第15話 学園ものが始まって主人公の取り合いも始まった

『トウヤの魔力じゃ全然足りないからやっぱりポイントを使わないとねー。全部消えるかなー?』

「ランクアップの為に溜めてたポイントが……また遠くな」

『記録は帰ってからやるから大事に持っててよ〜?』

「ああ、そうだなー」


 そして無事に? 手に入れた3つのキーホルダーを持ち帰ったオレは帰り道で学園長にご馳走になりながら帰宅すると。


「な、なぜオレは帰って早々姉たちに縛られてるの!? しかもこれって亀甲縛りってヤツじゃ!?」

「相談もなくあの男に会って飯まで奢ってもらった冬夜はアタシたちに何か言うことは無いのかアァ?」

「いつから冬夜くんは不良になったの? お姉さん悲しい」

「待って姉様方! まずは話をってカレン姉そ、そのロウソクは!? オ、オレは無実だぁぁぁあああ!」


 脳筋姉と怒ると怖い女神様にたっぷりお仕置きを受けた。

 肝心の学園長はさっさと帰っちゃったし! ミヤは満足したのか寝っちゃっているし! オレの味方は何処にもいなかった!





「季節の変わり目って何で判断すればいいと思う?」

『みゃ〜? 暑さとか寒さかな〜?』

「もしくはアレくらい満開な桜とか?」


 オレの中にいるミヤに告げながらオレは満開となっている桜の木を見上げる。


 そう、桜は春の季節の象徴。

 オレは何処かの製作者の都合で、中学の卒業式や春休みをすっ飛ばして高校の入学式まで時を飛ばされてしまった。(*スミマセン) 


「おかしい。あった筈の卒業式もその後の集まり会もさらにその先に行っただろう卒業旅行も……全部綺麗に消えてる」

『大丈夫大丈夫。トウヤのドウテイは消えてないから』

「うん、何も大丈夫じゃないな」


 いったいいつまでドウテイで弄られるんだオレは。(*一生?)


「一生であってたまるかァッ!」

『なに急に叫んでるのー?』

「いや、なんか全力で否定したくなった。男のプライド的に」


 確かに彼女は欲しいしいつかその領域に辿り着きたいとは思っているが、もう少し順序を守りたいんだよ。


『ドウテイらしい言い訳〜』

「……またポイントが貯まったらお前を黙らせれる魔法でもレンタルしようかな」


 あの三つの装備のせいで、貯めてた分も消えたから当分無理だけどね! 何としてもランクアップもしないとだしな!

 ミヤのグサっと来る言葉に苦しみながら、オレは新たな学舎であるMGM(魔法学園)に辿り着いた。


「はぁ、まず学園の雰囲気に慣れないといけないし、授業もだけどどうにかポイントを稼がないと……やる事多くねぇ?」

『それだけで済めばいいけどねー?』


 門を潜った際、周囲の視線がこっちを向いた気がしたが、深くは考えませんでした。

 色々察していたミヤは過労死するじゃねぇー? と思ったが、面倒なので口にはしなかった。





「酷いじゃないか冬夜よ。親友の俺を置いて先に行くなんて!」

「身の危険を感じたからだよ。親友よ」


 魔法の存在を知るまでは愛華との関係を勘違いして無意識に距離を取ったこともあったが、和馬の魔法を知った今は普通に距離を取りたい。

 掲示板に従って教室に入ると先回りしたのか、俺がスルーした待ち合わせ場所に居る筈のメガネで金髪の幼馴染男子、鳴瀬和馬なるせかずまがこちらに近づいて来た。


「何故だ!? 俺の何処に身の危険が!?」

「七海ちゃんにお前が良からぬことを企んでいると警告を受けたんだが?」

「七海だと! おのれぇ、そこまでして俺の野望を阻む気か!」 


 実の妹を敵扱いする兄と実の兄を害虫扱いしている妹。

 今回は非常に助かるが、この二人仲悪過ぎだろう。理由はハッキリした今は七海ちゃんよりだけどな。


「野望って……いったい何を企んでいたんだ?」

「なに、ただこれにサインをして欲しかっただけだ」


 言うや紙切れを渡して来る。何だと見てみると『チーム申請証』と書かれていた。

 名前の欄は最大七名まで書けれるようになっており、既に和馬本人の名前が書かれていた。


「俺と組まないか? 一緒にSランクを目指そう!」

「Sランクか……」


 それはオレの入学目的(彼女作りもだよ?)、さらに学園長に言われたオレの置かれている状況に対する解決策の一つ。

 ランクとはオレのカードにも書かれてあるランク(オレは一番下のGランク)のことだが、『Sランク』は学生でも一握りしか居らず、ある意味学生にとってゴールでもあった。


『もし学園に受かったらSを目指しなさい。Sランクとはプロの魔法使いの入り口。君とミヤちゃんの安全の保証を得られるチャンスが生まれる。学園に入ったらまずSランクを目指すための努力をするんだ冬夜くん!』


