第12話 美少女に声を掛けられても喜ぶとは限らない
試験を受けたその日の帰り際、学園長がこっそり話してくれた。
結構久しぶりだったりするが、あの話し合い以降は実は殆ど会っていない。
注意としてミヤの事を広めないように言われているが。今の段階でバレると魔法の政府機関に捕まる可能性が大だから。
「正式な通知は後になるけど、おめでとう合格だ。今日までよく頑張ったね。正直半年であそこまで仕上がっているとは思わなかったよ」
そりゃあ色んな人、特にカレン姉と桔梗姉さんにはたっぷり扱かれましたから。
ぶっちゃけ後半は本人たちの欲求解消のような気もしたが、恍惚感ってヤツかな。すっごい満たされた顔で抱き付いて寝技してくるカレン姉と動けないオレを甘やかしてくる桔梗姉さんの荒い息と紅潮した顔は……深く考えないようにしよう。
「また呼ぶと思うから、その時はよろしくね」
「はぁ……え、呼ぶ?」
とにかく色々受験先どころか人生まで変わったような半年間を乗り越えて、無事に合格を頂いてようやくひと段落した。
「見つけたわ。壱村冬夜君」
かと思われたんだが、またまた帰り際にあの黒髪女子に再会した。
「お前は確か、龍宮寺だったか? 久しぶりだな」
「雪奈、龍宮寺雪奈。貴方と同じ4月から高等部に上がる今は中等部三年よ」
すっかり季節は寒い冬。まだまだ暖かい春は来ていない。彼女の吐く息が白い。
「やっぱりまだ寒いわね。こんな時期に必要以上外には出たくないわね」
「今は休みなんだろ? なんでここにいる?」
あの時は夏の制服姿であったが、今は冬用の黒い制服の上に女性用のコートとマフラーを首に巻いていた。
「貴方に会うために決まっているでしょ?」
「……オレたちそんなフラグ立つほど親しかったか?」
「あら、あんなに激しく抱いてくれたのに、そんな酷いこと言うの?」
「誤解を招く言い方! 抱いたって抱っこしただけだろう! しかもあの時は魔法の影響を受けてたからアレはオレの意思ではなく魔法が原因で!」
「そう魔法よ」
そこで彼女はオレに指を指した。人に指を指してはいけません!
「会いたかった理由よ。貴方の魔法の事をずっと知りたかった」
「え、え……! 知りたかったって、いったいどういう……(オレの魔法って、なんか嫌な予感が)」
「言葉通りの意味、知らないようだから話すけど、実はあの事件の後すぐ貴方のお姉さんたちに声を掛けたの」
聞いてないんだけど。
「そしたら何故か外部の中学なのに実力がある犬井さんやひとつ下のあの兄を持つ
マジで初耳なのですが!? あの姉たちと幼馴染はーー!?
思いっきりオレが関わってるのに! ホウレンソウを知らんのか!?
「結局何も教えて貰えず、さらに
忙しいなんてレベルではなかったが、何故龍宮寺はそこまでオレの魔法を知りたがる? 姉さんたちの話じゃレア魔法らしいが、レア魔法は他にもあるって聞いたが。
「幸い貴方の受験日は学園長が自分の推薦ってことで広めてたからすぐ分かったわ。今日来たのは見学目的もあったのよ。お陰で良いものが見られたわ」
広まっていたってどういうことですか!? ていうか見てたの!? あの厨二病みたいな真っ黒戦闘服プラスグラサン姿のオレを!?
「学園長の推薦って結構珍しいそうで、学生だけじゃなくて教員の中でもかなり騒ついてたわよ?」
あ、あ・の・学・園・長・が!! アンタ! ミヤの件を隠せって言ったくせにオレが目立つようなこと言ってんの!?
ていうか姉さんたちは何も言わなかったのか!? 止めてよ!?(*二人が知った時に既に広まっていた)
「まぁ今回は顔合わせも兼ねて会いに来ただけだから。アレなら合格は間違いないと思うし、春からよろしくね?」
よろしく……したくねぇーな。龍宮寺は綺麗だけど、彼女候補には色々ハードル高いわ。(*忘れている人が多いが、彼は高校で彼女を作ろうとしてました)
手を振って去っていく彼女を見ながら、オレはやっぱり入る高校間違えたかなーって思いつつも――
『アイカにキキョウにカレンにナナミ、むふふふ彼女の選別ならミヤにおまかせー』
「お前がいる時点で高校先なんて関係ないよなー(その中に翼ちゃん先輩の名前がないのはミヤの苦手意識に違いない)」
もう今更だと諦めた笑顔で誤魔化した。全然嬉しくないが、この半年でミヤのからかいラインがどの辺か大体分かってしまった。
帰宅後、頑張った冬夜にご褒美だぁー! とか言ってカレン姉が桔梗姉さんと一緒に風呂に突撃して来るハプニングがあったが、慣れるって怖いなー。疲れていたのも原因だが。
「ああ、じゃあ背中洗って(疲れて眠い)」
「お、おお……はいよー(寝ぼけてる?)」
「じゃあ私は髪を洗ってあげようか?(寝ぼけてるなら私も)」
「お願いしまーす」
「っ!(どっくん) じゃあ前も?(ちらちら?)」
「それは……いいや(無意識の防衛本能)」
「あ、そうかー(無理だった)」
普通に三人で入って普通に裸の付き合いをしてしまった。
お祝いを兼ねて帰って来た母さんは楽しそうに、親父が頭を抱えていたのでやっと正気に戻りました。
だ、大丈夫だよ? ギリギリ超えてないからね?(*十分超えてます)
*
「じゃあ、デートしようじゃないか冬夜君!」
「確かに彼女は欲しいですが、彼氏が欲しいとは一度も思ってません!」
「照れ隠しかい?」
「ぶん殴りますよ!?」
休日、シルバー学園長に呼び出されたオレは何故か二人で街の外に出ていた。
おまけ キャストトーク
冬夜「何故オレは普通に姉さんたちとお風呂に……!」
ミヤ「ミヤも混ぜればよかったなー(疲れて寝てましたー)」
冬夜「ロリ巨乳が混ざったら爆発しそう」
ミヤ「巨乳なお姉さん二人と入ってたじゃん」
冬夜「……ホント、慣れって怖いよなー」
ミヤ「……冬夜くんはお姉ちゃんのおっぱいに興味ないの(桔梗ボイス)」
冬夜「声を真似て変な言い方すんなーー!!」
ホント、慣れって怖いねー。
◯作者コメント
最初は1話3000文字を目指してたけど、少し下げたらすっごい安定する!
昔はよく5000〜8000文字以上やってたけど、すっごい消耗するから今後はやる作品はこっちの方がいいかも(汗)
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