第13話 男と二人っきりって誰得ですか!?(ミヤもいるけど)

 なんで男と二人で出歩かないといけないですかね?


「君と二人で行きたいところがあるからついて来てくれるかい?」


 そんな風に言われて最初は怪しんだが、この人には何だかんだ世話になっているので、仕方なく休日の昼わざわざ普段行き来する街の外まで出ていた。


 姉さんたちには内緒と言われたが、言ったら絶対ついてくるって聞かないから納得だが。


「やっぱり護衛は欲しかった」

「ハハハハ酷い言いようじゃないか!」

「そう思うならデートとか言わないでください。真剣に身の危険を感じましたよ」

『ミヤがいるよー?』

「お前を戦力としてカウントできるか」


 ごめんごめんと謝罪するシルバー学園長を睨む。絶対反省してないだろうコイツ


「ホントごめんね。昔っから余計な事をつい言っちゃうタイプでね。さぁ、ここは目的の場所さ」

「ここは……大学?」


 駅から合流してしばらく歩くとそこはオレも知らない大学の門の前だった。


「さぁ、これが中に入る許可証だ。これで入れるから行こうか」

「はぁ」


 手渡れたのは首に引っ掛ける紐付きの許可証のカード。

 学園長の言った通りこれを見せると警備員の人も何も言わなかった。

 途中の事務室で大学の教員の人が声を掛けて来て学園長に尋ねる。


「彼にちょっと用があってね。研究室まで行っていくけどいいかな?」

「構いませんが、貴方が来るのを凄く嫌がっています。本当によろしいですか? 庇いきれませんよ?」


 明らかに不穏な発言が聞こえるが、学園長は笑顔で頷いた。

 オレは嫌予感をしつつ一応学園長の後ろをついて行くと、とある一室の入り口で止まった。


「ここだよ」

銀城ぎんじょうオカルト研究室?」

『ん、この魔力は……』

「別名『黒魔術研究室』とも言うようだけどね。さぁ、入ろう――かっ!?」


 学園長がドアノブに触れた途端、ビリッ静電気の音がした。

 寒い日によくあるが、アレは痛そうだなー(他人事)。


「イッターー……な、なるほどなるほど、お怒りというわけか、まぁそうだよね(汗)」

『やっぱりアイツだねー。めんどーだなー』

「アイツ? また知り合いってこと?」

「う、うーん、いけないいけない。まずはノックが基本、マナーだよね。アハハハハ、私としたことが……」


 慌てて手を離すと痛そうに触れた手を抑えると、冷や汗流しながら笑って誤魔化すと今度は慎重にノックをして―――ガッシャーン!!


「あううううっっ!?」

「タライ、ですか」

『スマホで録画しよー? 面白いよこれー』

「大学内だからな。撮影すると怒られそうだ」


 ノックをした途端、今度は上からタライが落ちて来た。

 どうやって仕掛けたんだろ? 思わず上を見上げるが、天井と蛍光灯があるだけで何も仕掛けらしいものはなかったが。


「うううう、相当ご立腹というわけかぁ」

「よく分かりませんが、相手の人は相当学園長を嫌っているみたいですね。いったい何をしたんですか?」

「い、いや別にそこまで恨まれること『ガッシャーン!!』――しってましたね!? はい、ホントごめんなさい!!」

『ミヤこと言えねーなこいつはー』


 すごい! もう無かった筈のタライがまた落ちて来て頭にヒットしたのに、倒れることなく今度は低姿勢でドアに向かって謝っている。


 改めてこれが魔法の学園の長だと思うと、ひどい絵図らだな。

 ていうかさっきから思うが、この現象ってトリックとかじゃなくて。


「多分相手の人も魔法使いですよね? どう見ても学園長に会いたくないから魔法で反撃してるようにしか見えませんが」

「げ、厳密には『魔法』ではなく『魔術』というジャンルだが、うむ、聞いていたが私とは顔を合わせたくもないようだ」

「どんだけ嫌われてるんですか。はぁ、もう諦めて帰りませんか?」


 出来ればもう解放されたい。そんな想いで学園長に聞いてみると。


「いや待って待って! たぶんだけど、君なら大丈夫じゃないかな? 試しに入ってみてくれない?」

「超イヤなんですが」

「ここに居る者はね君、いやとても大事な物を持っている。この機会を逃すと困るのは君たちだ」

『……残念だけどこの男の言葉にウソはないよ。この部屋にいるやつが持ってるのはミヤも欲しいかなー』

「……はぁ、仕方ないか」


 ここで帰ればそれこそ無駄骨か。

 電気でもタライでも、トラップが来たら即帰ろうとまずノックを―――





 景色がいきなり変わった。

 いきなり何処かの部屋の中に入ったと思ったら、辺りから無数の銀鎖がまるで蛇のように迫って来て……。


『――っ! 魔法だトウヤ!!』

「え――【そ、そして我は求める者!】」


 今まで聞いたことないミヤの危機迫る声。

 咄嗟に省略詠唱からの【マテリアル・オーダー】を発動させ―――


「【マテリアル・オー」


 鎖が一気に伸びて来て、オレの体に巻き付いた。

 


おまけ キャストトーク

冬夜「男との二人っきりなのは断じてデートなどではない!」


シルバー「照れるな〜」


ミヤ「ミヤもいたのにー」


冬夜「やっぱり姉さんたちを連れてくればよかった!」


ミヤ「……姉妹とのデートなら良いって時点でやっぱりやべーなー」


シルバー「君のお父さんがよく悩みで口にしてたけど、本当にやばいねー」


冬夜「……一応言ってときますが、別にあの二人なら全然デートオーケーって訳じゃないですからね? オレは普通の彼女が欲しいだけなんですよ? まだ諦めてないですからね!?」


シルバー・ミヤ「「……無理じゃない?」」


冬夜「なんでこんな時だけ仲良くハモるかな!?」


 冬夜の状況を把握している者なら、まともな恋愛が出来るとは……思うわけなかった。


◯作者コメント

 実は以前まで完結させた作品のリメイク版を検討中ですが、12月は休みが全然ないのでなんだかんだ先送りになりそう(汗)

 今のところ候補としては『苦労人(なろう版)』『オリマス』『神と魔王の弟子』のどれか『元勇者』も考えてますが、そこまでは流石に手が伸びないので三つのどれか。余裕があったら三つともやりたいですが、残念ながら分身でもしない限りは不可能ですね。

 どっちにしてもこの作品がもう少し進んでからになると思うので、あんまり気にしないでください。

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