 Sランクになる。言うなのは簡単だが、その為には今までの魔法の勉強や鍛錬だけじゃ全然足りない。そもそも魔力が少ない所為でポイントを消費しないと装備も増やせれないし、学園で登録してある魔法のレンタルも出来ない。


『これだけでも十分無理ゲーってやつだよねー?』 


 全くもってその通りだよ! まるで借金背負った主人公の気分だ!


 姉さんたちがSランクだから聞かせてくれたが、まず個人でやるには無理がある。入るポイントは大きいが、絶対無理だからやめろと言われた。

 目指すなら絶対チームを作るようにと言われたが、そのチームの人選も聞いただけで頭が痛くなった。


『学年別でも可能だから私たちが手伝ってもいいけど、それだと個人のランク上げのポイントが集まりにくいだよね。私たちは既にSランクだから』

『アタシたちと組んだらポイントの入りがどうしても落ちるからな。上げる為には余程危険なミッションをこなすか、格上のチームとマジックバトルをしないと無理だな』


 ちなみに姉さんたちがSランクと言ったが、高等部でSランクは僅か5人だけ。殆どがA ランクや上のAAランクAAAランクで止まるそうだ。

 より上のランクアップほど必要なポイントや条件の難易度が高くなるらしい。


 どちらにせよ組む相手はよく考えて選べと散々言われたが。


「和馬が相手なら組むのも良いが、オレのランクの事を聞いてないのか? 一番下のGランクな上、受かったと言っても殆ど初心者だぞ。いいのか?」

「もちろん知っているが、そんな事は関係ない。これは前々から決めていた事だ」

「前々から?」


 和馬はどうでも良さげに首を振った。


「お前がもし魔法に目覚めるならその時は絶対組もうとな! ランクが最低で初心者だからなど知るか! 俺はお前と組みたいんだ冬夜!」

「和馬……」

「冬夜、俺は……!」


 そうだ。魔法はアレだが、根は真面目な奴だった。

 中学時代、気まずくなってこっちから勝手に距離を置きそうになっても、少しも気にせず接し続けてくれたオレの親友。

 例えアレな魔法を持っててもこいつとなら……オレも上を目指せるかも――



「俺はお前が欲しいんだァァァァアアアアアア!!」

「やっぱりやめていいですかァァァアアアアアア!?」 



 激しく誤解を招く発言!

 まだ名前も知らないクラスメイト、というか教室が凍り付いたのを確かに感じた。

 男子たちからは距離を取られて、一部の女子からはキャーキャーと嬉しそうな悲鳴が聞こえて、オレは絶望の悲鳴を上げたくなったが……


「そうはさせないわよ和馬!」

「抜け駆けとは感心しないわね『脱衣舞男キャストダンサー』」

「む、貴様ら! もう嗅ぎ付けて来たか!」


 二人の女子の乱入の所為で、教室がさらにカオスと化した。



おまけ キャストトーク

和馬「やっと俺の出番だな冬夜! 待ち侘びたぞー!」


冬夜「耳元で叫ぶな! 確かに遅かったな。本当はもっと早い登場の予定だったらしいが」


和馬「遂に俺の魔法を披露する時が!」


冬夜「やっぱり降板してくんない?(い、嫌な記憶が……!)」


和馬「何故だ!? 俺の魔法の何処かダメだ!?」


冬夜「全部だよ!!」


 鳴瀬和馬はBランクだが、実力はAランクに匹敵する。

 真面目で生徒会にも所属しているが、魔法が原因でペナルティを受ける事も多く中々上のランクに上がれていない。


◯作者コメント

 あかん、日曜休みにしたのに風呂掃除で殆ど終わってしまった!

 ようやく学園ものになるから執筆も捗ると思うけど、他のやつも頑張りたかった!

 と言うわけで次回は早速、魔法学園ものらしくマジックバトルを始めるよー!

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