長の言い回しや連れて来た時点で怪しいと思ったが、予想以上に得体が知れない。


「【我は万象にして原初を司る、それは幻想の黙示録、無限の叡智そして我は求める者】―――【マテリアル・オーダー】!!」

『【ダークナイト】―――読み込みロード開始!』


 すっかり覚えた完全詠唱による【マテリアル・オーダー】によって【黒き暗殺者ダークナイト】となる。


「行くぞ! 【風となれ】―――【ウィンド】!」


 魔剣ダガーの『竜骨』を引き抜く。

 さらに風を纏って駆け出すと風に乗って一気に距離を詰める。


「くらえっ!」


 脚力に加えて風の勢いも乗せる。渾身の一振りを大空へ叩き付けようと―――


「そこだ」

「あっ」


 振ろうとした右腕に大空の木刀の先が当たった。

 威力なんてない軽い突き。だけど振ろうとした勢いが寸前で止められて、さらに軽く押された反動か全身の動きが一瞬だけど止まってしまった!


「毛が生えた程度の素人か。これなら目だけで足りるな」


 硬直したように動けなくなったオレに向かって、観察の目で呟きながら片手の軽い上からの一振り。

 全く回避行動が取れなかったオレはその一撃を頭部に受けて、試験場の床に叩き付けられた。



おまけ キャストトーク

冬夜「なんかいきなりレベルが違い過ぎる奴と戦うハメになったんだけど」


ミヤ「ちなみにランクならSを超えているとかー?」


冬夜「勝ち目ないじゃん!? 無理ゲーじゃん!」


ミヤ「こうなったらアレしかない。トウヤ、今こそトライデントシリーズの出番だよー」


冬夜「やっと使える程度になってきたアレらを使えと? 鬼か貴様は」


ミヤ「でも使わないとシルバーの言った通り勝負にもならないよー?」


冬夜「ぐっ、や、やるしかないのかー(不安要素が多い装備を思い出して頭痛)」


ミヤ「がんばーだよ。トウヤー」


冬夜「ホント軽いな!!」


 というわけで次回、全装備お披露目!!


◯作者コメント

 家の押し入れの整理していらない物を集めたらゴミがすっごい量になった!

 いくつかは売りれそうだけど、親父が昔からひたすら溜めちゃう人だったから、まだまだ沢山ある(頭痛)。

 皆さんも掃除以外にも押し入れの整理とか前々からしとかないと、後が本当に大変なのでお気を付けください。


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